「ピアノ三重奏曲第2番 卜長調」——“ウィーンで新しい音楽を”と意識したベートーヴェン
生誕250年にあたる2020年、ベートーヴェン研究の第一人者である平野昭さん監修のもと、1日1曲ベートーヴェン作品を作曲年順に紹介する日めくり企画!
仕事終わりや寝る前のひと時に、楽聖ベートーヴェンの成長・進化を感じましょう。
1792年、22歳のベートーヴェンは故郷ボンを離れ、音楽の中心地ウィーンに進出します。【天才ピアニスト時代】では、ピアニストとして活躍したウィーン初期に作曲された作品を紹介します。
東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...
“ウィーンで新しい音楽を”と意識したベートーヴェン 「ピアノ三重奏曲第2番 卜長調」
「第2番」には27小節にわたる長い序奏部が置かれている。これは《選帝侯ソナタ》に共通する特徴であり、後の作品である《悲愴ソナタ》にも繋がるものである。
「遅いところから速く」というのはバロックの教会ソナタ(緩—急—緩—急)のテンポのコントラストに通じるものですね。この時期の彼はモーツァルトやハイドンなどのウィーンの影響というよりも、ボンでネーフェから学んだC.P.E.バッハの影響が大きいですね。……というよりも、ベートーヴェンはあえてそれを打ち出したのかもしれません。当時のウィーンはイタリア礼賛の地でしたから、音楽にもその趣味が反映されていました。一方でベートーヴェンの音楽は北ドイツ風。「ウィーンで新しい音楽を」というのをかなり意識していたのではないかと思います。
「第2番」もやはり調選択に特徴があります。第1楽章はト長調で始まりますが、第2楽章は短3度下の並行短調のホ短調ではなく、その同主調のホ長調で書かれています。ロマン派に繋がる彼の音楽観が、こうした調の選び方ひとつとってもすでにはっきりと表れていますね。
――小山実稚恵、平野昭著『ベートーヴェンとピアノ「傑作の森」への道のり』(音楽之友社)24、26ページより
ボン時代に完成していたとされる第1番に続き、作品番号1のピアノ三重奏3曲セットの2曲目です。「あえて『Op1』をつけて世の中に出した作品だから、絶対に自信作だったはずです」と平野さんも評する、ベートーヴェン渾身の作品です。
「ピアノ三重奏曲第2番 卜長調」Op.1-2
作曲年代:1793~95年(ベートーヴェン23~25歳)
出版:1795年7月
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