牧阿佐美の追悼公演にあたり草刈民代ら関係者が会見
東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...
2021年10月に世を去った牧阿佐美。日本を代表するバレエ舞踊家・振付師・指導者であり、1971年に母・橘秋子が設立した「牧阿佐美バレヱ団」の総監督に就任すると、数々の振り付けや、巨匠ローラン・プティとのコラボレートなどで日本バレエ界を牽引した。
牧阿佐美バレヱ団は追悼公演として、牧が生前最後に振り付けに関わった『飛鳥 ASUKA』を、2022年9月3日(土)と4日(日)、東京文化会館で上演。その公演を前に、牧に縁の深い人物が集まり、記者会見を行なった。
バレエファンの妻に連れられて観劇した公演の幕間に牧に出会ったという盛田正明(牧阿佐美バレヱ団会長、ソニー名誉フェロー、盛田テニスファンド会長)は、牧に出会ってすっかり魅了されたと語る。「バレエ団の長としてはもちろん、経営者としても素晴らしいセンスがあった。経営者に必要な、物事を包括的に捉え、状況も含めて判断する能力をお持ちだった」
女優で、元牧阿佐美バレヱ団プリンシパルの草刈民代は、14才で初めて牧の個人レッスンを受けて以来、2009年のバレヱ団退団まで、牧に指導を受けていた。「私にバレエの資質を見出し、高校を1ヶ月で辞め、バレエ一筋にと後押しをしてくれたのが阿佐美先生。先生のバレエ史を塗り替えるような活動があり、私たちはその土台の上でさまざまな経験ができた。中学生の頃から目にしてきた牧先生の意欲的な姿が、いまの私の表現活動の根っこになっている」。記者から牧の心に残っている言葉を訊かれると、「両親と同じくらいのところにいる方なので、阿佐美先生がどのような存在だったのかは、自分が死ぬときにならないとわからないのでは。ものすごく大きな存在で、断片的な言葉で説明できない」と涙ぐんだ。
牧阿佐美バレヱ団からは芸術監督の三谷恭三、公演の主要キャストである青山季可、中川郁、菊地研(竜神役)、水井駿介(岩足役)が登壇。「先生は感情よりも、ひとつひとつの細かな仕草を大切にされた」(青山)、「2度目の今回の方が役の難しさを感じている。新しく作るつもりで挑みたい」など、牧から受けた教えや、公演への意気込みを口にした。
水井は今回の主要キャストの中で唯一、この作品の指導を牧から直接受けられなかったが、初演時から出演する菊池は「今回は水井君のように阿佐美先生の指導を受けていないダンサーが岩足役を踊る。彼の感性が作品に新しい進化を与えてくれることも楽しみだ」と語る。
今回の追悼公演について草刈はこう語る。「先生は、『飛鳥』初演時には実現できなかったことを、80代になってから現代ダンサーの身体技術を生かしてリメイクした。稽古を見て、先生が幼い頃からバレエ一筋に生きてこられたエネルギーが『飛鳥』の振り付けに表れていると感じた。先生の思いが詰まった作品であり、バレエ団全員で素晴らしい公演にしてほしい」。
日時: 2022年9月3日(土)、4日(日)15:00開演
会場: 東京文化会館大ホール
指揮:デヴィッド・ガルフォース
演奏:東京オーケストラMIRAI
改訂演出・振付:牧阿佐美(「飛鳥物語」 1957年初演 台本・原振付:橘秋子)
作曲:片岡良和
美術監督:絹谷幸二
映像演出:Zero-Ten
照明プラン:沢田祐二
衣装デザイン:石井みつる(オリジナルデザイン)、牧阿佐美
芸術監督:三谷恭三
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