インタビュー
2024.06.18
望月晶、奥井紫麻、進藤実優、亀井聖矢が出演

輝きあふれる!2024年のローム ミュージック ファンデーション スカラシップコンサート

音楽文化の普及と発展のため、1991年から若手音楽家たちの支援、育成を行っている、公益財団法人ローム ミュージック ファンデーション。「ローム ミュージック フレンズ」と呼ばれる奨学生たちが学びの成果披露をする「スカラシップコンサート」が、今年も京都と東京で5公演開催されます。国内外でひときわ輝きを放つピアニスト、望月晶さん、奥井紫麻さん、進藤実優さん、亀井聖矢さんが公演への想いをお話しくださいました。

桒田萌
桒田萌 音楽ライター

1997年大阪生まれの編集者/ライター。 夕陽丘高校音楽科ピアノ専攻、京都市立芸術大学音楽学専攻を卒業。在学中にクラシック音楽ジャンルで取材・執筆を開始。現在は企業オ...

メイン写真:2023年ローム ミュージック ファンデーション スカラシップコンサートより
©佐々木卓男

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ローム ミュージック フレンズとしての学び

――ローム ミュージック フレンズとしてどのような研鑽を積み、現在どんなことに取り組んでいるのかを教えてください。

望月 私は今、桐朋学園大学修士課程に通っていて、とくに室内楽に重きを置いて学んでいます。室内楽の師匠であるピアニストの練木繁夫先生からは、室内楽のプロフェッショナルとしてのご経験に基づく指導も多く、本当にたくさんのことを教わっています。

昨年は室内楽の公演だけで80を超える舞台を経験できました。本番が多いということは、クオリティを保つだけでなく、メンタルとフィジカル両面での調整も必要です。トータルバランスが取れている状態を維持するために努力したことで、これからの音楽活動にとって大切なスキルが身についたと思います。

望月 晶(ピアノ)
2022、2023年度奨学生。桐朋学園大学大学院在学。第89回日本音楽コンクール第2位、岩谷賞(聴衆賞)。第42回霧島国際音楽祭音楽監督賞受賞。いしかわミュージックアカデミーにて公式伴奏者を務めるなど、共演者としても幅広く活動している。これまでにピアノを今井啓子、小森谷泉、練木繁夫の各氏に師事。

奥井 私は昨年9月よりスイスのジュネーヴ高等音楽院に通っています。ネルソン・ゲルナー先生と出会い、豊かな音の出し方や体の使い方など、より良い響きを生み出すための方法を学んでいます。

ロシアや日本との往来が多く移動時間が増えましたが、限られた時間の中でいかに練習するのかを工夫するようになったのはもちろん、「どんな音楽がしたいのか」「何を表現したいのか」「どんなことを改善したいのか」など、音楽について考える時間が増えました。練習だけでなく、こういった時間も大切だと改めて感じます。

奥井紫麻(ピアノ)
2023年度奨学生。故エレーナ・アシュケナージ氏に師事し、12歳で渡露。グネーシン音楽学校ピアノ科を首席で卒業後、現在ジュネーヴ高等音楽院にてネルソン・ゲルナーに、グネーシン音楽大学にてタチアナ・ゼリクマンに師事。
ⓒEvgeny Evtyukhov

進藤 私は今、ドイツのハノーファー音楽演劇メディア大学に通っています。レッスンでは、長年染み付いている癖を取り払うのが目下の課題なのですが、先生もそんな私に対して根気強く向き合ってくださっています。

あと、最近はとくにベートーヴェンに注力しています。もともと後期のソナタに取り組みたいという気持ちがずっとあって。スカラシップコンサートでは「ピアノ・ソナタ第14番《月光》」を演奏しますが、今はベートーヴェンがすごく近いゾーンに入ってきているので、さらにレパートリーを増やしたいと思っているところです。

進藤実優(ピアノ)
2021、2023年度奨学生。モスクワ音楽院付属中央音楽学校、ハノーファー音楽演劇メディア大学で研鑽を積む。第18回ショパン国際ピアノコンクール(ポーランド)、第76回ジュネーブ国際音楽コンクール(スイス)セミファイナリスト。現在ハノーファー音楽演劇メディア大学(ドイツ)にて、アリエ・ヴァルディに師事。
ⓒ井村重人

亀井 僕は2021年から2022年にかけて奨学金を受給していたのですが、その時期に3つの国際コンクールに挑戦し、ロン=ティボー国際コンクールで第1位を受賞したことがもっとも大きな出来事でした。

コンクールを受けるにあたり、さまざまな国でレッスンやコンサートの機会がありました。やはり聴いてくださる方は、いいものを聴くと自然といい反応を示してくれるし、とくにヨーロッパには素晴らしいホールも多い。自分なりに熱量をこめて、濃い表現にしなければ伝わらない、と思いながら演奏に取り組みました。その試行錯誤こそがコンクールの結果につながったのだと思っています。

亀井聖矢(ピアノ)
2021、2022年度奨学生。桐朋学園大学卒業。2022年、ロン=ティボー国際コンクールにて第1位を受賞。日本音楽コンクール第1位、ピティナ・ピアノコンペティション特級グランプリなど、国内外での受賞を重ねている。現在、カールスルーエ音楽大学、桐朋学園大学ソリスト・ディプロマ・コースに在籍中。
ⓒYuji Ueno

テーマ「輝き」をもとに、それぞれのフェーズに合わせた選曲を

――今回のテーマは「輝き~音とともに~」。「輝き」にどんなインスピレーションを受け、どんな理由でそれぞれの演奏作品を選曲したのでしょうか。

望月 私の演奏する《ラ・ヴァルス》を書いたラヴェルは、高音域がキラキラとしていたり、多彩な響きがあったりして、「輝き」を伴う作品が多い作曲家ということで選曲しました。また、《ラ・ヴァルス》はピアノソロだけでなく、オーケストラや2台ピアノなどでも本人の手によって編曲されています。彼の残した作品と編曲も参考にしつつ、音楽家としてのキャリアの重要なマイルストーンとして取り組みたいです。

奥井 私はラフマニノフの前奏曲を3曲演奏します。これらの作品はピアノそのものの「輝き」を発揮できる音楽であり、そして未来への希望や「輝き」を感じられるものでもあると思い、選曲しました。それぞれ異なる性格を持っていて、多彩な音色が感じられると思います。これまでラフマニノフの作品はコンツェルトやソナタなら取り組んできたのですが、前奏曲は初めてなので、楽しみです。

進藤 私の演奏する《月光》は、ベートーヴェンの中でも有名な作品の一つ。とても暗い第1楽章と第3楽章、そして挟まれた第2楽章に垣間見える光――その対照性が今回の「輝き」というテーマにぴったりなのではないかと思っています。「月光」という副題は後からつけられたものなので、従来のイメージにとらわれず、聴いていただく皆さんが自由に想像を膨らませていただけるような演奏がしたいです。

亀井 今回、公演のテーマである「輝き」に関連して「生きていてもっとも輝きを感じられる瞬間はいつだろう」と考えたところ、不安や悲しみの中に生まれる強い光や救いが「輝き」なのではないかと思ったんです。演奏するショパンの「バラード第1番」は、不安な雰囲気がありつつ、中盤では柔らかく温かく、やがて大きな喜びが訪れる――まさに「輝き」を表現できると考えました。ショパンは、人間の内側にある営みや感情と強く結びついている作曲家。それもあって、私自身今とくにショパンの作品に注力しているところです。

スカラシップコンサートをステップに、新たな目標へ

——最後に、今回のスカラシップ コンサートへの意気込みと、今後の目標をお聞かせください。

望月 スカラシップコンサートはいろいろな音楽や音色を持った演奏家が一堂に会するため、玉手箱のような場だと思っています。さまざまな演奏者からアイデアをいただき、自分自身の演奏に還元していきたいです。

奥井 このスカラシップコンサートは、私にとってジュネーヴで学んできたことをお見せできる舞台になりそうです。私の目標は、ヨーロッパで素晴らしい作品を多くの人に知ってもらえるような演奏家になること。より理想的な演奏や生き方に近づけるように学んできたので、その成果を見ていただけたらうれしいなと思っています。

進藤 私の目標は、世界で活躍できるピアニストになること。そのためにも、たくさんの方と交流したり、活躍の場を増やしたりすることが大切です。さまざまな演奏家の集まるスカラシップコンサートを通して、さらに自分の音楽を模索していければと思います。

亀井 この1年、本当にたくさんの公演を経験させていただきました。クオリティを保つために練習の密度をより濃くしてきましたが、スカラシップコンサートのある夏を終えたら、いったん「本番のため」ではない練習にも取り組みたいですね。作品の背景や一音一音を自分の中に落とし込めるよう、勉強を深めていきます。

公演情報
ローム ミュージック ファンデーション スカラシップ コンサート Vol.47~51 “輝き~音とともに~”

京都公演

会場:京都コンサートホール アンサンブルホールムラタ(小ホール)
Vol.47

日時:7月27日(土)14:00

出演:梅﨑秀(p)、大井駿(指揮)、奥田ななみ(p)、小倉美春(p)、亀居優斗(cl )、清水伶(fl)、福丸光詩(作曲)、保崎佑(fg)、山本航司(sax)

Vol.48 <完売>

日時:7月28日(日)14:00

出演:奥井紫麻(p)、小野田健太(作曲)、亀井聖矢(p)、進藤実優(p)、室元拓人(作曲)、望月晶(p)、山本英(fl)

Vol.50 <完売>

日時:8月25日(日)14:00

出演:荒井里桜(vn)、泉優志(vc)、牛田智大(p)、尾城杏奈(p)、落合真子(vn)、北村陽(vc)、柴田花音(vc)、谷昂登(p)、谷口知聡(p)、田畑音葉(va)、千葉遥一郎(p)、戸澤采紀(vn)、中川優芽花(p)、中野りな(vn)、東亮汰(vn)、福田麻子(vn)、山縣美季(p)、吉田一貴(T)

東京公演

会場:浜離宮朝日ホール
Vol.49 <完売>

日時:8月11日(日)15:00

出演:荒井里桜(vn)、泉優志(vc)、梅﨑秀(p)、小倉美春(p)、小野田健太(作曲)、亀居優斗(cl)、清水伶(fl)、進藤実優(p)、千葉遥一郎(p)、東亮汰(vn)、福田麻子(vn)、望月晶(p)、山縣美季(p)、山本英(fl)

Vol.51<完売>

日時:8月31日(土)15:00

出演:奥田ななみ(p)、尾城杏奈(p)、落合真子(vn)、谷昂登(p)、谷口知聡(p)、田畑音葉(va)、中川優芽花(p)、中野りな(vn)、保崎佑(f g)、山本航司(sax)

問合せ:

京都公演:otonowa 075-252-8255

東京公演:株式会社1002(イチマルマルニ)03-3264-0244

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桒田萌
桒田萌 音楽ライター

1997年大阪生まれの編集者/ライター。 夕陽丘高校音楽科ピアノ専攻、京都市立芸術大学音楽学専攻を卒業。在学中にクラシック音楽ジャンルで取材・執筆を開始。現在は企業オ...

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