レポート
2021.04.12
「イタリア・オペラ・アカデミー」を無料配信中

ムーティが来日! 記者会見とオペラ指導のオンライン配信で語ったヴェルディ《マクベス》

取材・文
加藤浩子
取材・文
加藤浩子 音楽物書き

東京生まれ。慶應義塾大学文学部卒業、同大学院博士課程満期退学(音楽史専攻)。音楽物書き。主にバッハを中心とする古楽およびオペラについて執筆、講演活動を行う。オンライン...

©東京・春・音楽祭実行委員会/青柳 聡

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「東京・春・音楽祭」が今年はオンライン配信にも注力

リッカルド・ムーティは、今年80歳になるイタリアの名指揮者。1975年以来、30回以上の来日を重ねて日本のファンも多く、ウィーン・フィルのニューイヤー・コンサートでもお馴染みだ。そのムーティが「東京・春・音楽祭」のために来日し、4月8日に行なわれた記者会見に参加した。

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「東京・春・音楽祭」は、「日本の文化の発祥の地」(委員長の鈴木幸一氏)である上野で開催される、クラシック音楽界の一大イベント。

リサイタルからオペラまで演目は幅広く、内外の一流アーティストが参加する。今年は予定された70公演のうち外国人アーティストが出演する18公演がコロナ禍の影響で中止になったが、「海外からのアクセスの可能性」(鈴木氏)を広げる意味もあり、ネット配信も本格的に始動。50公演がライブ配信されている。

名指揮者ムーティが60年のヴェルディ研究を若者に伝える

ムーティは今回、2019年に始まった「イタリア・オペラ・アカデミー」の指導と、その集大成であるヴェルディのオペラ《マクベス》、そして「東京春祭オーケストラ」を指揮するために来日。会見時はまだ隔離期間中で、都内のホテルからリモートでの参加となった。

「イタリア・オペラ・アカデミー」は、イタリア・オペラの巨匠ヴェルディのオペラを1作取り上げ、若手の指揮者、歌手に作品の解釈を指導する、ムーティ肝煎りの企画。ムーティの本拠地であるイタリアのラヴェンナで行なわれている催しを、日本に持ち込んだ。

今年は、権力に取り憑かれて自滅する武将マクベスを描いたシェイクスピアの名作をオペラ化した《マクベス》が取り上げられる。

「60年間ヴェルディに取り組んでいる」(ムーティ、以下同)というマエストロが後進の指導に情熱を注ぐ理由は、「受けを狙う歌手が、ヴェルディの音楽を書かれた通りに演奏せず、自分のショーのように演奏してきた」ことをただし、若い世代に正しい演奏法を理解してもらうため。「ヴェルディは劇場人。単に『効果』を求めるためにオペラを書くのではなく、劇場的な『間』を語る音楽を書いている」「ワーグナーやモーツアルトは『音楽』だと思われているが、ヴェルディやロッシーニは(ショー的な演奏のせいもあって)『娯楽』だと思われがち。そうではないことを示したい」という言葉には、イタリア人としてイタリア・オペラを守る気概がにじんだ。

最高峰の熱血指導を無料配信で!

翌日、ムーティによる《マクベス》の解説会を聴講した。「アカデミー」でムーティの指導を受ける日本人の歌手たちも参加し、実際の指導も行なわれる。

2時間以上休憩なし、水の一口も口にせず、ほぼ立ちっぱなしで、ピアノを弾き、歌い(美声!)、時にユーモアを交えながら解説し、指導するマエストロの情熱と博識と「伝える」能力に圧倒された。

©東京・春・音楽祭実行委員会/青柳 聡

ちょっとした、しかし的確な指導で、歌手の歌が瞬時に変わるのは圧巻。例えば、狂気に取り憑かれて、さまようマクベス夫人が、夫のマクベスに「寝なさい」と狂気の中で呟くセリフを、「自分の子どもに言うと思って言え」とムーティに言われた直後、夫人役のソプラノの表現ががらっと変わったのは印象的だった。楽譜に書かれた通りに歌えば効果が得られる、ということもよくわかった。「才能は情熱の量である」と思うことが時々あるのだが、それを改めて実感した一夜だった。

ムーティの指導が体験できる「イタリア・オペラ・アカデミー」、今年は無観客だが、なんと無料で配信される。時間の許す限り、ぜひご覧いただきたい。オペラを解釈するとはどういうことか、オペラにおける指揮者の役割とは何か、そして、なぜムーティが世界最高峰のイタリア・オペラの指揮者なのかを知ることができる、絶好の機会になるはずだから。

©東京・春・音楽祭実行委員会/青柳 聡

ムーティの熱き思いが綴られた著書

リッカルド・ムーティ イタリア・オペラ・アカデミー in 東京 vol.2

【リハーサル】2021年4月10日(土)〜17日(土) 東京文化会館 大ホール/東京音楽大学100周年記念ホール(池袋キャンパス)
※4月10日(土)〜16日(金)のアカデミー講義はインターネットでライブで無料公開(日本国内のみ視聴可)。

スケジュール:
4月10日(土)12:00-18:30
4月11日(日)11:00-20:00
4月12日(月)11:00-19:00
4月13日(火)<休み>
4月14日(水)10:30-17:00
4月15日(木)10:30-17:00
4月16日(金)10:30-17:00

指導:リッカルド・ムーティ

 

リッカルド・ムーティ introduces 若い音楽家による《マクベス》(抜粋/演奏会形式/字幕付)
4月20日(火)19:00 ミューザ川崎シンフォニーホール

出演/指揮受講生:チヤ・アモス、ヨハネス・ルーナー 他
   マクベス(バリトン):青山 貴
   バンコ(バス・バリトン):加藤宏隆
   マクベス夫人(ソプラノ):谷原めぐみ
   マクダフ(テノール):芹澤佳通
   マルコム(テノール):城 宏憲
   侍女(ソプラノ):北原瑠美
   管弦楽:東京春祭オーケストラ
   合唱:イタリア・オペラ・アカデミー合唱団
   合唱指揮:キハラ良尚
来場チケット料金(税込):S席6,500円 A席4,500円 B席3,500円 U-25席1,500円
ライブ・ストリーミング配信チケット 1,500円
※本公演のライブ・ストリーミング配信視聴は日本国内に限り可能

 

リッカルド・ムーティ指揮《マクベス》(演奏会形式/字幕付)
2021年4月19日(月)18:30 東京文化会館 大ホール
2021年4月21日(水)18:30 東京文化会館 大ホール

出演/指揮:リッカルド・ムーティ
   マクベス(バリトン):ルカ・ミケレッティ
   バンコ(バス):リッカルド・ザネッラート
   マクベス夫人(ソプラノ):アナスタシア・バルトリ
   マクダフ(テノール):芹澤佳通
   マルコム(テノール):城 宏憲 
   侍女(ソプラノ):北原瑠美
   管弦楽:東京春祭オーケストラ
   合唱:イタリア・オペラ・アカデミー合唱団
   合唱指揮:キハラ良尚

来場チケット料金(税込):S席26,000円 A席21,500円 B席17,500円 C席13,500円 D席9,500円 E席5,500円 U-25席2,500円
ライブ・ストリーミング配信チケット 2,500円

※本公演のライブ・ストリーミング配信視聴は日本国内に限り可能

 

【関連公演】

リッカルド・ムーティ指揮 東京春祭オーケストラ

2021年4月22日(木)19:00 ミューザ川崎シンフォニーホール

2021年4月23日(金)19:00 紀尾井ホール

曲目/モーツァルト:交響曲第35番 ニ長調 K.385 《ハフナー》
          交響曲第41番 ハ長調 K.551 《ジュピター》

【4月22日(木)公演】S席16,000円 A席13,000円 B席10,000円 C席8,000円 D席6,000円 E席5,000円 U-25席2,500円
【4月23日(金)公演】S席16,000円 A席13,000円 B席10,000円 U-25席2,500円

※本公演のライブ・ストリーミング配信視聴は日本国内に限り可能

 


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東京生まれ。慶應義塾大学文学部卒業、同大学院博士課程満期退学(音楽史専攻)。音楽物書き。主にバッハを中心とする古楽およびオペラについて執筆、講演活動を行う。オンライン...

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