【速報】新国立劇場2025/2026シーズン オペララインアップが発表
東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...
2月26日新国立劇場にて、大野和士・オペラ芸術監督が登壇し、当劇場の「2025/2026シーズン オペララインアップ説明会」が開かれた。
新制作は《ヴォツェック》と《エレクトラ》
新制作は2演目で、アルバン・ベルク《ヴォツェック》(2025年11月)とリヒャルト・シュトラウス《エレクトラ》(2026年6月~7月)。
《ヴォツェック》は、1925年にベルリンで初演された、3幕の無調によるオペラ。舞台は1830年代のドイツで、貧しい兵卒のヴォツェックが愛人マリーと鼓手長の不義に苦しみ、ついに彼女を殺して自分も池でおぼれ死ぬという物語。
大野は、全3幕が1時間半足らずで終わること、《ヴォツェック》の初演がR・シュトラウス《サロメ》の初演から15年ほどしか経っていないこと、無調の中にもワルツやゆったりした曲、アリアを歌っている箇所、フーガなどがあり、それが耳への喜びをもたらすこと――こういった側面を知ることで、この作品へのハードルが下がるのではないかと語った。「凄まじい内容をもったオペラだが、そこかしこにベルクの人間の本質に対する愛情が出てくる。これをご一緒に舞台、そして音楽とともに体験できることを願いながら、演奏したい」。
演出は巨匠リチャード・ジョーンズ、ヴォツェック役はトーマス・ヨハネス・マイヤー、鼓手長にジョン・ダザック、大尉にアーノルド・ベズイエンという当代随一の歌手が集まる。
《エレクトラ》は、ギリシア悲劇にもとづく1幕のオペラ。ホフマンスタールの台本により、トロイア戦争から帰還したアガメムノン王を殺した妻(クリテムネストラ)とその情夫(エギスト)に対する、娘エレクトラと弟オレストによる復讐劇。
新国立劇場初登場となる演出のヨハネス・エラートについて大野は、「現代オペラの一筋縄ではいかないような複雑な個所をうまく具体化して、とても雅やかな舞台をつくる」と評する。
「物語的には、《ヴォツェック》が黒だとすると、《エレクトラ》は緋色。激しく燃えたぎるような色で、ひじょうにエネルギッシュ。音楽で復讐を描き、最初から最後まで手に汗を握るオペラ」。エレクトラ役はバイロイト音楽祭にも出演しているアイレ・アッソーニ、クリテムネストラに藤村実穂子、オレストにエギルス・シリンス、エギストに工藤和真。
レパートリー作品は8演目
レパートリー作品は8演目で、プッチーニ《ラ・ボエーム》(2025年10月)、グルック《オルフェオとエウリディーチェ》(2025年12月)、J.シュトラウス2世《こうもり》(2026年1月)、ヴェルディ《リゴレット》(2026年2月~3月)、モーツァルト《ドン・ジョヴァンニ》(2026年3月)、ヴェルディ《椿姫》(2026年4月)、ドニゼッティ《愛の妙薬》(2026年5月)、マスネ《ウェルテル》(2026年5月)。
《ラ・ボエーム》の指揮はパオロ・オルミ。ミミ役は新国立劇場初登場のマリーナ・コスタ=ジャクソン。ロドルフォにルチアーノ・ガンチ、マルチェッロにマッシモ・カヴァレッティ。
《オルフェオとエウリディーチェ》は勅使河原三郎の演出で、舞踏も圧巻のプロダクション。指揮は園田隆一郎。エウリディーチェ役のジュリア・セメンツァート、オルフェオ役のサラ・ミンガルドはともに新国立劇場初登場。
《こうもり》は指揮がダニエル・コーエン。「この作品が初演された1874年の1年前に、ウィーンでは万国博覧会が開かれ、その直後に金融危機に見舞われた。このようにウィーンがひっくりかえるような時期に書かれたことも加味しながら聴いていただくと、現実から浮遊するその頃の社交界の様子がより分かるのではないか」。指揮はダニエル・コーエン、アイゼンシュタインにトーマス・ブロンデル、ロザリンデにサビーナ・ツヴィラク、オルロフスキー公に藤木大地。
《リゴレット》はダニエレ・カッレガーリが指揮。リゴレット役は名バリトンのウラディーミル・ストヤノフ、ジルダに中村恵理、マントヴァ公爵にローレンス・ブラウンリー。
《ドン・ジョヴァンニ》は飯森範親が指揮。「一人も脇役がいないのがモーツァルトのオペラ。どんな小さな役も一つの個を持っており、一人ひとりの力が《ドン・ジョヴァンニ》というオペラを成り立たせています」
《椿姫》は、レオ・フセインが指揮。ヴィオレッタ役のカロリーナ・ロペス・モレノ、アルフレード役のアントニオ・コリアーノは共に新国立劇場初登場。ジェルモンに名歌手ロベルト・フロンターリ。
《愛の妙薬》は、指揮がマルコ・ギタリーニ、アディーナ役のフランチェスカ・ピア・ヴィターレ、ドゥルカマーラ役のマルコ・フィリッポ・ロマーノが新国立劇場初登場。ネモリーノにマッテオ・デソーレ、ベルコーレにシモーネ・アルベルギーニ。
《ウェルテル》は指揮がアンドリー・ユルケヴィチ。ウェルテル役はチャールズ・カストロノーヴォで、「世界的な大スターとなったテノール歌手を皆様に注目していただきたい」。シャルロットに脇園彩。
このほかに、「こどものためのオペラ劇場 2025~オペラをつくろう!小さなエントツそうじ屋さん」(2025年5月/4回公演)、「高校生のためのオペラ鑑賞教室2025~蝶々夫人」(新国立劇場公演、2025年7月/6回公演)、「高校生のためのオペラ鑑賞教室2025~魔笛」(ロームシアター京都公演、2025年10月/2回公演)が予定されている。
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