プレイリスト
2024.12.13
特集「クリスマス 2024」

「クリスマス」がタイトルに入ったクラシック音楽15選

キリスト教と密接な関係にあるクラシック音楽。キリスト教でいちばん大切な行事であるクリスマスを題材にした作品はかなりの数に及びます。今回はタイトルに直接「クリスマス」という言葉が入った作品を集めてみました。定番から少し変わった曲も入っていますので、ホリデイシーズンのBGMとして流すもよし、ゆっくりと作品と向かい合うもよし......みなさん、素敵なクリスマスをお過ごしください!

ONTOMO編集部
ONTOMO編集部

東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...

解説:安保美希(音楽之友社楽譜課)、川上哲朗(WebマガジンONTOMO編集部)

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コレルリ:クリスマス協奏曲

イタリアバロックの巨匠アルカンジェロ・コレルリの「クリスマス協奏曲」。正式なタイトルは「合奏協奏曲 ト短調 作品6-8」ですが、出版された楽譜には「クリスマスの夜のために」と書かれています。全6楽章で、5楽章までは一般的な「合奏協奏曲」の様式で進められますが、通常であれば早いテンポの曲でフィナーレを飾るところに、ゆったりとした「パストラーレ」が置かれています。

パストラーレ(パストラールとも)とは、もともと羊飼いの牧歌的な生活そのもの、それをテーマにした文学(田園文学)や劇を意味する言葉。バロック音楽では、イタリアの羊飼いたちがクリスマスの時期になると街に降りてきて聖母マリア像の前で演奏した管楽器やバグパイプの音色が重なって、パストラーレといえばクリスマスのイメージが定着しました。

たとえばコレルリより半世紀ほど後の作曲家ジュゼッペ・タルティーニの「シンフォニア・パストラーレ」は、「クリスマス交響曲」とされることもあります。(川上)

ダカン:オルガンのための新しいノエル曲集

「ノエル」とはフランス語でずばり「クリスマス」。音楽用語ではクリスマスをお祝いする歌、すなわち「クリスマス・キャロル」を意味します。天才クラヴサン(チェンバロ)・オルガン奏者としてルイ14世に寵愛され、最終的にはノートルダム大聖堂のオルガニストに上り詰めたルイ・クロード・ダカンが、12のノエルを主題に紡ぐ、楽しい雰囲気に包まれた変奏曲集です。(川上)

バッハ:クリスマス・オラトリオ

音楽の父ヨハン・ゼバスティアン・バッハの「クリスマス・オラトリオ」は、1734年の12月25日から翌年6日にかけてライプツィヒの聖トーマス教会と聖ニコライ教会で演奏された6曲のカンタータをまとめた大作です。キリストの生誕(クリスマス)から、神として世に現れた顕現日(エピファニー)までを壮大に描きます。

それぞれの曲の内容や解説は、連載「おはようバッハ」をチェックしてみてくださいね。

第1部「歓呼の声を放て、喜び踊れ」——降誕節第1日

第2部「このあたりに羊飼いおりて」——降誕節第2日

第3部「天を統べたもう者よ」——降誕節第3日

第4部「ひれ伏せ、感謝もて」——主の命名日

第5部「栄光あれと、神よ、汝に歌わん」——新年後第1日曜日

第6部「主よ、勝ち誇れる敵どもの息まくとき」——顕現節

ちなみに全曲を通して、第2部の冒頭「シンフォニア」だけが唯一、器楽のみで演奏されます。もちろんこの曲はパストラーレのスタイルで作曲されています!(川上)

シューマン:クリスマスの歌(子どものための歌のアルバムより)

子煩悩のロベルト・シューマンは、子どもたちが弾くために、または子どもの世界を表現したピアノ作品をたくさん書きましたが、こちらは子どもたちが歌うをことを想定した曲集。ゲーテやシラー、メリケらの詩につけられた歌のパートは、シンプルながら味わい深いものばかり。この「クリスマスの歌」は、童話作家として有名なアンデルセンの詩に曲をつけています。幼子イエスが生まれた喜びを、ハレルヤ!という言葉とともに歌います。(川上)

グリーグ:クリスマスの子守歌

我が子を愛しく想う母親の姿が見えるような、寒い冬に聴きたいあたたかい歌です。歌詞はデンマークの詩人アドルフ・ラングステズによってデンマーク語で書かれていて、赤ん坊が眠るゆりかごのそばには、平和な時が流れているようです。グリーグは、この曲のほかにも「クリスマスツリーの下で」「クリスマスツリーの歌」「クリスマスの雪」など、クリスマスにまつわる歌をいくつか書いています。(安保)

リスト:クリスマスツリー

超絶技巧を用いたピアノ曲を数多く作曲したリストですが、この可愛らしいタイトルの曲集は(リストにしては)やさしく書かれています。それもそのはず、これはリストの初孫で、クリスマス・イヴ生まれのダニエラ・フォン・ビューローへのクリスマス・プレゼントとして作曲されたのです! 1873年から76年ころに作曲され、改訂を行なった1881年のクリスマスの日、ダニエラの21歳の誕生日の次の日に全曲初演が行なわれました。クリスマスの歌や風景を描いた12曲の中には歌詞が書き込まれた作品もあり、もしかするとリストがダニエラと一緒に口ずさんだのかもしれませんね。(川上)

アドルフ・アダン:クリスマスの讃美歌

クラシックの作曲家がクリスマス・ソングを作ることは意外に少なく、これは貴重な19世紀発の1曲です。今ではほぼ、バレエ音楽《ジゼル》の作曲家としてのみ名を残しているアダンですが、なんといっても代表作はこの「クリスマスの讃美歌」でしょう! フランスでは歌詞の最初を取って「真夜中だ!キリスト教徒たち」というタイトルで親しまれており、世界的には英訳された「オー・ホーリーナイト」として愛されています。(川上)

チャイコフスキー:「12月:クリスマス」~《四季》より

チャイコフスキーが1年の各月に曲をつけたピアノ曲集《四季》。12月は「クリスマス」と題されています。ロシアで出版された楽譜には、チャイコフスキーが作曲にあたってインスピレーションを受けた詩が付けられています。この曲にはロシア・ロマン主義の詩人ヴァシーリー・ジュコーフスキーによる、クリスマスの夜にスリッパを投げて占いをする少女たちの詩の冒頭が掲げられています。(川上)

シベリウス:5つのクリスマスの歌 Op.1

1. サンタが扉をノックする 2. クリスマスがやって来る 3. もう外は暗くなって 4. わたしには富も名声もいらない 5. 雪は深く積もって

オルガンと合唱という編成でも親しまれている歌曲集。それぞれにテーマがあり、「サンタが扉をノックする」はサンタクロースがドアをノックする様子、「クリスマスがやって来る」は家族でクリスマスをお祝いできる喜び、「もう外は暗くなって」は昼過ぎには日がすっかり落ちてうす暗いなか風が吹いている情景、「わたしには富も名声もいらない」は神さまに祝福と世界の平和を祈り、「雪は深く積もって」は一面が雪で真っ白い様子を歌っています。とくに最後の2曲は、現在もクリスマスの時期によく歌われる人気の曲。(安保)

バルトーク:ルーマニアのクリスマスの歌

厳しい作風が印象的なバルトークですが、子どものための作品もたくさん残しています。1915年の「ルーマニアのクリスマスの歌」は、現地調査で採取した「コリンダ」の旋律をもとにしたピアノ曲です。コリンダとは、ルーマニアの農村でクリスマスの時期、少年たちが村の家々を周って歌う、キリスト教伝播以前から行なわれていた風習だそうです。本来は新年のお祝いだったものが、宗教弾圧などからキリスト教のお祝いに変換していった歴史もあり、西洋的なクリスマスとは異なる雰囲気の曲が多いのも興味深いですね。バルトークも「コリンダの歌唱はつつましく宗教的ではなく、雄々しく挑戦的である」と語っています。(川上)

クーラ:ヴァイオリンとピアノのための2つの作品より第1番「クリスマスのうた」

シベリウスに師事し歌曲を多くのこしたトイヴォ・クーラは、指揮者としても活躍。ヴァイオリンとピアノのために書かれたこの作品は、子どもたちに読み聞かせをしているような語り口調で始まります。外は吹雪いていて、窓の外を暖炉の火のそばから眺めている情景が浮かびます。(安保)

ジョリヴェ:クリスマスのパストラール

1. 星 2. 東方の三博士 3. 聖母マリアと幼子 4. 羊飼いの入場と踊り 

アンドレ・ジョリヴェは20世紀フランスに活躍した作曲家。第2次世界大戦前は無調による前衛的な手法が目立ちましたが、戦後には調性によったより抒情的な作品を手掛けるようになります。この曲はまさにその転換期、戦中の1943年、フランスがナチスに占領されたヴィシー政権下最後の年のクリスマス・イヴにラジオ放送で初演されました。アマチュアの演奏家でも演奏できるよう易しく書かれたフルート、ファゴット、ハープによるアンサンブルは、どこかほの暗く、楽しいというよりは瞑想的なクリスマスの雰囲気を描き出します。(川上)

アンドレー:クリスマスのポルカ

スウェーデンの女性作曲家のエルフリーダ・アンドレーのピアノ曲。ポルカとはガラッと印象が変わって暖炉のそばで聴きたくなるような穏やかなピアノ曲「希望に満ちたクリスマス」という曲もおすすめです。(安保)

オネゲル:クリスマスのカンタータ

20世紀の作曲家アルチュール・オネゲルが晩年に作曲した「クリスマスのカンタータ」は、多言語国家であるスイスの作曲家ならではの作品です。曲はラテン語の典礼文「深き淵より」で、ほの暗くはじまりますが、次第にドイツ語とフランス語の伝統的なクリスマス・キャロルの数々……バッハも使用した讃美歌や「きよしこの夜」まで聴こえてきます。典礼文も神を讃える喜ばしいものに変わり、最後はアーメンで締めくくります。暗黒からキリストの生誕を経て喜びへ。それはオネゲルが生きた戦争から平和へ、という時代の移り変わりと重なるかもしれません。(川上)

おまけ/シベリウス:もみの木

樅の木はクリスマスには欠かせない存在ですが、長く厳しい冬のあいだも力強く根を張る姿から、フィンランドの人々の支えとなるシンボルとして愛されています。ピアノ組曲「樹の組曲」の第5曲「もみの木」はシベリウスの自然への愛と讃美が感じられる小品で、神秘的な冬景色が静かに広がります。(安保)

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