インタビュー
2019.05.10
緻密な楽器描写が大好評!「柴犬ラク」

柴犬ラクの作者とクラリネット奏者を両立する吉田悠人の柴犬的生活

クラリネット奏者でもあり、「柴犬ラク」の作者でもある吉田悠人さん。
さまざまな楽器を奏でるラクは、音楽ファンの間で大人気!
絵は得意なほうではなかったという吉田さんですが、どうやって「柴犬ラク」が生まれたのでしょうか? 制作秘話についてお伺いしました。グッズの読者プレゼントもチェック!

取材・文
ONTOMO編集部
取材・文
ONTOMO編集部

東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...

この記事をシェアする
Twiter
Facebook

クラリネット奏者、吉田悠人さん。もうひとつの顔は「柴犬ラク」の作者!

3歳よりピアノを、12歳よりクラリネットを始めた吉田さん。
桐朋学園大学卒業後、スイスのジュネーヴに留学し、帰国後は関西フィルハーモニー管弦楽団のクラリネット奏者として2017年まで活躍。そして、現在はさまざまなオーケストラの客演首席奏者やウインドクインテット・ソノリテのメンバーとして演奏活動を行なっています。

そんな吉田さんのもうひとつの顔が、柴犬ラクの作者。吉田家の愛犬ラクくんがさまざまな楽器を持っている愛らしい姿は、音楽ファンのみならず幅広い層に人気を誇ります。
現役クラリネット奏者と、柴犬ラクの作者を両立させている吉田さんにお話を伺いました。

柴犬ラクとは?

――クラリネット奏者として活動している傍ら、ラクを描こうと思ったきっかけは?

吉田 最初はLINEスタンプを作りたいなと思いました。もともと絵はあまり得意ではなかったのですが、飼い犬のスタンプを作りたくて。それに楽器を持たせてみたらどうかなーと思いつきました。
友達がクリアファイルにしたらどうかと勧めてくれて、試しに作ってみたら人気が出て、つづけて製作するようになりました。

――ラクくんはいつから飼い始めたんですか?

吉田 ラクは2012年にやってきたので、もう7年目かな。もうじき7歳になります。
我が家では僕が生まれる前から代々柴犬を飼っています。小学校のときに飼い始めた2代目がちょうど2010年に僕が留学する数か月前に亡くなって、2年留学して帰ってきて、3代目を飼い始めました。

こちらがモデルになっているラクくん!

――飼っている人ならではの絵ですよね。柴犬に特有の表情とか、特徴が捉えられていてかわいいです。ラクの名前の由来は?

吉田 初代の犬がタツで、次がゴンでした。ラクは母親が名付けました。
この前NHKの番組『リサイタル・ノヴァ』(現在は『リサイタル・パッシオ』にリニューアル)に出演させていただいたときに、司会者のピアニスト、本田聖嗣さんから「ラクはクラ(クラリネット)をひっくり返したんですか?」と訊かれたんですが、なるほど! と思いました(笑)。実は「手のかからないように楽しく育ってほしい」という願いを込めて、ラクチンのラクなんです。

ラクはヴィオラに手が届かない。

――ラクはどうやって描いているんですか?

吉田 最初は手描きで色を塗っていたのですが、2代目以降はiPadでアップルペンシルを使って描いています。
手描き感を残したくて、色の塗り方をちょっと手描きっぽくしています。

――デジタルなんですね!

吉田 今はクリアファイルの第2弾を描いていて、フルオーケストラになる予定です(※インタビュー時。すでに完成して発売中!)。弦楽器もちょっとずつ顔を変えて、持ち方も変えています。
特にヴィオラが難しかったです。ヴァイオリンと差をつけなければならないのと、ラクの構造上、手が届かないんですよね。

――一体描くのにどれくらい時間がかかるんでしょうか。

吉田 楽器によります。最近はわりと速くなって、2時間でヴァイオリンを8体くらい描きました。気がついたら時間が経っていて、背中がウッてなるんですけど、描き始めた頃に比べたらほんと速くなりました。
ハープが一番時間かかります。定規を使えないから、やりながら消して、やりながら消して、と仕上げました。あとは鍵盤楽器が苦手です(笑)。

ラクを描くときのこだわりポイント!

Point 1 楽器奏者ならではの細部へのこだわり!
吉田 はじめは結構大雑把なものもありました。音楽仲間から「楽器がちゃんとしていない」と指摘されることが多かったので、トロンボーンやホルンはしっかりした感じに描きました。あと頑張ったのはドラム。
でも初代のテイストを好きな方も多かったり、楽器をリアルに描きすぎるとかわいくなくなってしまうので、いい塩梅を探っています。クラリネットも全部キーを描いてしまうとちょっとかわいくない。
絵の勉強はしていないので、楽器を立体的に描こうとすると、すごく時間がかかってしまいます。実は下書きもしないで描いているので。

Point 2 普通はなかなか出てこないコントラファゴットまで! 楽器のバリエーションが豊富
吉田 フリューゲルホルンもあります。ユーフォニアムのアクセサリーはなかなかないそうで、ユーフォは特に喜ばれました。
楽器の種類を増やしているところで、最近は三味線などの和楽器も描きました。ギターも3種類あって、ドラムもあるので、バンドもできます。
あと歌がいないので、声楽の方が悲しんでいます。声楽は楽器モチーフがないので、楽譜を持つとか、合唱隊にするとか、工夫が必要ですね(※インタビュー時から新たに、ソプラノラクとテノールラクが誕生! 楽譜とワイングラスを持っています)

――そのうち第九ができそうですね!

吉田 第3弾のクリアファイルは4人のソリストを置こうと思ったのですが、さすがに入りきらなくて合唱団は描けませんでした。合唱バージョンも作ってもいいかなと思っています。

音楽をやっていないお客様も多いので、楽器ではないバージョンなど、バランス的には半々で作るようにしています。
コラボレーションの依頼もいただいていますが、安易に描いて増やせないので、難しいですね。

第2弾からさらにオーケストラのメンバーが増えた第3弾
オーケストラ3 / A4(税込432円)
クリアファイルの絵に注目。……ライブラリアン(楽譜を管理する人)がいる! 裏方スタッフへのリスペクトは楽器奏者である吉田さんならではですね。
クリアファイル(A5)(税込378円)
新しいクリアファイル(オーケストラ3)の裏側にも。

Point 3 1匹1匹手描き!
吉田 1匹ずつ全部変えています。楽器も基本的には使い回さない。
コピペすれば簡単にできるのですが、色も少しずつ変えています。
今製作中のクリアファイル第3弾では、前回は弦楽器は4匹くらいでしたが、1プル2プル(※プルト。プルトは2人1組の列を指す)……とがんばって描いていたら、ヴァイオリンだけでだいぶ日が経ってしまいました(笑)。

Point 4 モデルを忠実に再現!
吉田 ひとつひとつモデルがいるコラボラクでは、楽器を構えている写真を送ってと頼みます。
ファゴットは東京フィル首席の廣幡敦子さんがモデルなのですが、楽器を持っているところを見せてもらいました。ハープなど、細かいところがわかりにくい楽器は、実際にオケに行ったときに見せてもらい写真に撮ったりしました。
例えば、チューバは日本フィルの柳生和大さんで、メーカーによってピストンの位置がちょっとずつ違ったりするそうです。
あとクラリネットでは、日本フィルの楠木慶さんを描いたときには、使っているリガチャー(リードの留め具)の形や、楽器の上部に金色のポチが入っていたり、細かなところも実は表現しています。

――上野さんも廣幡さんも、お会いしたときに、「あっ! 似ている!」となりました。

吉田 楽器だけでなく、表情も似せています。

さまざまな柴犬ラクのグッズ

演奏活動との両立は?

――とてもお忙しそうですが、どうやって両立していらっしゃるんですか?

吉田 クラリネットの仕事が充実していて、実は両立が難しい時もしょっちゅうあります。やっぱり僕はクラリネット奏者なので、演奏が疎かにならないように一番気をつけていますね。先日あるコンサートのプログラムに60体くらいラクを描いて欲しいとのご依頼をいただき、良い機会だと思ってお引き受けしましたが、こんなにもラクを描いたことはなくて必死でした(笑)。

基本どこに行くにもiPadをもっていって、演奏旅行の間にホテルで描いて、電車で描いて……。電車だと揺れるからなかなか細かい部分までは描けないんですけどね。

――今はどのような演奏活動を?

吉田 今は各地のオーケストラに客演や、ソロや室内楽のコンサート、講習会などの活動が中心です。演奏旅行で各地を訪れることも多く、ご当地ラクを書き始めました。

ご当地ラク

今後やってみたいこと

――ラクに本腰を入れるとしたら、やってみたいことはありますか?

吉田 お店を出したいんですよね。楽器屋さんだとすべての商品を置いていただくことは難しいのでネットが中心になるのですが、すべての商品を見てもらえるお店があればいいなと思います。

――テーマソングを作ってご自身で演奏されるとか、いかがでしょう。

吉田 実はアニメ化を検討しています。そこにはやっぱり曲が必要なので、テーマソングを作ろうかという話もあります。楽器を使ったアニメってあまりないので、かわいい感じの物語ができたらいいなと思っています。

あと、本当に趣味で始めたマンガもあるのですが(ラクラクまんが)、こちらは音楽のことはあまり描かず、日々の出来事や思ったことを日記のように好きに描いているので、色もバーッと塗って。でもいつの間にかだんだん回数を重ねてきました。『Shi-Ba』という柴犬好きなら誰でも知っている雑誌にも取材していただいて、そのときに「マンガも読んでいます!」と言っていただき嬉しかったです。

――オケネタあるあるをマンガにしたら面白そうですね。

吉田 管楽器で言えば、演奏中のタンポに水が溜まってしまうドキドキとか、ずっと演奏しないで待って、いきなり吹くとリードが乾燥しているハラハラとか色々ありそうですね(笑)。

――たくさんいるので、画集や楽器図鑑も作れそうですね。

吉田 とても面白いですね。実は絵本も描いてみたいなと思っています。コントラファゴットが載っている絵本とか多分ないし(笑)。描こうと思ったらトランペットだけでもいろいろ描けますもんね。

取材・文
ONTOMO編集部
取材・文
ONTOMO編集部

東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...

ONTOMOの更新情報を1~2週間に1度まとめてお知らせします!

更新情報をSNSでチェック
ページのトップへ