鳥が登場するクラシック〜音楽で楽しむ鳥類図鑑
東京生まれの宇都宮育ち。高校卒業後、渡仏。リュエイル=マルメゾン音楽院にてフルートを学ぶ。帰国後はクラシックだけでは無くジャズなど即興も含めた演奏活動や講師活動を行な...
さえずりや、その美しい姿で、古今の芸術家たちを刺激してきた鳥たち。もちろん音楽家も例外ではありません。今回は、作曲家たちが作品に登場させた鳥たちをプレイリストにしてご紹介。描写的なもの、実際の鳥の声を流すもの、果ては伝説の鳥まで? 音楽の鳥類図鑑をお楽しみください!
※鳥といえば! の作曲家、オリヴィエ・メシアン作品は、別の記事で深掘りしていますので、ここでは除外しています。
ゴシキヒワ Carduelis carduelis
美しい姿から、古くからペットして愛されてきたゴシキヒワ。愛らしいさえずりも魅力のひとつです。
キリスト教においては、受難の象徴であるアザミの種を食べるため、受難から派生して忍耐、豊穣、継続、さらには救世主の象徴でもあるゴシキヒワ。数多くの宗教画に描かれているのはそのためです。
ヴィヴァルディ:フルート(リコーダー)協奏曲ニ長調《ゴシキヒワ》
ヴィヴァルディは、有名なヴァイオリン協奏曲集《四季》の「春」などでも、鳥の声も模倣を作品に入れていますが、フルート協奏曲集の3曲目はその名も《ゴシキヒワ》。鳥の声を真似たフルート(またはリコーダー)が、非常に可愛らしい作品です。
ナイチンゲール(サヨナキドリ) Luscinia megarhynchos
春の夕方や夜明け前にさえずるため、古英語で「夜に歌う」を意味するナイチンゲール、フランス語ではロシニョール、日本語では夜鳴きウグイスとも呼ばれます。
ヨーロッパではかなり身近な鳥なので、古今の作曲家がこぞってナイチンゲールを題材に音楽を書いています。
フランソワ・クープラン:クラヴサン曲集〜「恋のサヨナキドリ」「勝ち誇るサヨナキドリ」
ヴェルサイユ宮殿で、ルイ14世の音楽家として仕えたフランソワ・クープラン(大クープラン)は、全4巻27組曲からなる『クラヴサン(フランス語でチェンバロの意)曲集』第14組曲の中で、ナイチンゲールを登場させています。
典雅な雰囲気で、恋に悩んでいるような「恋のサヨナキドリ」。愛を勝ち取り、全身を震わせてさえずり、踊っているような「勝ち誇るサヨナキドリ」の2曲です。この曲集にはサヨナキドリの他にも「怯えるヒワ」、「嘆くムシクイたち」などの鳥たちが登場します。
レスピーギ:交響詩『ローマの松』〜「ジャニコロ荘付近の松」
イタリアの作曲家オットリーノ・レスピーギの代表作で、吹奏楽でもよく演奏される交響詩『ローマの松』には、本物のサヨナキドリの声が登場します。ローマ南西部のジャニコロの丘にある松を描写した第3曲の終結部分で、サヨナキドリのさえずりを録音したレコードを流すように指示があるのです! レスピーギ自身が、楽譜に曲の説明を書き添えています。
「大気が揺らぐ。ジャニコロの丘の松は満月に照らされて、くっきりと姿を浮かび上がらせて立ち、サヨナキドリがさえずる」
ヒバリ Alauda arvensis
春の晴れた日、日本の野原でも美しい声で鳴くひばりを見ることができます。オスのひばりは巣を作るテリトリーを宣言するために、さえずりながら空高く昇っていく「揚げひばり」と呼ばれる繁殖行動を行なうのです。
ヴォーン=ウィリアムス:ヴァイオリンと管弦楽のための「揚げひばり(舞い上がるひばり)」
イギリスの作曲家レイフ・ヴォーン=ウィリアムスは、その繁殖行動を描いた「揚げひばり(舞い上がるひばり)」を残しています。オーケストラの描く田園風景の中、独奏ヴァイオリンのひばりが天に昇っていきます。
グリンカ=バラキレフ:「ひばり」
「近代ロシア音楽の父」ミハイル・グリンカが、ネストル・クコルニクの詩に曲をつけた『サンクト・ペテルブルクとの別れ』〜「ひばり」も印象的です。野原に響く誰かの歌声と、その上空で鳴くひばりの情景を歌っています。このプレイリストでは、グリンカの後輩バラキレフが、ピアノ用に編曲したものを聴いてみましょう。
カッコウ Cuculus canorus
その特徴的な鳴き声がそのまま名前になった鳥、カッコウも音楽作品の常連です。ベートーヴェンの交響曲第6番《田園》にも登場します。
シュメルツァー:ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ イ短調『カッコウ』
ヨハン・ハインリヒ・シュメルツァーは、バロック時代オーストリアのヴァイオリニスト・作曲家。音楽家といえばイタリア人! というハプスブルク宮廷の中で、ドイツ人として初めて宮廷楽長にまで昇り詰めた人物です。
この『カッコウソナタ』は、5分ほどの短い作品ですが、技巧的なヴァイオリンの至るところに「カッコウ」が潜んでいます。
ディーリアス:「春初めてのカッコウの声を聴いて」
イギリスの作曲家フレデレリック・ディーリアスは「春初めてのカッコウの声を聴いて」というオーケストラ作品を書いています。その年初めてのカッコウの声を聞くと、「春がきたなぁ」としみじみ感じますが、それは日本もイギリスも変わらないのですね。
ハクチョウ Cygnus cygnus
水面を滑るように泳ぐ美しい白鳥は、チャイコフスキーのバレエ音楽《白鳥の湖》や、サン=サーンスの「白鳥」などの名曲に登場しますが、今回は少し変わり種をご紹介。
ラウタヴァーラ:鳥と管弦楽のための協奏曲「カントゥス・アルクティクス(北極圏の歌)」〜第3楽章「渡りをする白鳥」
シベリウスに師事したフィンランドの現代作曲家エイノユハニ・ラウタヴァーラが作曲した、テープに録音された北極圏の鳥たちの声と管弦楽のための協奏曲「カントゥス・アルクティクス(北極圏の歌)」。第3楽章は、湖に集まって越冬のため飛び去っていくハクチョウの群れの声をフィーチャーしています。
オルフ:『カルミナ・ブラーナ』〜「わたしはかつて湖に住んでいた(炙られた白鳥の歌)」
ドイツの作曲家カール・オルフが、ベネディクトボイエルン修道院で発見された古い詩歌集「カルミナ・ブラーナ」に曲をつけた世俗カンタータにも、一風変わった白鳥が登場します。
独唱テノールが、いかにも情けない様子で「昔、湖に住んでいたときには、とても美しい姿だった。白鳥だった時には」と歌うと、合唱が「なんてことだ! 今や真っ黒にローストされる身」と、つっこみを入れる、なんとも不思議な一曲。白鳥の運命やいかに!
クジャク Pavo cristatus
その美しい姿が音楽になってきた鳥といえばクジャクを忘れることはできません。インド、スリランカに生息する鳥ですが、古くからヨーロッパや東アジアにも輸入されてきました。
ラヴェル:《博物誌》〜「孔雀」
モーリス・ラヴェルが、ジュール・ルナールの詩集『博物誌』の中から選んで作曲した歌曲集の中の「孔雀」。重たい婚礼衣装(飾り羽)を纏って、いつまでもやってこない花嫁を待つ、インドの王子のように優雅なクジャク。悪魔のような「レーオーーン!!」という鳴き声の描写が印象的なのですが、実際の鳴き声もなかなか強烈でした。曲と一緒にお楽しみください。
コダーイ:ハンガリー民謡「孔雀は飛んだ」による変奏曲
ハンガリーの作曲家コダーイ・ゾルタンは、孔雀に自由への思いを乗せています。時は第二次世界大戦、ファシズムにより、どんどん自由が奪われていく時代。「哀れな囚人たちを解放するために飛ぶ孔雀」という内容の農民歌を題材に合唱曲と、この変奏曲を作曲しました。この民謡はもともと、オスマン・トルコ支配下時代に、鎖なき囚人と呼ばれたマジャール人たちの、自由への思いを歌っているそうです。
番外編:不死鳥
寿命がくると自ら火に飛び込み蘇る、永遠の命をもつ鳥「フェニックス」。実在するかは神のみぞ知る、なのですが、この伝説の鳥も音楽に登場しています。
バロック時代フランスの作曲家コレットは、4つのバス楽器のための協奏曲に「フェニックス/不死鳥」の名を冠しました。ロシアの作曲家イゴール・ストラヴィンスキーの出世作は、魔法の羽をもつ「火の鳥」が登場するロシア民話をもとにしたバレエ作品です。
ミシェル・コレット:4つのヴィオールまたはファゴットのための協奏曲「不死鳥」
ストラヴィンスキー:バレエ音楽『火の鳥』
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