パデレフスキ国際ピアノコンクールを制したマテウス・クシジョフスキの来日会見から
東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...
3月20日、ポーランド大使館にて、第12回パデレフスキ国際ピアノコンクール優勝者、マテウシュ・クシジョフスキの来日記者会見が開かれた。
パデレフスキ国際ピアノコンクール(以下、パデレフスキ・コンクール)は、ポーランドのビドゴシチで開催されているピアノ演奏部門に特化した国際コンクール。1994年の第3回から国際コンクールとなり、1998年以降は3年に一度、27歳以下の世界中のピアニストを対象に開催されている。予選から本選までのいずれかの段階で、ポーランドを代表する音楽家・政治家であるパデレフスキの作品が課される。
第12回は28か国から150名の応募があり、13か国39名が本選に進んだ。ピアニストのラファウ・ブレハッチやダン・タイ・ソン、小川典子らも審査員に名をつらね、日本人は奥井紫麻(おくい・しお)が入賞。クシジョフスキは、国際コンクールになってから初のポーランド人優勝者となる。
会見では、審査員を務めた小川典子から音声メッセージが寄せられ、コンクールでのクシジョフスキについて「工夫を凝らしたプログラムで個性を強く打ち出し、堂々たる演奏を聴かせた。特に本選でシマノフスキの珍しい『交響協奏曲第4番Op.60』を弾いたことに、彼の考えやポリシーがよく伺えた」、入賞した奥井については「緻密で繊細、丁寧な演奏を聴かせた」と述べ、「大変なスタミナが必要な」このコンクールでの成果を讃えた。
パデレフスキ・コンクール本選で「シマノフスキ:交響協奏曲第4番Op.60」を演奏するクシジョフスキ(1:27:37から)
その後、クシジョフスキのピアノで、パデレフスキ「作品集(ミセラネア)」より《伝説 第2》イ長調 Op.16-5、《楽興の時》Op.16-6、「6つの演奏会用ユモレスク第2番《サラバンド》」、シマノフスキ「4つのエチュードOp.4より第3番 変ロ短調」、ショパン「ポロネーズ第6番《英雄》」が演奏された。
会見に登壇した日本パデレフスキ協会会長の横山幸雄は、これを受けて「繊細さと色彩感溢れる堂々とした演奏」とコメントし、「パデレフスキ・コンクールは私も前回審査員を務めたが、非常にレベルの高いコンクール。彼のように素晴らしい才能が出てきたことは、コンクールとしても意味のあることだと思う」と述べた。
その後質疑応答の時間が設けられ、クシジョフスキは「3回目の来日になるが、日本は文化の面白い国で飽きることがない。相手に対して敬意を見せる文化も尊敬している。
パデレフスキ・コンクールではショパンを1曲も弾かなかった。これは意図的なもので、ポーランドにはショパンだけでなく、パデレフスキやシマノフスキといったすばらしい作曲家がおり、彼らの音楽を紹介することに使命を感じている。今回の日本ツアーにはモシュコフスキの曲も入れた」と語った。
今回の会見での演奏曲目について、横山幸雄は「ポーランドの情景や人を思い起こさせるパデレフスキの作品、それとはまた違った個性のシマノフスキの若い頃の作品を合わせた個性的なプログラム」と述べていたが、クシジョフスキは「コンサートのプログラミングでは、全体につながりができるようにストーリーを作る。文脈に合わない曲は入れないようにしている」とのこと。
「私は音色にこだわって演奏したい。作曲家の意図や意思、こだわりを音で表現したいと考えています」(クシジョフスキ)。
マテウシュ・クシジョフスキからONTOMOにメッセージをいただきました。
「みなさん、こんにちは。再び日本に来てコンサートを開けることをとても嬉しく思います。パデレフスキ・コンクールで第1位をいただけたことは大きな喜びであり、私にとってとてもチャレンジングなことだったので、開催地ビドゴシチでの気持ちを今でも思い出します。今回、日本の人々とショパンだけでなく、パデレフスキやシマノフスキの音楽をシェアできるのは驚くべきことです。私を日本にお招きいただきありがとうございます。コンサートでまたお会いしましょう」
マテウシュ・クシジョフスキ
1999年ポーランドのティヒ生まれ。第49回全ポーランドショパンコンクール第1位(2018)、第1回カロル・シマノフスキ音楽コンクール第2位、第1回スタニスワフ・モニューシュコ国際ポーランド音楽コンクール第3位など入賞歴を重ねる。第18回ショパン国際ピアノコンクール(2021)でセミファイナリストとなって注目され、2022年6月には日本でもコンサートを行なった。パデレフスキ・コンクールのセミファイナルでは、ブラームス:シューマンの主題による変奏曲、プロコフィエフ:ピアノ・ソナタ第4番、モーツァルト:ピアノ協奏曲第19番などを演奏し、ファイナルでシマノフスキ:協奏交響曲第4番という演奏機会の少ないレパートリーを選んだことでも注目された。
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