リコーダーのために作曲されたバロック時代の作品を「おさらい会」で発表!
リコーダーを習うことを一念発起した管楽器ほぼ未経験者、クラシック音楽ファシリテーターの飯田有抄さん。いよいよ水内謙一先生の門下生による「おさらい会」に臨みました!
1974年生まれ。東京藝術大学音楽学部楽理科卒業、同大学院修士課程修了。Maqcuqrie University(シドニー)通訳翻訳修士課程修了。2008年よりクラシ...
礼拝堂のようなホールが会場!
あれは、とある初夏の日のこと(ずいぶん日にちが経ってしまった)、私が師事するリコーダーの先生でありバロック音楽の専門家、水内謙一先生と、奥様でチェンバリストの村上暁美先生の門下生による「第17回 リコーダー、チェンバロ、アンサンブル おさらい会」が開かれた。
「おさらい会」というが、私の脳内ではすっかり「発表会」に変換されていた。そして勝手に緊張していた。大嫌いだった「ピアノの発表会」のあの空気を思い出し、お腹が痛くなりそうだったが、事前に届いたタイムテーブルを見ると、ずいぶんとたくさんのお弟子さんが出演されるようで楽しみになってきた。いろいろな曲が聴けそう。
会場は、東京オペラシティ内にある近江楽堂。本格的な古楽コンサートが頻繁に行われている礼拝堂のような美しいホール。まさか、あんなに響きの素晴らしいホールで自分も演奏できるなんて。
それにしても、結構な長丁場である。 正午から開始して、終演は17:42。第1部から第6部まで。31曲が並ぶ。作曲家はテレマン、ヴィヴァルディ、コレッリといった、バロックの有名人はもちろんのこと、フィンガー、フィリドール、ペプシュ、ビガリアなど、初めて聴く名前も並んでいる。もともとリコーダーのために作曲されたバロック時代の作品ばかりだ。
本番で出会った同門の人たち
いよいよ迎えた本番。驚いたのだが、ソナタや組曲などを、ほとんどの方が抜粋ではなく、全楽章・全曲演奏されていた! すごすぎる……そりゃあ長丁場になるはずだ。チェンバロの通奏低音を伴うソロの人もいれば、何名かで演奏されるアンサンブルもある。
とにかく皆さん楽しそうに、集中した面持ちで、熱心に演奏されている。お一人ずつの声を聞くようで、その人のキャラクターが伝わってくる。中には、私の耳には「プロですか?」と思える上手な方たちもいて、びっくり。
年齢層は高めで、「ザ・大人の習い事」的な、落ち着いた雰囲気で進められた。そのなかに、可愛らしい女の子たちがお2人まじっていて、キラキラ輝くオーラを放っていた。お2人とも小学5年生とのこと。
ソプラノ・リコーダーでビガリアのソナタ イ短調を演奏した箱田三冬さんは、リコーダーレッスン歴1年半。お母様にお話を伺うと、「習い事でピアノというと、家に楽器が必要。でも、リコーダーなら学校でもやっているから、すぐにできる。やってみる? と本人に聞いたら、うん! と。学校の音楽の成績もアップしました〜」と、親子で楽しそう。
アルト・リコーダーでテレマンのソナタハ長調を演奏した岩野実咲さんは、レッスン歴6年。お母様は「楽譜が読めるようになってもらいたいと、ピアノやヴァイオリンを考えたのですが、周りもやっている子が多いので嫌だ、と。笛ならやりたい、ということで続けています」と話してくれました。それにしても、カッコいい黒いリコーダーで、めちゃくちゃ美しい音色、とても上手でした。将来はリコーダー奏者? と思いきや、「夢はバレリーナ」だそうです。
加藤一美さんは、ヴォイス・フルートという少し長めのリコーダーでデュパールの組曲第1番を流麗に演奏。この日はアンサンブルのためにグレート・バス・リコーダーもお持ちになっていて、わたくし羨望の眼差しで見つめてしまいました。
ヘンデルのソナタ 二短調を美しい音色演奏されていた西陰邦夫さんは、水内門下歴5年。巨匠ブリュッヘンの演奏に憧れ、独学でリコーダーを開始。NHK-BSの番組で水内先生の演奏と出会い「これだ!私の求めていた音は!」と感激し、入門されたとのこと。
オトテールの組曲ヘ長調を素敵に演奏したのは久保田美也子さん。こどものPTA活動でリコーダーを始めたのがきっかけ。水内門下歴は5年。とにかく楽しそうに吹かれていました!
杉町玲子さんは中学校の教員で、リコーダー歴10年。ハッセのリコーダーのためのカンタータを、よく通る音色で披露していました。
華麗なる指さばきで、技巧的なテレマンの「『音楽の練習帳』よりソナタ ハ長調」を流麗に演奏されたのは津久井康幸さん。ブリュッヘンを中心に巻き起こった古楽ブームからのリコーダーファンで、演奏歴は40年! 水内先生がドイツから帰国後、2009年から師事。この「おさらい会」も初回から出演とのこと。
最後は、なんとリコーダーだけでバッハの管弦楽組曲第4番!(この曲だけは編曲もの)。総勢17名で演奏された「大合奏」は、喜びあふれるサウンドで、圧巻だった。
いやはや、みなさん、熱い!
手にされた1本1本の楽器が、みんな素敵で、木目も色味もバラエティに富んでおり、それらを見るのも楽しいひととき。
会は全体的に、なんとも落ち着いた雰囲気。ソロのみならず、アンサンブルを掛け持ちされる方が多かったので、黒いお衣装が多かったからかもしれない(私は近江楽堂の白い建物と同化し、埋もれて目立たないようにするつもりが、逆に白い服が浮いてしまった……)。
私は仕事柄、アマチュアのピアノ奏者によるステージを聴くことがあるのですが、ピアノのステージって、なぜかこう、割と派手なイメージというか、女性は思い切って肩出しドレスなどを着用したり、普段とは違う非日常を楽しむ雰囲気があります。それもいいけれど、着飾るよりも、落ち着いた雰囲気の中で、音楽に集中できる空間も、オトナの習い事としてとても素敵だな〜と思いました。
自分の出番では……
ところで、基本みなさん全楽章を演奏するなか、ド初心者の私は、マルチェロのソナタを第1・2楽章だけ吹きました。それでも集中力マックスで頑張ったから、けっこう疲れた。しかし達成感にも似た、心地よい疲れだ。
さまざまなバックグラウンドを持つ人たちが、いろいろな形でリコーダーと出会い、愛し、楽しんでいる。そんな空気感がビシビシと伝わる「おさらい会」、とても刺激的だった。
日々の指導のみならず、本番の重奏パートの演奏や合奏の指揮をされた水内先生、通奏低音をすべて弾かれた村上先生、なんてエネルギッシュな方たちなのだろう。音楽愛があってこそ! ですね。
私も次回の「おさらい会」に向けて、精進します!
水内謙一さん、村上暁美さんが、フランスの奏者たちと組んでいるアンサンブル「レ・タンブル」のコンサートがあります。
「トリオの上2声部というとヴァイオリン2台がメジャーだった当時、リコーダーとガンバ、ガンバとオブリガート・チェンバロ、リコーダーとオブリガート・チェンバロ……と、多彩な編成のトリオをテレマンは残しました。今回はそのような珍しい組み合わせの名曲を集めたコンサートです。ぜひこの機会にお聴きいただくことができましたら幸いです」
出演:
水内謙一(リコーダー)
川久保洋子(ヴァイオリン)
ミリアム・リニョル(ヴィオラ・ダ・ガンバ)
ジュリアン・ヴォルフス(チェンバロ&オルガン)
村上暁美(チェンバロ&オルガン)
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