レポート
2025.04.18
東京交響楽団と迎える“最後のシーズン”がついにスタート!

指揮者ジョナサン・ノット、東京交響楽団との12年を振り返る

ONTOMO編集部
ONTOMO編集部

東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...

©️平舘平/TSO

会場にズラッと並んだノット×東響、12年分のシーズンポスターとともに

この記事をシェアする
Twiter
Facebook

12年間の長きにわたり東京交響楽団の音楽監督を務めている指揮者ジョナサン・ノット。2026年3月の任期満了をもって同ポストを去ることが発表されており、この4月から音楽監督として最後のシーズンが始まった。

シーズン・オープニングである「ブルックナーの交響曲第8番」と「ラッヘンマンとマーラー」プログラムを終え、「東京・春・音楽祭」での《こうもり》(演奏会形式)を翌日に控えた春の午後、東京交響楽団の本拠地ミューザ川崎にて記者懇談会が開催された。

懇談会は「モーツァルトとリゲティ」、「ブーレーズとベートーヴェン」をごく自然に並べて聴かせてくれるマエストロのプログラミングのように、「喜びとシリアス」が同居した刺激的な時間となった。

ノットと東響の12年

続きを読む

ノットの東響初登場は2011年10月。2013年の再共演を経て、2014年4月から音楽監督を務めている。計12シーズン、コロナ禍を挟んで(マエストロは日本で3回!の隔離期間を過ごしたそう)、その幅広いレパートリーを活かしたチャレンジングなプログラムでオーケストラを成長させてきた。

「他のオーケストラでは、クリアな『一拍目』を求められることがよくありますが、東京交響楽団ではそれが必要ありません。全員が同じ時に、同じことを語ろうとしつつ、個々が自分をも表現できる。常に自分たちの道を探し、そこに到達できてしまうオーケストラなのです。それは、わたしと彼らがお互いの信頼を築き、お互いを大切に思う気持ちを培ってきた結果だと思います。

12年間の中でたくさんのプログラムを、集中力をもって取り上げてきました。東響とは正しい時期に、正しい作品を選びながら歩むことができたと感じています」

©️平舘平/TSO

ワイワイ考えたアイディアを聴衆へ

ノットといえば、そのプログラミンの妙も印象的だ。

「さまざまなプログラムが実現できたのも、素晴らしい組織を持ったこのオーケストラのおかげです。みんなでワイワイおしゃべりをしながらプログラミングをするのが大好きなんです。次々と現れるアイディアの中で、次の日の朝も覚えていたら、それは良いアイディア(笑)。そんなふうに、一緒に何百ページもアイディアをメモしてきました」

「古典と現代音楽を組み合わせるプログラム、たとえばマーラーを目的にチケットを買ってくれた人にもラッヘンマンを聴いてもらえる良い機会になります。東京交響楽団のように素晴らしく演奏すれば、気に入ってくれる人はたくさんいるはずです。そこには現代も古典もない、偉大な音楽は偉大な音楽なのです」

「2011年まで東京交響楽団に素晴らしい合唱団があることを知って」以来、合唱作品にも力を入れてきた。今シーズンにはノット自身初めて取り上げるJ.S.バッハの傑作《マタイ受難曲》、終戦80年にふさわしいブリテン《戦争レクイエム》と記念碑的な大作が控えている。どちらも自身が子どもの頃に少年合唱で参加した作品だそうだ。

そして就任3シーズン目から始まったコンサート・オペラ・シリーズ。

「就任した2014年にはわたしたちがオペラができるとは思っていませんでした!」

モーツァルトのダ・ポンテ三部作から始まり、昨年完結したリヒャルト・シュトラウスのオペラ・シリーズ全3回が大成功を収めたことは記憶に新しい。最後のシーズンにはラヴェルの《子どもと魔法》が予定されている。

ノット×東響の共同作業は、たくさんの録音としても発売されている

写真:編集部

ラストシーズン、そしてその先

ノットと東響の共演は、今年12月まで7プログラム12公演が残っているが、来シーズン以降の共演も気になるところ。

「わたしの子どもにはいつも《予期せぬことが起きる場所に身を置けば、目の前の扉は開かれる。そこを進むかは君次第だ》と伝えています。最後のシーズンですが、悲しむことはしたくありません。すべてが素晴らしかったのだから。東響はわたしとの共演を糧に、次に進んでいくのだと思います。

でも、わたしたちはまだやらなければいけないことがたくさんありますね。《蝶々夫人》も《死の都》も《トリスタン》も《ピーター・グライムス》も演奏していません! しかし、まずは明日の《こうもり》です!」

会場にはノット監督から記者たちに向けてシャンパンのプレゼントが!

写真:編集部
ONTOMO編集部
ONTOMO編集部

東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...

ONTOMOの更新情報を1~2週間に1度まとめてお知らせします!

更新情報をSNSでチェック
ページのトップへ