オープンキャンパスへ行こう! in 沖縄県立芸術大学 2018.8.1
音大生活をイメージするには、オープンキャンパスへの参加がいちばん!「音大ガイド」では、県外からの志望者も数多い、沖縄県立芸術大学のオープンキャンパスの様子をレポートします。沖縄の伝統芸能・音楽とクラシック音楽の両方を学ぶことができる「沖芸」の魅力を、Webで体験してみてください!
*記事は内容の更新を行っている場合もありますが、基本的には上記日付時点での情報となりますのでご注意ください。
執筆:堀内亮(音楽大学講師)、荒木淑子(音楽ライター)、各編集グループスタッフ。音楽之友社および『音楽大学・学校案内』編集グループは、1958年に年度刊行書籍『音楽大...
首里城に見守られた自然豊かなキャンパスで、沖縄の芸術大学ならではの授業体験を見学
高台に佇む世界遺産・首里城に抱かれるように、木々に囲まれた自然豊かな環境のなかにある沖縄県立芸術大学。地元では、“ オキゲイ” と呼ばれ、ウチナーンチュ(沖縄県民)にも親しまれている芸術の学び舎だ。
龍潭池(りゅうたんいけ)に沿った龍潭通りから、ガジュマルの木陰と黄色いイッペーの花が咲く小径を進むと、3か所あるキャンパスの一つ、首里当蔵キャンパスの正面入口に着く。道を隔てて、右手が音楽棟や一般教育棟、左手には美術棟や奏楽堂(ホール)などの建物がある。
奏楽堂でオープンキャンパスの受付を済ませた参加者たちは、「琉芸ウェルカムコンサート」が始まるのを待っていた。
- オープンキャンパスのねらい
この大学で学べることを見て、聴いて、体験する“一日まるごとオキゲイ(沖芸)祭り”です。在学生が作るミニコンサート、オーケストラや琉球舞踊の体験のイベントを通して、大学教育の日常を感じてください。また、ワンポイントレッスンやソルフェージュ講座、受験相談も受け付けています。 - 大学の特長と魅力
小規模校の特色を生かし、一人一人に目の行き届いた個人レッスンを展開しています。アンサンブル教育を重視しており、全員がオペラやオーケストラ、室内楽に参加しています。同時に、音楽を社会に発信するためのマネジメントも学んでいます。また、沖縄独特の芸術である三線音楽、琉球舞踊、組踊を学ぶコースがあるのは、世界中でここだけです。
当日のスケジュール(2018年8月1日)
テーマは、「来て見て知って、『オキゲイの今』」
コンサートでは、琉球芸能専攻の現役学生たちが、祝いの場で踊られる舞踊「かぎやで風(かじゃでぃふう)」や、組踊「久志(くし)の若按司道行口説(わかあじみちゆきくどぅち)」、早弾き三線(さんしん)の演奏で漁村の若い男女の生活を描き出す舞踊「谷茶前(たんちゃめー)」などを披露。沖縄の芸術大学ならではの琉球古典芸能に触れた参加者から大きな拍手が湧いていた。
2018年のオープンキャンパスのテーマは、「来て見て知って、『オキゲイの今』」。
「沖縄県立芸術大学はどういうことをやっている大学なのかを、まずは来て見て知っていただこうという試みとして、最初にこの学校の特色でもある琉球古典芸能の学生たちによる演奏と舞踊を観ていただきました」と、音楽学部学部長の金城厚(かねしろ あつみ)教授から、テーマについて説明があった。ほかにも「国の重要無形文化財に指定されている古典芸能『組踊(くみをぅどい)』の人間国宝5名のうち4名は、沖芸で教鞭をとられていました」「音楽学部の学生数は一学年40名と、小規模な学校の特色を活かして、一人一人の学生を丁寧に指導する体制が本校にはあります」という話もされていた。
「将来音楽の仕事につきたい」と希望する静岡県から参加したヴァイオリン志望の高2女子は、「実際に来てみて伝統のある大学だと思いました。今日ワンポイントレッスンを受けるのを楽しみにしています」と話す。隣で見守る母親は、「環境がとてもよくて、安心しました」と、ほっとした表情を浮かべていた。
「楽典・ソルフェージュ」の公開授業
緑広がる中庭を背に、三線を弾きながら歌う琉球舞踊の地謡を聴きながら、参加者は係の案内に従って各教室へ移動した。
音楽棟・大合奏室で行われた「楽典・ソルフェージュ」では、近藤春恵教授が実際にピアノを弾きながら、主和音、属和音、下属和音といった和音の種類の説明を行った。参考書の買い方など、入試対策も丁寧に指導していた。
また「管弦楽法概論」では、ベートーヴェンの《ピアノ・ソナタ第12番》より第1楽章を、12名の学生がそれぞれ弦楽四重奏に編曲して発表。もとは同じ楽曲が、編曲によってさまざまな表情をみせることに、参加した人たちは興味深く聴き入っていた。
「合同演奏演舞」にはハワイからの参加者も
お昼休みをはさんで、午後からは各コースのガイダンスや演奏体験、各専攻の教員によるワンポイントレッスンなどが並行して開催された。三線と演舞による「合同演奏演舞」では、「授業の雰囲気を味わってほしい」という高嶺久枝教授のお話の後、参加者が一緒に「かぎやで風」を演奏し、踊る体験も。ハワイから参加した高3女子の、緊張のなかにも楽しそうに踊る姿が印象に残った。
ピアノコースのミニコンサートでは、バッハやショパンのピアノ曲が学部生の演奏で披露される。静かに聴いていた那覇市内から来たという父親と、お嬢さん(小4)に参加の理由を尋ねてみた。
「娘がヴァイオリンとピアノを習っている先生から聞いて、ヴァイオリンの岡田光樹(みつき)先生のワンポイントレッスンを受けるために参加しました」とお父さん。隣で緊張気味のお嬢さんを見ながら、「本人はまわりの空気にのまれているみたいですけど」。この父娘さんにはワンポイントレッスン終了後に、偶然再会。「楽しかった!」と笑顔のお嬢さんに、「来年も参加したいようですよ(笑)」とお父さん。お嬢さんにはとてもいい経験になった様子。
阿部雅人教授によるホルンの「ワンポイントレッスン」
音楽表現専攻管打楽コース(ホルン)の阿部雅人教授によるワンポイントレッスンを拝見した。阿部教授は、東京フィルハーモニー交響楽団や新日本フィルハーモニー交響楽団のオーケストラプレーヤーとして長年にわたり活躍した後、2012 年から沖縄県立芸術大学で教鞭をとられている。
レッスンを受ける生徒は、「沖芸に入って、阿部先生のもとで勉強したいというのが一番の希望です。将来は音楽の先生になるのが夢」という那覇市在住の高3女子。
「オープンキャンパスや準備講座も入れて、今回が3回目の参加です。ホルンを始めたのは中学に入ってからなので6年目、阿部先生に指導していただいてから1年ちょっとになります。最初はうまく吹けなかったけれど、習っていて自分の成長が感じられた時に、楽しい! と感じて、ホルンを続けていきたいと思いました。沖芸に入った高校の先輩から、楽しいよという話をよく聞くので、自分も早くそのなかに入りたいと思っています」
レッスン中には、「広い会場では、一番後ろの席まで届くようにイメージして吹くことを心がけて」「大きな音を出そうと思う時は、出だしと最後を丁寧に吹くと伝わり方も違ってきます。音色にも気をつけて」といった細やかなアドバイスの言葉も。その直後の演奏では、力強さの増した広がりのあるホルンの音が響いていた。
阿部教授に沖芸の魅力をお聞きすると、「4年間、この素晴らしい環境のなかで学べるのが魅力だと思います。それに少人数制なので、学生と教員が密に接して、丁寧な指導を受けられるのも特色ですね」と話してくださった。沖芸で教鞭をとられて6年、現在の環境に、ご自身も満足されているようだ。
オーケストラと琉球古典芸能とのコラボレーション
ほかにもオーケストラに参加する実技体験や声楽コースの演奏体験、ガムラン演奏やオペラ体験など、さまざまな体験も行われた。作曲の公開レッスンでは、学生たちが作曲した楽曲の試演や、ピアソラ作曲の《ブエノスアイレスの夏》を、在校生が室内楽のために編曲し発表するなど、貴重な体験に参加者は興味をそそられた様子。
そしてオープンキャンパスの最後は、学生たちの企画によるコンサートが音楽棟大合奏室で開催された。オーケストラに5名の三線奏者を交えた編成でのコンサート。演奏された《Fantasia on Okinawa Songs》の作曲・指揮を手がけたピアノコース3年の学生は、「沖芸には琉球古典音楽のコースもあるので、コラボできる曲を作曲しました」と説明して演奏が始まる。
「かぎやで風」や「唐船(とうしん)ドーイ」「てぃんさぐぬ花」といった琉球古典や沖縄民謡をモチーフにした楽曲に、参加者たちは魅了されていた。
大勢の方が参加した今年のオープンキャンパス。「来て見て知って、『オキゲイの今』」のテーマどおり、直に“ オキゲイ” を体感した参加者は、沖縄の芸術大学ならではの環境や教育方針に心を動かされたのではないだろうか。
コンサートの様子や、阿部雅人教授からのメッセージなど、取材動画を公開中!
動画版 オープンキャンパスレポートはこちら↓
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