レポート
2025.11.18
シェーンベルクの大作《グレの歌》上演

東京・春・音楽祭2026 ラインナップ発表!

上野を舞台にした国内最大級のクラシック音楽の祭典「東京・春・音楽祭」。22年目を迎える2026年は、3月13日から4月19日の約40日間にわたって開催される。10月30日に東京文化会館で行なわれた記者会見では鈴木幸一(東京・春・音楽祭実行委員長)、芦田尚子(同音楽祭事務局長)、野平一郎(東京文化会館 音楽監督)らが登壇し、オペラやオーケストラ、室内楽など盛りだくさんのプログラムが発表された。

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1941年12月創刊。音楽之友社の看板雑誌「音楽の友」を毎月刊行しています。“音楽の深層を知り、音楽家の本音を聞く”がモットー。今月号のコンテンツはこちらバックナンバ...

10月30日に東京文化会館で行なわれた記者会見から。
左から芦田尚子(事務局長)、野平一郎(東京文化会館 音楽監督)、鈴木幸一(東京・春・音楽祭委員長)、藤原誠(同音楽祭委員)、長岡信裕(同音楽祭委員)

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22年目の東京・春・音楽祭

これまでに2000以上の公演数を誇る「東京・春・音楽祭」。会見冒頭では同音楽祭委員長の鈴木幸一が、22年目を迎えるにあたって、思いを述べた。

「クラシック音楽は、共通した感性やロジックに訴えることができるという点において、ヨーロッパが生んだもっとも優れた芸術ではないかと思います。22年の年月を経て多くの音楽家やクラシック・ファンのかたがたにこの音楽祭を知っていただいたことはとても大切なことであり、新しい取り組みを行ないながら、今後も続けていきたいです」

鈴木幸一氏(東京・春・音楽祭実行委員長)

20年以上にわたって拠点としてきた東京文化会館は、2026年5月から改修工事のため約3年間の休館に入る。休館前最後の開催となる今回の音楽祭に向けて、同館音楽監督の野平一郎が意気込みを語った。

「クラシック音楽はどのようなところが魅力で発展してきたのか、過去の音楽家や作曲家がなにを肝にして音楽を作ってきたのか、そしてこれらの音楽がどのように人々の心をつかんできたのかということをもう一度聴いて学んでほしいという、すばらしいプログラムになっています。東京文化会館が再開した暁には、大ホール、小ホールともに多彩なプログラムを展開しますので、ぜひまた当館にお越しいただきたいです」

なお、休館中は上野の施設や都内のホールを利用して、できるだけ公演数を減らさずに音楽祭を続ける方法を検討しているという。

野平一郎(東京文化会館 音楽監督)

東京・春・音楽祭だからこそ実現できる多彩なプログラム

「合唱の芸術シリーズ」からは、まずマレク・ヤノフスキ指揮によるシェーンベルクの大作《グレの歌》(3月25日)。2026年に創立100年を迎えるNHK交響楽団と、東京オペラシンガーズとともに届ける《グレの歌》は、ヤノフスキみずからの希望により実現する。4月12日には古典派のスペシャリスト、アイヴァー・ボルトンを指揮に、東京都交響楽団とハイドンの晩年の傑作《四季》が披露される。

東京・春・音楽祭の名物である「ワーグナー・シリーズ」では、世界有数のオーケストラで活躍しているアレクサンダー・ソディ(指揮)とN響によるワーグナー《さまよえるオランダ人》(4月5・7日)を上演。「プッチーニ・シリーズ」では、同シリーズで過去2回指揮し好評を得たピエール・ジョルジョ・モランディが読売日本交響楽団、新国立劇場合唱団と《マノン・レスコー》(4月16・19日)を上演する。さらに、3年連続で同音楽祭に出演しているピアニストのルドルフ・ブッフビンダーが、ついに東京文化会館 大ホールで公演を行なう(4月4・6日)。ブッフビンダーがライフワークとするベートーヴェンのピアノ協奏曲全曲を、東京春祭オーケストラとともに二夜にわたって弾き振りする豪華共演は見逃せない。

古典から近現代、コンテンポラリーまで幅広い音楽を楽しめることも特徴。アンサンブル・アンテルコンタンポランは、来年に生誕100年を迎えるジェルジュ・クルターグの作品や、ジョージ・ベンジャミンのオペラ《小さな丘へ》(日本初演)などをふくめた2公演(4月4・5日)を開催する。また、昨年におよそ6時間かけてシェーンベルクの弦楽四重奏曲全曲演奏会を行ない、観客を沸かせたディオティマ弦楽四重奏団がふたたび登場。同団の名前の由来となったノーノ《断章―静寂、ディオティマへ》などを披露する(4月11日)。

そのほか、上野公園内にある博物館や美術館を舞台にした人気の「ミュージアム・コンサート」では、今回も国内外の演奏家たちが各施設の展覧会とコラボレーションを行なう。「東京春祭 for Kids」ではバイロイト音楽祭と提携し、子ども向けにアレンジした《さまよえるオランダ人》や、上野のみならず、都内のさまざまな場所を舞台にした無料のミニ・コンサート「桜の街の音楽会」なども開催される。また、高音質・高画質・自由視点映像にこだわったライブ・ストリーミング配信(有料)も行なわれ、場所を問わず音楽祭を楽しむことができる。

東京文化会館の休館前最後の公演に向けて、選りすぐりのプログラムを届ける東京・春・音楽祭。桜が咲き、にぎわいを見せる上野の地で音楽を堪能するのはいかがだろうか。

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