斎藤守也(レ・フレール)「自分が丸ごと受け入れられる環境から自分の音が生まれた」
アーティストに自身の子ども時代を語ってもらい、その音楽が育まれた背景を探っていく「アーティストの子ども時代」。記念すべき初回には、迫力の演奏で人気のピアノデュオ「レ・フレール」の兄・斎藤守也さんが登場! コンポーザー・ピアニストとしての活躍も著しい守也さんの唯一無二のピアノ演奏は、「こうすべき」「こうあるべき」という思い込みを超えた環境から生まれたと言えそうです。
専門は学校音楽教育(音楽科授業、音楽系部活動など)。月刊誌『教育音楽』『バンドジャーナル』などで取材・執筆多数。近著に『音楽の授業で大切なこと』(共著・東洋館出版社)...
ありのままの自分を受け止めてくれた親
もともと、音楽よりも絵を描くことや工作をすることが好きな子どもだったんです。朝起きてひたすら絵を描いたり、磁石を冷蔵庫のドアに並べて絵にしたり……親はそんな僕を止めることなく、僕がつくっているものに口を出すこともなく見守ってくれ、「発想が面白い」と褒めてくれました。
11歳の時に作曲を始めたのも、そんな「創作」の一環だったのでしょう。メロディを作ったりしているうちに、作曲を本格的にやりたいと考えるようになり、「それならピアノが弾けないと」と、12歳でピアノのレッスンに通い始めました。
ピアニスト、コンポーザー。1973年生まれ。ルクセンブルク国立音楽学校ピアノ科をプルミエ・プリ(最優秀)で修了。2002年に弟・斎藤圭土と1台4手連弾ユニット「レ・フレール」を結成し、ヨーロッパ・アジア・オーストラリアなどでツアーを開催。2017年、初ソロ・ピアノ・アルバム『MONOLOGUE』(Universal Music)を発表、多層的な音楽で高い評価を得る。同年9月にマッチングピアノスコア『MONOLOGUE』をヤマハミュージックメディアよりリリース。2020年5月には2枚目となるソロ・ピアノ・アルバム『STORIES』(Universal Music)をリリース。舞台音楽をはじめ、メディアでの楽曲使用も多数。2019年に楽譜『レ・フレール斎藤守也の童謡アレンジで楽しく学ぶ 左手のための伴奏形エチュード』が音楽之友社より刊行、各地で楽譜をテキストとした公開講座も展開。医療機関や社会福祉施設などでのコンサートをライフワークとし、2018年には「誰もが一緒に音楽を楽しめる機会と環境づくり」をテーマとするプロジェクト「小さき花の音楽会」をたちあげ、自身がプロデューサーをつとめるバリアフリー・ピアノコンサートを開催。これまでに首都圏、愛知県で公演を実施、継続的な活動を行なっている
勉強は本当に苦手で。僕の親は学習塾の先生なので、しばらくは「やればできる」と一生懸命教えてくれていたのですが、やがていくら頑張ってもできるようにならない僕を「ああ、守也はこういう子なんだ」といい意味で諦めてくれ、それからは「勉強しろ」と言わずにいてくれました。
レッスン嫌いで先生をいつも困らせていた
そんな僕なので、ピアノのレッスンも大嫌いでした。でもピアノを習い始める時、親に「やるんだったら10年は続けなさい」と言われたんです。「それなりに長くやってみなければ、何も見えてこない」という考えがあったのだと思います。
ピアノの先生も僕を辛抱強く指導してくれました。発表会では「自分の曲を弾いてみたら」と勧めてくれたり、中学校で合唱コンクールの伴奏を安請け合いしてきた僕に「ピアノを始めて1年でこれは無理だよ!」と言いながら、簡単な伴奏を考えてくれたり。優しい先生を僕はいつも困らせていましたね。
中学卒業後、ルクセンブルク国立音楽学校へ。日本の音楽高校に進学することも考えたのですが、ピアノ歴3年の初心者が入れる学校は日本にはなくて。ヨーロッパにいた姉が「ルクセンブルクの音楽学校は初心者でも受け入れてくれる」と調べてくれて、「フランス語だけ頑張ればいいなら行く!」と、何のためらいもなく留学を決めました。
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