
藤原功次郎×ティアック~いい音は、いい演奏家を育てる!

演奏家は自身の音楽を「いい音」で聴いたとき、一体何を感じるのだろう。
トロンボーン奏者の藤原功次郎さんが、東京・多摩市のティアック㈱のオーディオルームを訪問。自身のCDから聴こえてきた音に、「自分のやってきた音楽は間違っていなかった」と語る試聴の様子をお届けする。
※この記事は『バンドジャーナル』9月号に掲載されたものです。

1959年創刊の吹奏楽専門誌。毎月10日発売。吹奏楽の今を追い続けて60年超、学校の吹奏楽部の現場への取材やプロ奏者へのインタビューをはじめ、指導のノウハウ、楽器上達...
藤原さんの 耳と音楽を育てた“巨大スピーカー”
——まず藤原さんが思う「いい音に触れる」とはどういうことでしょうか?
藤原 今回の取材に当たって、実家のオーディオのことを思い出しました。タンスくらいの大きなスピーカー(これがティアック扱いのイギリスの老舗オーディオブランド「タンノイ」Autographだと判明!) と、他にもスピーカーが3〜4つありました。
父がオーディオ好きなのかな、くらいの認識で、私自身は特に意識せずその環境で育ちました。中高生でトロンボーンに夢中になると、CDのハーモニーや中低音が「どんな音色で聴こえるんだろう?」と耳を傾けていた記憶があります。

兵庫県川西市出身。幼少より作曲とピアノを始め、中学3年生よりトロンボーンを始める。東京藝術大学を首席卒業。日本フィルハーモニー交響楽団首席奏者を経て、タクティカートオーケストラ首席奏者、洗足学園音楽大学、大阪音楽大学、神戸女学院大学の各講師などを務める。ニューヨーク・イブラ音楽財団国際審査員担当。映画、ドラマ、アニメなど劇伴レコーディング活動も多数、ソロCDを9枚リリース。
藤原 いま振り返れば、幼い頃から聴音やソルフェージュがすごく得意だったのは、父親がそろえたオーディオのおかげもあったのかもしれません。すべての音や楽器の音色がきちんと聴こえるオーディオによって耳を育てられ、それが今の音楽活動にもつながっていると感じます。
そうした原体験もあって、音楽ホールで実際の音を聴くこと、本番のステージやリハーサルで共演する人たちの音を聴くことと並んで、よいオーディオで聴くことも重要だと思います。
——現在は、ご自身の音楽をどのように聴いていますか?
藤原 最近はソロアルバムの音源をマスタリングする作業やドラマやアニメの劇伴音楽の仕事で収録するスタジオで、そこにあるオーディオでチェックのために聴くことが多いです。なので、このようなオーディオルームの本格的なシステムで自分の参加作品を聴くのは初めてです。とてもワクワクしています!
さっそく試聴タイム! 藤原さん厳選の CD3枚+1
今回はティアックのフラッグシップ「Reference 700」シリーズ、アメリカの名門オーディオブランド「Klipsch(クリプシュ)」のスピーカーを組み合わせたシステムを用意。藤原さんにはオーディオ試聴に最適な、正三角形のリスニングポイントで聴いていただいた。

試聴CDは藤原さんが選んだ3枚と、編集部イチオシの1曲。
最初は、「格好よくて何度も聴いた」という『スター・ウォーズ』から「メイン・タイトル」をほぼ最大音量(!)で試聴。

[Sony Classical SICP-30860]
「中低音が身体にズン!と響くのを体感しながら聴くのが大好きなんです。音が大きくてもうるさくないし、バランスが取れた音響空間にいる感じ。室内で聴く愉しみって、この特等席感ですよね!」
続く2枚目は藤原さんが全編参加した、名探偵コナンの映画最新作『隻眼の残像』から「メインテーマ」。「劇伴音楽をこういう環境で聴くこと自体が新鮮です。自分の音もですが、サウンドをミキシングするエンジニアさんの仕事までも細やかに聴こえるので、劇場などで聴くのともまた違った感じです!」

[ B-Gram RECORDS JBCJ-9089]
3枚目は、藤原さんの最新ソロアルバム『A LIFE TIME OF TROMBONE』から「ムーン・リバー」を。
「あ、『私の音だな』とわかりますね(笑)。この音を出す際のアンブシュアはこうで、唇はこうだ』というような、演奏時のリアルな感触までもが伝わってきます」

藤原功次郎(Tb)、河内仁志(P)※限定販売
最後は、高音質音楽ストリーミング「Qobuz(コバズ)」を使ってハイレゾ再生に対応した音源を聴く。曲はムーティ指揮フィルハーモニック・ブラス(ウィーンやベルリンのトップ金管奏者集団)の『イタリアーナ!』から「ヴェルディ:歌劇《ナブッコ》序曲」。

[Supreme Classics Supreme Classics]
「各楽器の音の方向までわかります。テューバは上のほうから、トロンボーンやトランペットは直管だからまっすぐに音が響いてくる。サウンドが立体的に聴こえて、アンサンブルとしての音の混ざり方も素晴らしい。いい音を聴くと、演奏したくなってきますね!」
今回のセッティング
「普段、楽器を演奏して、生の音に親しんでいらっしゃる方にも、満足していただける音質を備えたシステムとしてReference 700シリーズを、スピーカーは比較的コンパクトなサイズながらもパワーのある低音サウンドを創出するHeresyIVを組み合わせました。昨今のライフスタイルに合うサイズ感も好評な製品です」とティアック㈱プレミアオーディオ事業部の吉田穣さん

ラック上段:ティアックのプレミアムオーディオのフラッグシップモデル「Reference700シリーズ」から「VRDS-701」(CD再生/ 382,800円)
中段:「UD-701N」(DAC/プリアンプ・Qobuz再生/418,000円)
下段:「AP-701」(パワーアンプ/ 352,000円)
オーディオを通して 自分の音を もっと大切に感じる
——今回のスピーカー(Klipsch:Heresy IV)は、ホーン型の吹奏楽や金管楽器のブラスサウンドにもおすすめというものでしたが、いかがでしたか?
藤原 サウンドの立体感、演奏している空間を感じる豊かな響きがいいですね! 自分のCDで言うなら、全曲を流したら目の前で私がリサイタルしている感覚です。
かなり大きな音で再生しましたけど、金管楽器の音もまったくうるさくなく、自然な音で、細かなニュアンスまでクリアに聴こえてくる。個人的な好みとすれば、低音がもっと響いてもいいくらいです。
——試聴を終えての感想を教えてください。
藤原 音楽を純粋に聴く時間をすごすだけで、元気が出てきますね! 同じ「聴く」でも、仕事ではテストやチェックの意味合いが強いので、生活のなかで音楽を聴く時間と環境を作る大切さを再認識しました。
また、しっかりと自分の音に向き合うことで、自分のやってきた音楽が間違っていなかったなって改めて感じることができました。教えている生徒たちにも普段から「自分の音を大切に」と伝えているのですが、いい音で聴くことで、音に対しての愛着・愛情もさらに深くなっていくのだと思います。
日時: 2025年11月9日(日)19:00開演
会場: サントリーホール 大ホール
曲目: 菅野祐悟:トロンボーン協奏曲《flower》、藤原功次郎:風/約束(吹奏楽版)、菅野祐悟:軍師官兵衛メインテーマ(協奏曲版)
出演: 藤原功次郎(トロンボーン)、原田恭子(ピアノ)、東海大学付属高輪台高等学校吹奏楽部
問い合わせ: 藤原功次郎 デビュー20周年記念トロンボーンコンサート実行委員会
Mail: sulekmogeta@yahoo.co.jp
TEL: 080-5224-0801
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