「ラウラに」——ボン時代の歌曲の集大成
生誕250年にあたる2020年、ベートーヴェン研究の第一人者である平野昭さん監修のもと、1日1曲ベートーヴェン作品を作曲年順に紹介する日めくり企画!
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東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...
ボン時代の歌曲の集大成 「ラウラに」
1792年、ボン時代の最後の年にフリードリヒ・フォン・マッティッソン(1761~1831)の3節からなる詩に作曲されている。マッティッソンはその詩作をベートーヴェンが好んだ詩人のひとり。この「ラウラに(寄せて)」は、逝去したラウラという名の愛する女性への追悼詩だろう。
全体的には通作形式(歌詞が進むごとに異なる旋律をつけていく形式)だが、最初の2節はリピートで繰り返される有節形式。8分の6拍子のト長調で、4小節の前奏の後に「君のあらゆる前途を喜びの花が飾る。今まで出会ったどんな純真な乙女より美しく飾る、魂の安らぎ、天からの最上の祝福が降り注ぐだろう、春風のように、光の衣装を纏ったなかで再び会うその日まで」と第1節が歌われ、4小節の後奏のあとにリピートして「微笑みながらセラフィム(天使の階級のひとつ)が舞い降りる、褒章の棕櫚(ヤシ科の木シュロ)を抱えて。暗き谷間から君の高貴な魂を彼岸の生活へと引き上げる。そこには我らの行いを判定する審判者がいる」の第2節のあと、4小節の後奏は4分の4拍子の変ホ長調へと転調し、第3節前半がレチタティーヴォ風に歌われる。「すると神の厳粛な秤が鳴り響く、君のために歓喜の響きが、不純な音のひとつもなく。そして友は君の墓の前で語る」第3節後半で8分の6拍子のト長調に戻り、「幸福よ!君の最期の日は太陽の沈みゆく五月であった、それは五月の日没だった」。
ボン時代の歌曲のなかで最も充実していて変化に富み、アリア風でさえある。
解説:平野昭
1792年、ウィーンに旅立つ11月までに作曲された作品です。マッティソンの格調高い詩につけられた、ボン時代の歌曲の傑作をお楽しみください。
「ラウラに」WoO112
作曲年代:1792年(ベートーヴェン22歳)
出版:1916年
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