7月特集「自由研究」効果音を作ってみた編

不思議な専門道具や身近なものを種あかし! トーンマイスターに教わって、効果音を作ってみた

レポート
2019.07.29

風の音、セミの鳴き声、チャンバラの音、巨大怪獣の鳴き声、不気味な「何か」が現れる音......。

舞台や、映画、テレビから出てくる効果音は、エンターテイメントを盛り上げるのに欠かせないツール。そんな音はどうやって作られるんだろう? 好奇心いっぱいの音楽ファシリテーターの飯田有抄さんとONTOMO編集部が、東京芸術劇場の舞台管理担当であり、トーンマイスターの石丸耕一さんを訪ねて、いろいろな効果音の作り方を教えてもらってみた!

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photo: 各務あゆみ

取材協力: 東京芸術劇場
エイリアンと戦うはめになった人
飯田有抄 クラシック音楽ファシリテーター
飯田有抄
エイリアンと戦うはめになった人
飯田有抄 クラシック音楽ファシリテーター
1974年生まれ。東京藝術大学音楽学部楽理科卒業、同大学院修士課程修了。Maqcuqrie University(シドニー)通訳翻訳修士課程修了。2008年よりクラシ...
効果音作りを教わった編集部
ONTOMO編集部
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効果音作りを教わった編集部
ONTOMO編集部
神楽坂を拠点に、取材・編集作業をしています。

石丸耕一さんは東京芸術劇場の音響に関する、すべてのことの責任者。石丸さんの素晴らしい仕事内容については、近日公開の「飯田有抄と、音楽でつながる仕事人たち。第14回 トーンマイスター編」でお届けするとして……。

7月特集「自由研究」のテーマが頭にあった編集部。石丸さんの仕事のひとつに「劇場で使われる効果音を作る」ことが含まれていると知り、インタビュアーをお願いしていた飯田さんも巻き込んで、石丸さんにお願いしてみた。

「効果音の作りかたを教えていただけませんか?」

そんなザックリとしたお願いに、石丸さんは優しい笑顔で快諾してくれて、仕事場に案内してくれた。

突然のお願いにも関わらず、快く仕事場である音響工房に案内してくれた石丸耕一さん。

東京芸術劇場「音」の心臓部に潜入!

石丸: 東京芸術劇場にはホールが4つあって、そこで上演される作品のコンテンツは自分たちで作らなくてはなりません。このコンピュータのサーバーはすべて、4つのホールに繋がっています。開演を知らせるベルや、落語の出囃子など、ホールで使うすべての効果音が入っているんですよ。これが劇場の音の心臓部です。

東京芸術劇場の「音」の心臓部である、音響工房のサーバー。

このマイクでアナウンスを録音したり、効果音を録音したりします。

吸音処理がなされたこの部屋の、このマイクで石丸さんは日々、劇場の音を作り出す。

効果音を作るのは、専用の道具を使うパターンと身の回りの物を使って作る2パターンがあります。

専門の道具でつくる効果音

石丸: 専用の道具だと、こんなものがあります。フランスで使われている小鳥の声をつくる道具です。

飯田: かわいらしいですね! 

石丸: フランスの映画、ドラマやアニメーションで小鳥の声が聴こえてきたら、音の元はこれだと思っていただいて。

こちらは、私が歌舞伎座で働いているときから使っている「ヒグラシ笛」と言われるもので、3本ともくわえて吹きます。

石丸: これはヒグラシの鳴く声を作ります。

飯田: 3本くわえるってところがミソですね!

石丸: こちらはウォーターハープというもので、サスペンス映画やSF映画では不可欠なものです。

ハリウッドに行くと、どこの映画スタジオにもひとつはあって、不気味な雰囲気なシーンなどで使用されていることが多いです。映画の『エイリアン』や『ターミネーター』、『スタートレック』。最近だと『アヴェンジャーズ』でも使われています。音を出してみますね。

飯田: 絶対に一度は聴いたことがありますね!

石丸: 代表的なところだと、『エイリアン』でシガニ―・ウィーバーのうしろに……エイリアンがきてる!! ってところで流れていますね(笑)。

身近なものでつくる効果音

石丸: ここまでは、専門の道具を使って効果音を作るパターン。一方、私たちは身の回りの物を使って効果音を作ることもたくさんします。

必殺仕事人の中村主水が刀を突きさす、ブシュっという音。あれはキャベツをノコギリで切って、それをスクラッチさせて作ります。

西洋の剣劇、チャンバラ。今ネットフリックスで『三銃士』をやっていますが、あれはまさにこれで……

聴けば、わかりますよね? 西洋の剣の戦いは「フライ返し」でつくっています。アラミスやダルタニアンが、腰にフライ返しさして歩いてるんですね(笑)。

効果音の道具は本当に身の回りの物ばかり。トイレのフラッシュの中にマイクを突っ込んで、スピードを遅くすると濁流の洪水になるんですよ。

伊福部昭さんが音楽を手掛けた映画『ゴジラ』第一作目の鳴き声は、コントバラスの弦を松脂を付けた手袋でしごいた音を、テープスクラッチして作っています。音のスピードを遅くしたりする方法は昔から使われています。

この2つの袋、ひとつは中に岩塩が、もうひとつは片栗粉が入っています。

石丸: 都会のみぞれの雪が積もった時の音は岩塩。雪深い東北の、密度の濃い新雪を歩くときは片栗粉。場面がどっちなのかによって使い分けます。

飯田: 私は北海道の育ちなので、なんだか懐かしい!

石丸: 飯田さんの思い出は、片栗粉なんですね!

飯田: 袋は何か特別な?

石丸: スーパーでたたき売りしていた袋を買いました。

秘儀! 傘は翼!

石丸: 鳥がはばたく音は傘でつくります。ちょっと借りてもいいですか?(と、飯田さんの傘を手に取る石丸さん)

飯田: それ、さっき突然雨が降ってきたので買った、普通の傘ですよ?

石丸: 鳥の大小によって、振ったり、バサバサしたり。ドラキュラの翼も、クリストファー・ノーラン監督の「ダークナイト3部作」のバットマンも、全部傘です!

(編集注: 最後のバットマンの羽音、カメラの貧弱なマイクでは伝わりきらないかもしれませんが、目の前にバットマンが現れたようで、鳥肌ものでした)

効果音に使われるものは、本当に身の回りのものが多いです。タネを明かすと、なーんだ! なんですよね(笑)。でも、私たちはいつも身の回りの「音」が、あれに似ているなとか、これに使えそうだ、と考えているんです。

編集部: 最後に飯田さんと石丸さんで効果音コラボできませんか? 石丸さんのウォーターハープで出現したエイリアンと、飯田さんがフライ返しで戦ったりして……(笑)

石丸: やってみましょうか!

飯田さんの体験談

忍び寄るエイリアン! 三銃士は勇ましく戦ってみましたが、エイリアンに、刀で立ち向かおうとするのはやや無謀だったかもしれません(笑)。

それにしても、フライ返しや、片栗粉や、ビニール傘など、私たちの生活のどこにでもある、ありきたりなモノたちから、ドラマチックだったり、ファンタジックだったり、さまざまな音が作られていたなんて! 生活グッズ、あなどれません。片栗粉からの雪、傘からのバットマンなど、音の出所と表現されるものとを「結びつける」力、その閃きやアイディアこそが、石丸さんたちプロの技ですね。

飯田有抄

編集部も効果音を作ってみた!

さまざまな音を目の前で。魔法のごとく生みだす石丸さんを見て、会社に戻った編集部員もやってみたい! の気持ちが高まった。

ここは石丸さんに教わった、あの効果音を作ってみよう。

何でつくった何の音だか、お判りいただけただろうか?

 

答えは、ウルトラマンやゴジラなどの特撮映画でビルが壊れる音! インスタント麺のカップで再現してみたのだ!

「ビルが壊れる音や、ダムが決壊する音は、カップ麺。しかも、カップヌードルではなくて、緑のたぬきのような底がラウンドしているカップ麺をマイクの前で、ぐぅううっと握りつぶしたり、ビリビリっと破いて、再生スピードをゆっくりにすると作れます」(石丸さん)

実験に協力してくれた編集部員Mの体験談

ストレス解消になりそう! と嬉々として挑戦しましたが、思ったより硬くて、なかなか破けなくて焦りました。

ビルの崩壊音ほどの迫力が出せなかったので、握り潰しかたも、破りかたも、さらなる研究が必要だと感じました。

編集部員M

結果は、なんだか雷や土砂崩れ、打ち上げ花火のようにも聴こえて、ヒグラシ笛との相性がよさそうな気も。

ちなみに、再生速度は同じ0.1倍にしているのみ。音声だけのものはマイクで、動画はカメラで撮っていて、音の雰囲気が全然違う。

きっとプロの方たちは、再生速度やエフェクターなどを使って完璧に仕上げていくのだろうな……。

ただ、専用の道具がなくても、五感を研ぎ澄して、工夫すれば作れる効果音もたくさんありそうです。皆さんも作ってみてはいかが?

石丸さんと「音作り」が体験できる!
ボンクリ・フェス2019

開催: 2019年9月28日(土)

会場: 東京芸術劇場 コンサートホールほか館内各所

アーティスティック・ディレクター: 藤倉大(作曲家)

この「自由研究」のような内容を体験したい人は、トーンマイスター石丸の部屋」へ!

詳細はこちら

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