インタビュー
2025.03.18
特集「ホールへ出かけよう! 2025」

住友生命いずみホール〜原点回帰のバッハ特集を中心に、バラエティ豊かな企画が彩る35周年

開業から35年を迎える住友生命いずみホールは、年間テーマに「バッハ2025 綾なす調和」を据え、音楽学者の堀朋平さん企画監修のもとホールの原点に立ち返ります。レジデントオーケストラ「いずみシンフォニエッタ大阪」の第2代音楽監督には、藤倉大さんが就任! 気軽に足を運べるランチタイム・コンサートやミュージック・サプリといった魅力的な企画も目白押しで、目が離せない2025年シーズンについて、チーフプロデューサーの梅垣香織さんに詳しくお話をうかがいました。

取材・文
磯島浩彰
取材・文
磯島浩彰 音楽ライター

湖国近江生まれのライター。大手情報誌から某オーケストラの広報マン、劇団制作などを経て、現在フリーで活動。エンタメ業界に携わること約40年。独自のネットワークを駆使した...

写真:飯島隆

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ホールの原点ともいえるバッハに立ち返り、音楽学者が監修する5公演

都会の喧騒から離れ、大阪城を横目に落ち着いた道を歩くと現れる住友生命いずみホール。ホールまでのわずかな時間が、日常から非日常へ、ケからハレへと気持ちを切り替えてくれる。このホールの企画営業部チーフプロデューサー梅垣香織さんに、2024年度事業の振り返りと、2025年度の聴きどころを聞いた。

梅垣 指揮者・山田和樹さんと大阪4オケ(大阪響、関西フィル、日本センチュリー、大阪フィル)によるメンデルスゾーンの交響曲全曲演奏会が2024年度のベスト事業です。2022年のシューベルトに続いて2度目の企画ですが、山田さんは熱いリハーサルの末に、各楽団から新鮮なサウンドを引き出してみせました。

今回、オラトリオ《エリヤ》や交響曲第2番《讃歌》などを通して、このホールで聴く合唱の素晴らしさを皆さまにお届けできたことも成果のひとつ。連日大入り満員で、興行的にも大成功でした。

お話をうかがった企画営業部チーフプロデューサー、梅垣香織さん

——2025年度はホールの原点ともいえるバッハを特集されます。

梅垣 バッハの音楽が、時間の経過の中でどのような変化をもたらし継承されてきたのか。ホールの音楽アドバイザーで音楽学者の堀朋平さん企画監修で、5公演をお届けします。

無伴奏チェロ組曲を弾くのはコロナで延期となっていたジャン=ギアン・ケラスさん。そして現在のバッハを語るうえで外せない、佐藤俊介さん(ヴァイオリン弾き振り)と鈴木優人さん(指揮、パイプオルガン)のお二人に登場していただきます。

とくに「バッハ・コレギウム・ジャパン」は団体の誕生経緯(1990年、ホールのオープニングシリーズ出演をきっかけに結成)からも出演はマスト。当時の音楽ディレクター礒山雅先生(2018年逝去)と鈴木雅明さんが企画について話し合ったように、堀朋平さんと鈴木優人さんに話し合っていただき、素敵なプログラムが決まりました。

そして、日本人コンサートマスター平崎真弓さん率いる「ベルリン古楽アカデミー」と、バッハ芸術の核を成すパイプオルガンの演奏を冨田一樹さんにも出演をお願いしました。

上段左:ジャン=ギアン・ケラス(チェロ)
ⒸHiromichi Nozawa

上段右:佐藤俊介(ヴァイオリン)
©︎Marco Borggreve

左:鈴木優人(指揮、パイプオルガン)
©Marco Borggreve

いずみシンフォニエッタ大阪の音楽監督に藤倉大が就任!

——ホールのもう一つの柱、いずみシンフォニエッタ大阪(以下、ISO)の第2代音楽監督にロンドン在住の藤倉大さんの就任が決まりました。

梅垣 西村朗監督(2023年急逝)の後任は、私の中では藤倉大さん一択でした。時間はかかりましたが、最後は熱意が通じて受けていただけました。藤倉さんは「これからの世界(Future Now)」というスローガンのもと、未来を見据えた音楽活動を、オーケストラのメンバーと運営チームとで展開していきたい! と語っておられます。

今後のISOの演奏会としては「第54回定期演奏会」(2025年7月12日)では「西村朗—魂の軌跡」と題した、オール西村作品の演奏会を行ないます。「第55回定期演奏会」(2026年2月11日)から藤倉さんの意向に沿ったプログラムとなり、楽団からのリクエストで藤倉さんの「箏協奏曲」を片岡リサさんの独奏で演奏します。

住友生命いずみホールのレジデントオーケストラである「いずみシンフォニエッタ大阪」は、現代音楽を積極的に取り上げる
©︎樋川智昭
第2代音楽監督に就任した藤倉大
©︎Alf Solbakken

——ほかの企画についても教えて下さい。

梅垣 昨年度から始まった小菅優さん(ピアノ)の室内楽シリーズは、全3回のうち2回目として「愛」をテーマに、歌手のミヒャエラ・ゼリンガーさん(メゾ・ソプラノ)との共演でお届けします。

大阪フィルとは「ホールの空間と響きに合うモーツァルト演奏」をテーマに、下野竜也さんの指揮、務川慧悟さんのピアノで、「ピアノ協奏曲第20番」他をお聴きください。

箏奏者の片岡リサさんプロデュースによる『和のいずみ』は第3弾として、念願の「文楽」を取り上げます。大曲『阿古屋』を三味線や太夫はもちろん、桐竹勘十郎さんによる人形も登場する完璧な形でお楽しみください。

気軽に楽しむことができる『ランチタイム・コンサート』や『ミュージック・サプリ』

——クラシック初心者の方に向けたコンサートはありますか?

梅垣 平日11時半開演の『ランチタイム・コンサート』ですね。長年続いている名物企画ですが来年度は、福井麻衣さん(ハープ)&幣隆太郎さん(コントラバス)中川英二郎さん(トロンボーン)、N響のコンサートマスター長原幸太さん率いる「アンサンブル天下統一」や石上真由子さん(ヴァイオリン)&江崎萌子さん(ピアノ)といったお馴染みのアーティストによる“名刺代わり”のコンサートをお届けします。

「すべての人に元気を与えたい!」と実施している『ミュージック・サプリ』にも注目ください。人気の「栗コーダーカルテット」が登場するので癒されてくださいね。

左:2025年6月26日のランチタイム・コンサートに出演する福井麻衣
©︎Akira Muto

下:ロー磨秀が出演した2022年のミュージック・サプリより
©︎樋川智昭

——読者に向けてメッセージをお願いします。

梅垣 開業から35年が経過し、年間テーマを原点回帰となるバッハとしました。初代音楽ディレクター礒山雅先生にすべてをお願いしていた時代とは一味違う、若き音楽アドバイザー堀朋平さんの知見に基づいた企画をお楽しみください。皆様のお越しをお待ちしています。

住友生命いずみホールは、4路線3駅から徒歩圏内の好立地に位置する(大阪環状線「大阪城公園駅」徒歩5分、東西線/大阪環状線 「京橋駅」徒歩10分、長堀鶴見緑地線「大阪ビジネスパーク駅」徒歩10分、京阪本線「京橋駅」徒歩15分)
住友生命いずみホール

[運営](一財)住友生命福祉文化財団

[座席数]821席

[オープン]1990年

[住所]〒540-0001 大阪府大阪市中央区城見1丁目4-70

[問い合わせ]Tel.06-6944-2828

取材・文
磯島浩彰
取材・文
磯島浩彰 音楽ライター

湖国近江生まれのライター。大手情報誌から某オーケストラの広報マン、劇団制作などを経て、現在フリーで活動。エンタメ業界に携わること約40年。独自のネットワークを駆使した...

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