井内美香のすべての道はオペラに通ず 第5回《ロッシーニに夢中な人々》特別編

初めてのロッシーニ・プレイリスト ロッシーニに夢中な人たちが推薦するオペラ・ランキング

プレイリスト
2018.12.14

前後編に渡ってお送りした《ロッシーニに夢中な人々》の総仕上げ! ロッシーニに夢中な人たちに聞いた「初心者にもおススメのロッシーニ作品」を今回は第1~3位のランキングを発表! 井内美香さんの選曲によるプレイリストを聴けば、あなたも完全にロッシーニに夢中な人です!

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パリの風刺新聞「ル・アネトン」1867年第21号の表紙に掲載されたロッシーニの風刺画(フランス国立国会図書館蔵)
選曲・解説・ロッシーニに夢中な人
井内美香 音楽ライター/オペラ・キュレーター
井内美香
選曲・解説・ロッシーニに夢中な人
井内美香 音楽ライター/オペラ・キュレーター
学習院大学哲学科卒業、同大学院人文科学研究科博士前期課程修了。ミラノ国立大学で音楽学を学ぶ。ミラノ在住のフリーランスとして20年以上の間、オペラに関する執筆、通訳、来...

今回インタビューに答えてくださった15人の〈ロッシーニに夢中な〉方々に、それぞれおススメするロッシーニの2作品をお伺いしました。(ほとんどの方が2つには絞れない! と2作品以上になることもしばしば……)

皆さんこだわりの選曲で、すべてご紹介したいところですが、今回はランキング形式で上位の作品を発表! 井内美香セレクトのプレイリストで、さぁ、あなたもこれでロッシーニに完全に夢中になります!

これは外せない! 永遠の名作喜劇

第1位 (7票)《セビーリャの理髪師》

圧倒的人気(投票しなくとも、ほとんどの方が作品名を口にしていました!)で堂々1位は【前編】でもご紹介したオペラ・ブッファ(身近なできごとを題材とする喜劇)《セビーリャの理髪師》です。

おススメするのは《セビーリャの理髪師》。なぜなら、これまでに書かれたすべてのオペラ・ブッファの中の最高傑作だからです。(ジャコモ・サグリパンティ)

もっとも有名で、どのようなオペラを歌うにも必ずお手本になる作品です。物語が良くできていて、登場人物たちも有名だし、音楽は素晴らしいです。(リゼット・オロペーザ)

解説と物語

ステルビーニ台本、ロッシーニ作曲。1816年ローマ初演。革命の時代にフランスで書かれたボーマルシェの戯曲をオペラ化したもの。スペインのセビーリャを舞台に、強欲な医師ドン・バルトロに閉じ込めらている美女ロジーナと彼女に恋するアルマヴィーヴァ伯爵が、理髪師フィガロの知恵で結ばれるまでを描く。貴族社会が終わりを告げ、市民社会が台頭する時代の息吹を伝える革命的オペラ・ブッファ。現代に至るまで最も人気のあるオペラの一つ。

上: 《セビーリャの理髪師》の原作者で、フランスの実業家、劇作家カロン・ド・ボーマルシェ(1732-1799)
右: “セビーリャの理髪師”ことフィガロに扮するロシアのバリトン歌手ミハイル・カラカシュ(1887-1937))

イタリアのシンデレラは自ら運命を切り開く

第2位(5票)《ラ・チェネレントラ》

オペラ・ブッファ《ラ・チェネレントラ》が2位にランクイン。やはり、ロッシーニの導入には楽しいブッファが最適と考える方が多かったようです。

素直な気持ちで接すれば、ロッシーニの天才と技量が充分味わえるはずです。(ダニエラ・バルチェッローナ)

有名な物語を原作にしているが、ロッシーニのこのオペラはもとの物語よりもいろいろと考えさせられる。(マキシム・ミロノフ)

解説と物語

ロッシーニが最後に書いたオペラ・ブッファであり、彼のブッファの最高傑作とされる。

物語

チェネレントラとはイタリア語でシンデレラの意味。健気な娘アンジェリーナ(チェネレントラ=灰かぶり娘と呼ばれている)は母が亡くなった後、義理の父ドン・マニーフィコと継姉二人に虐げられて、召使いのようにこき使われながら暮らしている。

あるとき、お城の王子様のお妃選びの舞踏会が開かれることになった。王子の家庭教師アリドーロの考えで、従僕ダンディーニと王子は服装を取り替え、身分ではなく王子自身を愛する娘を探す。アリドーロ自身も乞食に身をやつし、ドン・マニーフィコの家を訪れて、アンジェリーナの優しい心に触れる。

王子とアンジェリーナが出会って幸せになるまでを描く、イタリア式のシンデレラ物語!

運命に翻弄された悲劇の女王を描く大作

第2位 (5票)《セミラーミデ》

同率2位はロッシーニが書いたオペラ・セリア(歴史などに題材を求めた悲劇)の代表作《セミラーミデ》がランクイン。40周年を迎える2019年ロッシーニ・オペラ・フェスティバルでも上演が決定しています。

《セミラーミデ》はロッシーニのベルカントの最高傑作です。ベルカントの金字塔だと言えます。つまり歌の勝利、ロッシーニの美学の結晶です。(ミケーレ・マリオッティ)

このオペラは音楽の大伽藍で、ロッシーニがその中にすべての技量と、彼の音楽の美学を表現しているからです。(レート・ミュラー)

解説と物語

ロッシーニのイタリア時代の最後を飾るオペラが、ヴェネツィアのフェニーチェ歌劇場のために書いたオペラ・セリア《セミラーミデ》。このときロッシーニは30歳、ロッシーニの作品に多大な影響を与えた(そして後に彼の妻になった)スペインの歌姫イザベラ・コルブランのために書いた最後のオペラでもある。古典派の美を備えた、天に向かってそびえ立つ大聖堂のような傑作。

物語

古代バビロニアの女王セミラーミデは、かつて悪漢アッスールの言葉に騙されて夫であるニーノ王の毒殺に手を貸した。そのときに行方不明になってしまった幼子ニニアは、本人も自分の素性を知らぬまま勇敢な若者アルサーチェとして戦場で武功をあげ、セミラーミデは彼が自分の息子とは知らずに密かに恋心を抱いている。

だがセミラーミデが皆の前で自らの夫としての新王にアルサーチェを選ぼうとすると、王の墓が開き、亡霊が現れ「罪ある者を成敗してから」と言うので彼女とアッスールは恐怖におののく。祭司長オーロエに教えられ自分の身の上を知ったアルサーチェは、母セミラーミデが犯した罪を知り、残酷な決断を迫られるのであった。

ドイツの画家アントン・ラファエル・メングスによる『バビロンでの反乱の知らせを受け取ったセミラミス』(1756)。

スイスの英雄を描くロッシーニ最後のオペラ

第3位 (4票)《ギヨーム・テル(ウィリアム・テル)》

第3位はロッシーニ最後のオペラ《ギヨーム・テル》。

「ウィリアム・テル」のお話ですから、抑圧された民族が自由を勝ち取るというテーマがあり、それがどのようにオペラになっているか。ロッシーニの最後の傑作です。(水谷彰良)

《ギヨーム・テル》は、彼の技術と感性が、どの時代にあっても傑作を書くだけの高みにあったことを示す作品です。(ダニエラ・バルッチェローナ)

解説と物語

ロッシーニの書いた最後のオペラで、シラーの『ヴィルヘルム・テル』を原作としたフランス語のオペラ。序曲は日本でも世界でも広く知られている。ロマン派時代の先駆けとなる情緒に満ちた歌と、厚みのあるオーケストラは聴きごたえたっぷり。

よく演奏される「ウィリアム・テル」序曲は実は、序曲全体の最後にある〈ファンファーレ〉と呼ばれる部分のみを抜き出している。本当は、序曲の冒頭にあるチェロの深い音色によるアンサンブルから、嵐を告げる激しい部分を経て、最後のたたみかけるような行進曲までを聴いてこそロッシーニの偉大さを味わうことができる。

物語

ハプスブルク家圧政下のスイスの山岳地帯を舞台に、テルと村人たちがオーストリア人の代官ゲッペルの横暴に屈さず激しい抵抗ののちに自由を得るまでを、村の長老メルクタールの息子アルノールとハプスブルク家の皇女マティルデとの悲恋をからめて描く。

スイスの伝説の英雄ウィリアム・テルが息子の頭に乗せたリンゴを矢で射るシーンのスケッチ(パリ国立図書館蔵)
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