オルガンと金管と合唱の饗宴!勝山雅世×佐々木新平が誘う “英国らしさ”の真髄へ
8月11日、山の日。サントリーホールが新たに贈る夏の祭典「オルガン・フェスティバル」が開幕する。その幕開けを飾るのは、オルガンと英国音楽の魅力を凝縮した「オルガンで奏でる名曲たち~英国音楽作品集」。オルガンの勝山雅世、指揮・ナビゲーターの佐々木新平、そして東京佼成ウインドオーケストラのメンバーを中心とする金管アンサンブルと新国立劇場合唱団が、祝祭感あふれるサウンドを響かせる。
メインプログラムは、現代英国を代表する作曲家ジョン・ラターの傑作《グローリア》。そもそも、英国音楽「らしさ」とは何なのか? そして、オルガン、金管、合唱が織りなす響きの魅惑とは? 出演者のお二人に、その奥深い世界を語っていただいた。
1963年埼玉県生まれ。慶應義塾大学文学部を卒業、音楽之友社で楽譜・書籍・月刊誌「音楽の友」「レコード芸術」の編集を経て独立。オペラ、バレエから現代音楽やクロスオーバ...
「気品」と「心を掴む和声」――英国音楽の響きの秘密
――今回のプログラムは「英国音楽作品集」です。壮大なテーマですが、演奏家の視点から見て「英国音楽らしさ」とは、どのような点に感じられますか?
佐々木新平(以下、佐々木) やはり、どの作曲家の作品にも共通して流れる「揺るがない気品」ではないでしょうか。エルガーやウォルトンのように、国の式典と深く関わってきた歴史からくる重厚感はもちろんですが、たとえヴォーン・ウィリアムズが田園風景を描いたとしても、そこには独特の気品が宿っています。
面白いのは、エルガーのスコアです。例えば《エニグマ変奏曲》など、楽譜を見るとかなり複雑で、とっ散らかっているように見える瞬間さえある。ふつう、複雑なスコアからは複雑な音響が生まれるものですが、エルガーの場合は、そこから驚くほど美しく、気品に満ちたシンプルな響きが立ち昇ってくる。これはほんとうに不思議で、指揮をしながらいつも「なぜこのスコアからこの音が出るんだろう」と考えています。
保守的と言われながらも、その内側には革新的な試みや、解明できない「ソウル(魂)」のようなものが存在している。それが英国音楽の不思議な魅力だと思います。
東京学芸大学を経て桐朋学園大学にて指揮を専攻。飯守泰次郎、秋山和慶、小泉ひろしに師事。その後ヨーロッパ各地の国際指揮マスタークラスに選抜されJ. パヌラら巨匠たちの薫陶を受ける。2013年よりドイツ・ミュンヘンへ留学し各地でさらなる研鑽を積んだ。12年の第9回、17年の第10回フィテルベルク国際指揮者コンクールにおいてディプロマ、15年ブザンソン国際指揮者コンクールにおいては本選最終の8人に選出。これまで国内主要楽団に客演。東京シティ・フィル アソシエイト・コンダクター、ヤマハ吹奏楽団常任指揮者を経て現在同楽団名誉指揮者。24年東京吹奏楽団正指揮者に就任。あきた芸術劇場ミルハスでは22年のオープン以来音楽部門アドバイザーを務める。現在オーケストラを中心に吹奏楽、合唱、オペラ、バレエなどあらゆるシーンで才能を発揮。多彩な演奏活動に加え、テレビ、ラジオ、映画へ出演するなど多方面に活動の幅を広げている
勝山雅世(以下、勝山) オルガニストの立場からすると、英国音楽らしさをもっとも感じるのは「和声」です。音楽大学で学ぶ和声にはドイツ和声やフランス和声がありますが、「イギリス和声」という独立した分野はとくにありません。しかし、作品に触れると明らかに違うんです。
例えば、D-dur(ニ長調)の曲なのに、突然ソにシャープがついたりする。特定の和音がパッと現れた瞬間に、わかる人同士で「ああ、イギリスだよね」「はい来た!」と顔を見合わせてニヤッとしてしまうような、”約束の響き”があるんです。
フランス和声がお洒落で、ドイツ和声が重厚なら、イギリス和声は、風のようにサラッとしているのに、時折ハッとさせられる、心を掴む和音が隠されている。今回のプログラムに入っているウィル・トッド(1970年生まれ。美しく親しみやすい合唱曲を多く書いている)の作品などは、その魅力が集約された、素晴らしい和声で書かれています。
東京藝術大学卒業、同大学院修了。アカンサス音楽賞受賞。バーゼル・スコラ・カントルムに留学。2003年オランダのアルクマール・シュニットガー国際オルガンコンクール第3位入賞。07年からヘンデル・フェスティバル・ジャパンで通奏低音を担当。08~21年サントリーホール主催「それいけ!オルガン探検隊」で演奏、企画に携わる。22年、彩の国さいたま芸術劇場の「キミとの遭遇~地上の音楽と踊りをめぐる旅~」で、演奏と音楽制作を担当。近年、とくに子どものためのコンサートに力を注ぐ。また、将棋とコラボレーションした演奏会を企画し好評を得る
https://www.youtube.com/@masayo.katsuyama.organcafe
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