古関裕而——メロディで人々に「エール」を送った作曲家
2020年3月末からはじまったNHK連続テレビ小説「エール」のモデルとなった作曲家、古関裕而さんをご存知ですか? 戦前・戦後を通じて、人々に勇気と希望を与えたその美しいメロディの数々。古関さんの人生のホット・トピックスとともに、飯田有抄さんがご紹介します。
1974年生まれ。東京藝術大学音楽学部楽理科卒業、同大学院修士課程修了。Maqcuqrie University(シドニー)通訳翻訳修士課程修了。2008年よりクラシ...
応援歌の王さま? 古関裕而を知っていますか
古関裕而(こせき ゆうじ)は明治・大正・昭和・平成という4つの元号、戦前と戦後の日本を生きた作曲家です(1909福島~1989神奈川)。昨今でこそ、その名が語られることは少なくなりましたが、彼の手掛けた音楽を聞けば「この曲、知ってる!」と思う人も多いはず。
野球ファンにはお馴染みの阪神タイガースの歌、通称「六甲おろし」(1936)や夏の全国高等学校野球選手権大会の歌「栄冠は君に輝く」(1948)、戦後に傷ついた日本の人々の心を慰めた歌謡曲「長崎の鐘」(1949)、1952年にヒットしたNHKラジオドラマ「君の名は」の主題歌、そしてなんといっても1964年に開催された東京オリンピック開会式で、各国の選手団の入場の際に高らかに響き渡った「オリンピック・マーチ」の作曲者、それが古関裕而なのです。
NHKの朝ドラ「エール」では、古関裕而をモデルとした主人公・古山裕一の生涯が描かれます。ドラマはフィクションとはいえ、古関の音楽家としての生き方や作品の生まれた背景が鮮やかに描かれていくことでしょう。その展開は楽しみに待つとして、作曲家・古関にとっての大きなトピックを少しだけご紹介しましょう。
©福島市古関裕而記念館
日本人として初めて、国際的な作曲のコンクールに入選!
昭和4年(1929)、英国の出版社Chester Music主催のコンクールにおいて舞踏組曲「竹取物語」が2位を受賞した。相当な快挙であるが、本人は長らく周囲に秘密にしていた。残念ながらスコアも現存していない。
日本コロムビア専属作曲家となり、軍国歌謡のヒット作を連発
クラシック音楽路線から、レコード会社に就職し人気作曲家へと方向転換を図る。戦時中は軍国歌謡の作曲の依頼が相次いだ。100曲近く作曲した中でも「露営の歌」(1937年)「暁に祈る」(1940)などが大ヒットした。
戦後は明るい行進曲を作るように
哀調を帯びた軍国歌謡を手掛けた古関は、戦後も人々の心を慰める曲調の「長崎の鐘」(1949)などを書いたが、その一方で、明るく人々を元気付けるようなマーチも作るようになり、「和製スーザ」※の異名をとる。代表的な作品が上述の「栄冠は君に輝く」(1948)だ。
(※ジョン・フィリップ・スーザ(1854~1932)はアメリカ合衆国の海兵隊バンドの隊長であり、「星条旗よ永遠なれ」などの行進曲を作曲し、「マーチ王」として親しまれた作曲家です)
1964年東京オリンピック開会式のために「オリンピック・マーチ」を作曲!
明るく気品あるマーチを手がける古関のもとに、世界中から注目を浴びる仕事が舞い込んだ。10月10日に国立競技場で開かれた東京オリンピック開会式にて、選手団の入場行進時の音楽「オリンピック・マーチ」の作曲である。
ちなみに同開会式では、古関の音楽のほかにも團伊玖磨作曲の「オリンピック序曲」、黛敏郎作曲の電子音楽「オリンピック・カンパノロジー」といった音楽も鳴り響いた。
©福島市古関裕而記念館
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