インタビュー
2023.06.14

指揮者・竹本泰蔵〜J.ウィリアムズの素晴らしいオーケストラ・サウンドを共有したい!

ONTOMO編集部
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東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...

『素晴らしきジョン・ウィリアムズの世界』レコーディング風景より
©︎平舘平

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2023年に91歳を迎え、来日も予定している巨匠作曲家ジョン・ウィリアムズの作品を集めたアルバム『素晴らしきジョン・ウィリアムズの世界』が6月14日に発売されます。人気曲から世界初録音の作品まで含む、ジョン・ウィリアムズ愛に溢れた一枚です。

本作で東京交響楽団を指揮した、映画音楽指揮の第一人者である竹本泰蔵さんに、聴きどころや想いを伺いました。

1977年に開催されたカラヤン・コンクール・ジャパンで、ベルリン・フィルを指揮し、第2位に入賞。カラヤン氏に招かれて、ベルリンを中心に研鑽を積む。帰国後は全国の主要オーケストラに客演し、クラシック・コンサートはもとより、オペラ、バレエ、ミュージカル、また映画音楽、ポップスやロック・アーティストとの共演、ゲーム・アニメ音楽など、ジャンルを超えて活躍中。名古屋芸術大学特別客員教授。
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——竹本さんはカラヤンに憧れて指揮者を志し、ベルリン・フィルのアカデミーでも研鑽を重ねられ、プロフィールだけを見るとクラシック街道まっしぐらに見えるのですが、数多くのゲーム音楽や映画音楽を指揮していらっしゃいます。特に「映画音楽」を指揮されるようになった経緯を教えていただけますか?

そもそも父が映画好きで、母も姉も歌謡曲やポップス好き、兄がピアノを弾くという家庭でしたので、ジャンルによるこだわりはまったくありませんでした。指揮者になるためにはクラシック音楽を勉強しなくてはならないので、大学は作曲専攻でした。たまたまコンクールで賞をいただきましたが、その後もTV局で音楽監修、放送管弦楽団で指揮や編曲、そしてミュージカルの音楽監督などをしていましたので、自分では自然な流れだと思っています(笑)

——今回取り上げたジョン・ウィリアムズは、ここ数年指揮者としての活動も活発になっています。ボストン·ポップスでの演奏なども含めて、「指揮者ジョン・ウィリアムズ」から「指揮者・竹本泰蔵」はどんな影響を受けているのでしょうか?

映画音楽の華麗なスコアを指揮する時、ついオーケストラを鳴らそうと、肩に力が入ってしまうのですが、彼が指揮をする姿を見ていると、心から音楽を楽しみ、そして音楽する喜びと幸せに満ちています。まさに理想的な姿だと、一歩でも彼に近づきたいという思いです。

——今作の目玉とも言える「ハリー・ポッターと賢者の石~子供のための管弦楽組曲」は全曲版初録音だそうです。4曲セットの組曲は比較的取り上げられる機会が多いですが、こちらのバージョンならではの魅力を教えていただけますか?

ホルン4重奏(ホグワーツよ永遠に)やファゴット3重奏(ヴォルデモート)など室内楽的な楽しみから、木管楽器(ニンバス2000)や金管楽器のアンサンブル(クィディッチ)、そして大オーケストラ(ハリーの不思議な世界)まで、ハリー・ポッターの世界観をさまざまな演奏スタイルでお楽しみいただけます。ちょっとマニアックですが、映画本編では未使用の「ダイアゴン横丁」もおすすめです!

「ダイアゴン横丁」では、リコーダーの音色が映画の世界を感じさせてくれる。
「フラッフィーと彼のハープ」では、コントラ・ファゴットとハープの珍しい二重奏が楽しめる。
©︎平舘平

——『スター・ウォーズ』シリーズからの4作品と『プライベート・ライアン』の「戦没者への賛歌」は、J.ウィリアムズ作品の中でも比較的レアな部類に入ると思います。数多くの作品の中から、どんな思いで選曲されたのでしょうか。

J.ウィリアムズの作品には、穏やかな響きの中にも心揺さぶられる名曲がたくさんあります。魔法やファンタジーの世界ではなく、人間としての深い想いやドラマもお送りしたいと考え、選曲しました。

——オリジナルではイツァーク·パールマンのヴァイオリンで演奏されていた『シンドラーのリスト』のテーマを、今回「チェロ版」で取り上げていますね。

昨年、仙台フィルのコンサートでチェロ版を演奏した時に、「ヴァイオリンもいいけど、チェロ版は泣ける!」というご意見をたくさんいただきました。それで今回も是非! という事で。

名曲のソロを務めたのは、東京交響楽団首席チェロ奏者・伊藤文嗣さん(写真右)。
©︎平舘平

——このレコーディングが東京交響楽団のコンサートマスターとしての最後の仕事になった水谷晃さんとのコラボレーションはいかがでしたか?

水谷さんとは群馬交響楽団時代からご一緒しています。東京交響楽団ではガーシュウィンのレコーディングや、トムとジェリーのライブ・コンサートなど、明るく皆さんをまとめるリーダーとしての才覚にいつも感心しています。今回は深く心に沁み渡る、素晴らしいソロを演奏されています!

2023年3月30、31日の本作レコーディングがコンサートマスターとしての最後の演奏になった水谷晃さん。「ダイアゴン横丁」、「ユダヤの街並み」のソロでその音色を堪能できる。
©︎平舘平

——今作は映画ファン、クラシック音楽ファン双方が手に取る作品だと思います。

J.ウィリアムズさんがウィーン・フィルやベルリン・フィルを指揮する時代です。「映画音楽」「クラシック」という分類ではなく「オーケストラ音楽」と捉え、多くの皆さんとこの素晴らしいオーケストラ・サウンドを共有できればと心から願っています。

©︎平舘平
素晴らしきジョン・ウィリアムズの世界
アルバム情報
素晴らしきジョン・ウィリアムズの世界

ハリー・ポッターと賢者の石~子供のための管弦楽組曲
1 I. ヘドウィグの飛行 
2 II. ホグワーツよ永遠に
3 III. ヴォルデモート  
4 IV. ニンバス2000 
5 V. フラッフィーと彼のハープ  
6 VI. クィディッチ  
7 VII. 家族の肖像  
8 VIII. ダイアゴン横丁
9 IX. ハリーの不思議な世界

プライベート・ライアン
10 戦没者への賛歌  Hymn to The Fallen

シンドラーのリスト
11 テーマ (チェロ版)
12 ユダヤの街並み 

スター・ウォーズ /最後のジェダイ
13 レベリオン・イズ・リボーン

スター・ウォーズ エピソード1 ファントム・メナス
14 フラッグ・パレード  
15 ジャージャーの冒険  
16 運命の戦い*  

指揮:竹本泰蔵 管弦楽:東京交響楽団 
コンサートマスター:水谷晃 ソロ・チェロ:伊藤文嗣(11)
合唱:東京混声合唱団(10、16)

録音:2023年3月30-31日 武蔵野音楽大学 バッハザール

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