丸田美紀と磯村由紀子が箏とピアノで日本の四季を表現！日本の美を幅広く届ける

作曲家・ピアニストの磯村由紀子さんと箏奏者の丸田美紀さんに、新譜『うららか-美しい日本箏&ピアノ Beautiful JAPAN Koto&Piano-』についてインタビュー！箏とピアノの共演について、そして日本の四季にまつわるオリジナル曲の制作秘話などを中心に、お話しいただきました。

取材・文

長井進之介　ピアニスト/音楽ライター

国立音楽大学演奏学科鍵盤楽器専修（ピアノ）卒業、同大学大学院修士課程器楽専攻（伴奏）修了を経て、同大学院博士後期課程音楽学領域単位取得。在学中、カールスルーエ音楽大学...

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中国公演より

心に残る作品、表現力豊かな演奏によって中国で絶大な人気を誇る作曲家・ピアニストの磯村由紀子、ジャンルを問わずさまざまなアーティストとのコラボレーションで幅広い音楽性と超絶技巧を披露する箏奏者の丸田美紀。二人のアーティストが共演し、CD『うららか-美しい日本箏&ピアノ Beautiful JAPAN Koto&Piano-』がリリースされた。西洋の楽器であるピアノと和楽器である箏。意外な楽器の組み合わせによるコラボレーションは新しくも懐かしい響きで心に届いてくる。

ピアノと箏を通して届ける日本の美

——四季をイメージしたオリジナル楽曲にアニメソングなどが並び、全体を通して“日本”の魅力を味わえる内容になっていますね。

磯村　美しい風景や四季をキーワードに、日本を象徴する伝統楽器である箏の魅力をお伝えしたいと思い生まれたものです。丸田さんとは数年前からご一緒していますが、最初に共演したときから、“この人といろいろなことをやりたい！”という想いが溢れてしまって。

丸田　磯村さんの作品では、箏という楽器の音色や魅力に改めて気づくことができます。とくに感じるのが、ピアノも箏も弦楽器であるということですね。箏は基本的に尺八などの管楽器と共演することが多いので、伴奏を弾くことがほとんどなのですが、今回はかなり旋律も弾かせていただいて、単音で弾いたときの凛とした響きにハッとさせられました。

丸田美紀（まるた・みき）作・編曲、箏
ナチュラルに箏の表現を追求し、柔軟な感性と適応力で、古典から現代曲の初演、録音、即興まで多岐にわたり活動。国内外で多数のコラボレーションを展開する。NHK邦楽オーデション合格。米国ウエスレアン大学で客員演奏家（1990～1992）。2009年、NYカーネギーホールにてテリー・ライリー、クロノス・カルテットと共演。第65回グラミー賞最優秀グローバル・ミュージック・アルバム賞受賞作品『SAKURA』に箏で参加。ソロCD『鳥のように』をキングレコードよりリリース。オリジナル作品や五音階で演奏するポップス集など、箏曲編曲楽譜も多数出版。沢井忠夫、沢井一恵に師事。沢井箏曲院教授。沢井忠夫合奏団団員。東京藝術大学邦楽科現代箏曲非常勤講師（2021～）。2023年8月、中国8都市コンサートツアーに参加。2024年9月にも中国ツアーを行なった。

磯村由紀子（いそむら・ゆきこ）作・編曲、ピアノ
3歳からクラシックピアノを、10歳で作曲、12歳でバンド活動を始める。大学では作曲を学び、同時に音楽の仕事を開始。2003年にソロアルバムを発売し、以後、国内外の多くのレコーディングやコンサートに参加している。テーマソングの作曲・演奏も多数担当。特に中国での人気が高く、2003年にリリースしたソロアルバムの表題曲「⾵の住む街」は中央電視台の公共広告に採⽤され、多くのアーティストにカバーされている。2024年には、「風の住む街」に歌詞をつけた「云边的风筝」が、中国の大人気歌手である周深の歌で中国公開の映画『云边有个小卖部』の主題歌になった。また、日本国内でのユニット活動にも力を注ぎ、二胡奏者の甘建民、周昂とのアルバムをキングレコードで多数制作。音楽制作ユニット「Luna Luna」では、妊娠～出産にまつわる歌や小中学校の合唱曲なども手掛ける。2024年にはクリスタルボウルとのコラボレーションによるアルバム『Piano Cool Healing with Crystalbowl』をキングレコードよりリリース。箏奏者の丸田美紀とは箏とピアノの楽曲を多数制作し、国内外の箏＆ピアノ奏者に演奏されている。2023年からは中国にて毎年、甘建民、丸田美紀と共にホールツアーを開催している。

——箏は13弦をはじめ17や25弦など、さまざまな種類のものがありますが、あえて今回は13弦にこだわったそうですね。

丸田　弦の数が増えれば掴めるコードや転調への対応などが楽になるのですが、倍音の関係があるのか、弦が多いほど音色が西洋の響きに近づいてしまうのです。今回はあえて“日本らしさ”にこだわりたく、箏本来の素朴な音色をお届けできる13弦箏で演奏しました。

——四季にまつわる楽曲は全曲磯村さんが作曲されています。

磯村　もともとは二胡のために書いた《サクラ》という楽曲が核になっています。それに加えて、四季にまつわるキーワードをプロデューサーからご提示いただき、創作していきました。

丸田　いまSNSの投稿にBGMをつける機能がありますが、海外の方が桜の投稿をされる際、《サクラ》がものすごくたくさん使われているんですよ。今回の収録曲もあらゆる日本の風景にマッチする楽曲ばかりなので、ぜひ投稿のBGMにしていただきたいですね。

日本食やアニメといった日本の魅力も！

——《風舞い花》や《雪見奏》など、とても美しいイメージにあふれたタイトルの楽曲ばかりのなかにある、《寿司たこやきラーメン》の存在感がすごいですね！（笑）

磯村　海外の方がよくイメージされる人気の日本食ということで、これもぜひSNSでBGMにしていただきたいのですが、同時にぜひ歌ってほしいのです。

丸田　旋律をお聴きいただくと、ちゃんと“寿司たこやきラーメン♪”と歌えるようになっているんですよ！

——日本を象徴するものとしてアニメやボカロも重要な存在ですが、今回収録された3曲（《アイドル》、《残酷な天使のテーゼ》、《千本桜》）をまさかピアノと箏で聴けるとは思いませんでした。

磯村　ポップスを和楽器で演奏される方は最近増えてきましたが、そのなかでもこれほどの超絶技巧作品はそうないと思います。とくに《アイドル》は丸田さんだからこそ弾きこなしていただける楽曲になっています。

丸田　超絶技巧ですし、転調もひじょうに多いので本当に大変でした（笑）。でも改めて箏の可能性も感じることができ、演奏していてとても楽しいです。

多彩な内容で箏とピアノのコラボレーションを楽しむことができる『うららか-美しい日本箏&ピアノ Beautiful JAPAN Koto&Piano-』。四季にまつわるオリジナル曲にジャパニーズ・ポップスのほか、中国で大ヒットしている磯村の代表曲《風の住む町》、丸田のオリジナル曲《海と》なども収められている。それぞれの作品と演奏の魅力はもちろんだが、楽曲を通して感じられる日本の“美”は世界中の人々の心を捉えることだろう。