レポート
2026.01.21
創立70周年に向けたさらなる取り組み

日本フィルハーモニー交響楽団「東北の夢プロジェクト」初の東京公演を開催!

日本フィルハーモニー交響楽団が、東日本大震災で被災した東北地方の子どもたちと音楽を通して交流の場を作り、復興の後押しすることを目的に2019年にスタートした「東北の夢プロジェクト」。1月7日に岩手県と福島県の団体を迎えた、初の東京公演が東京芸術劇場で行なわれた。また、同日には今年で創立70周年を迎えた日本フィルの今後の社会への取り組みについての記者会見や、岩手や福島からの登壇者とともに被災地の「いま」や復興の可能性を議論するパネルトークも開催された。

音楽の友 編集部
音楽の友 編集部 月刊誌

1941年12月創刊。音楽之友社の看板雑誌「音楽の友」を毎月刊行しています。“音楽の深層を知り、音楽家の本音を聞く”がモットー。今月号のコンテンツはこちらバックナンバ...

岩手県の赤澤芸能保存会「赤澤鎧剣舞」の一幕から
©山口敦

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東京での「東北の夢プロジェクト」がついに実現!

日本フィルハーモニー交響楽団は、社会への取り組みとして長年被災地の支援活動に力を入れている。2011年の東日本大震災による被害を受けた地域へ音楽を届ける「被災地に音楽を」の活動は、15年間で370回を超え、現在も継続している。2019年からは県単位での広域な活動を目指す「東北の夢プロジェクト」を開始し、これまでに東北3県(岩手県・宮城県・福島県)で郷土芸能や学校の文化活動に励む子どもたちと日本フィルが共演し、コンサートを行なってきた。

多くの人々に東北地方での文化活動を発信すべく、1月7日に「東北の夢プロジェクト」初となる東京公演が東京芸術劇場で開催された。同プロジェクトでこれまでに出合った団体のなかから、岩手県大船渡市の「赤澤鎧剣舞」と福島県合唱連盟県南支部「合唱塾」を迎え、東北地方の子どもたちの活動が発信された。

第1部「ピアノ&オーケストラ」の華やかな幕開けを飾ったのは、日本フィルによるJ.シュトラウス2世「喜歌劇《こうもり》」序曲。続いて上原彩子(p)をソリストに迎えたラヴェル「ピアノ協奏曲」が披露された。「パン!」と鞭の音で始まり、ピアノが軽快なパッセージを紡ぐ第1楽章、打って変わってしっとりとした味わいを引きだす第2楽章、変幻自在のリズムが特徴の第3楽章を展開し、色彩豊かなラヴェルの世界が広がった。

ラヴェル「ピアノ協奏曲」でソリストを務めた上原彩子(p)©山口敦

第2部は、「子どもたちのステージ」と題し、福島県合唱連盟県南支部「合唱塾」と、岩手県の赤澤芸能保存会「赤澤鎧剣舞」が登場した。福島県の「合唱塾」は、学校の枠を超えて「もっと歌いたい」という想いをもったメンバーによって2019年に結成された合唱団。小学校4年生から一般の大人までが集い、活動を行なっている。今回の公演では、中学生以上の100人を超える団員が、冬の童謡唱歌メドレー(冬の星座、雪、冬の夜、たき火、冬景色)を披露し、熱い想いを込めた歌声が会場全体に響きわたった。

福島県内外の幅広い世代が集い、活動している福島県合唱連盟県南支部「合唱塾」©山口敦

次に登場した赤澤芸能保存会による「赤澤鎧剣舞」(あかさわよろいけんばい)は、江戸時代から岩手県・大船渡の旧赤澤地域に伝わる民俗芸能。1185年の源平合戦による平家の亡霊を高僧が、念仏を唱えて鎮めたと伝えられる故事を舞踊化したことに由来し、大船渡市無形民俗文化財第一号に指定されている。鎧を装着した子どもたちが太鼓や笛に合わせて舞い、《扇子の踊り》、《十三番庭》、《称名七つ子》の3演目を披露。会場の人々の心をつかむ全身を使った力強い踊りをみせた。

150年ほど前から鎧を装着し、数々の鎧剣舞の元祖として誕生した、赤澤芸能保存会による「赤澤鎧剣舞」©山口敦

第3部「合唱&オーケストラ」では、ふたたび「合唱塾」のメンバーたちが登場。宮沢賢治《星めぐりの歌》と小田美樹《群青》を日本フィルの演奏に合わせて、壮大なハーモニーが生みだされた。締めを飾ったのは、日本フィルによるラヴェル《ボレロ》。一定のリズムを刻むスネアドラムを基に徐々に高揚感を高めていき、盛大なクライマックスを迎えて拍手喝采が沸き起こった。直後のアンコールは年始おなじみのJ.シュトラウス1世《ラデツキー行進曲》。指揮の永峰大輔のタクトに合わせて観客が手拍子し、会場は一体感に包まれた。

「合唱塾」と日本フィルが共演し、音楽の力を実感させるひとときを創出©山口敦

創立70周年を迎えた日本フィルの今後

コンサート前には、今年で創立70周年を迎えた日本フィルの今後の社会への取り組みに関する記者会見や、「東北の夢プロジェクトと文化による復興」と題したパネルトークも開催された。

70周年を機にロゴマークを一新し、「共鳴を、熱いウェーブに」を新たな合言葉に始動する同団は、これまでにも力を注いできた社会への取り組みをさらに強化していく。オーケストラの演奏活動に加えて、これまでに3つの社会活動(教育活動・地域活動・被災地支援活動)を「音楽の森」チームが中心的に推進し、先進的な活動を行なってきた。今後は、学校の枠を超えた子どもたちへの指導活動、多様性を意識したワークショップの開催などを通して活動領域を進化・拡大させ、社会との共鳴を目指す。

パネルトークでは、岩手県日報社 代表取締役社長・河村公司氏や福島県民報社 代表取締役社長・芳見弘一氏らを迎え、東日本大震災の復興の過程や今後の展望について議論を深めた。 被災地の多くで道路や防波堤などの公共インフラの整備が整ってきているいっぽう、年々被災者の心のケアの必要性を感じているという。また、15年の年月が経ち、震災の歴史が風化されつつある現状も感じられ、震災の記憶を語り継いでいく重要性を登壇者らは強く訴えた。

音楽を通してさまざまな社会活動に取り組んでいる日本フィルは、多くの人々に希望を与えている。創立70周年を迎え、さらに進化していく同団の取り組みに注目だ。

パネルトークでは、長年復興の現場で活動を行なってきた岩手県や福島県の代表者らが集結した
日本フィルハーモニー交響楽団
東北の夢プロジェクトin東京2026 復興、その先

■公演データ

日程・会場:1月7日・東京芸術劇場 コンサートホール

出演:永峰大輔(指揮)、上原彩子(p)、赤澤芸能保存会「赤澤鎧剣舞」、福島県合唱連盟県南支部「合唱塾」、日本フィルハーモニー交響楽団、江原陽子(ナビゲーター)

曲目:J.シュトラウス2世「喜歌劇《こうもり》序曲」、ラヴェル「ピアノ協奏曲」《ボレロ》、冬の童謡唱歌メドレー(冬の星座、雪、たき火、冬景色)、なかにしあかね《朝焼けの空に》、宮沢賢治《星めぐりの歌》、小田美樹《群青》

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