「クラヴィーア四重奏曲ハ長調」——モーツァルトを学習した成果を見てみよう!
生誕250年にあたる2020年、ベートーヴェン研究の第一人者である平野昭さん監修のもと、1日1曲ベートーヴェン作品を作曲年順に紹介する日めくり企画!
仕事終わりや寝る前のひと時に、楽聖ベートーヴェンの成長・進化を感じましょう。
東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...
モーツァルトを学習した成果を見てみよう! 「クラヴィーア四重奏曲変ハ長調」
このピアノ四重奏曲の2楽章は、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第1番の第2楽章と主題が同じなんですよ。第3楽章の主題には、ピアノ・ソナタ第3番の中の第1楽章の主題がふたつ出てきます。
かつては、モーツァルトのピアノ四重奏曲を土台として書かれたと言われたこともありましたが、実はモーツァルトより早くに作曲されています。モーツァルトの2曲は、その年の12月に出版されましたが、ベートーヴェンは10月か11月に作曲しているから、見られていないはず。完全にベートーヴェンのほうが先なんです。
じゃあ、モーツァルトっぽい音楽なのに、影響を受けていないないかっていうと、実はモーツァルトの《アウエルンハンマー》ヴァイオリン・ソナタ集6曲のうちの3曲の1~3楽章の枠組みと、調性と拍子とテンポを、全部このWoO36の3曲に使っています。
ヴァイオリン・ソナタを模倣したんじゃなくて、その形をピアノ四重奏にしたんです。すごく面白いんだけど、ほとんど知られていません。
平野昭談
この時期のベートーヴェンは、モーツァルトの勉強を一生懸命していたそうです。今日から3日間にわたって紹介する「クラヴィーア四重奏曲」3曲を通して、ベートーヴェン少年がいかにモーツァルトを吸収したか、また、その中に表れているベートーヴェンらしさも見ていきましょう。
「クラヴィーア四重奏曲ハ長調」WoO36-3
作曲年代:1785年10~12月(ベートーヴェン14歳)
出版:1828年
作曲順とWoO番号(初版譜による)が不一致だが、3番(ハ長調)、1番(変ホ長調)、2番(ニ長調)の順で成立。3曲セットとして死後出版。
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