田代万里生×井上芳雄対談【前編】『エリザベート』について語り合う
ミュージカル作品を中心に、多彩な活動を続ける田代万里生さんが、愛するクラシック音楽を語る「万里生クラシック」。
今回は、ミュージカル界のスター・井上芳雄さんとスペシャル対談! 前編のテーマは、1992年にウィーンで初演された大ヒットミュージカル『エリザベート』。実在したオーストリア皇后と、「死」の象徴である“黄泉の帝王”との愛の物語をドラマティックな楽曲で描き、世界各国で愛され続けてきた作品です。今回、東宝版初演から25周年になる舞台で共演する二人が、作品の魅力や好きな楽曲、お互いの役について語りつくします。
トートとフランツ・ヨーゼフの役作りとは!?
田代 今日は僕の連載にゲストということで芳雄さんにご登場いただきます。「万里生クラシック!」の第1回が公開されたとき、「面白い企画が始まったね!」と連絡してくださったんです。なので、もしかしたらお越しいただけるのではないかな? と、思い切ってお声がけさせていただきました。共演は多いのですが、芳雄さんとの対談は新鮮です!
井上 いや~、光栄です(笑)。万里生くんにぴったりな連載だなと思って、つい、連絡したんです。
東京藝術大学音楽学部声楽科テノール専攻卒業。埼玉県立大宮光陵高等学校音楽科声楽専攻(テノール)卒業。音楽の教員免許(中学・高校)資格を取得。絶対音感の持ち主でもある。3歳から母よりピアノを学び、7歳でヴァイオリン、13歳でトランペットを始め、15歳からテノール歌手の父より本格的に声楽を学ぶ。ピアノを三宅民規、御邊典一、川上昌裕、吉岡裕子、声楽を直野資、市原多朗、岡山廣幸、野口幸子に師事。13歳のとき、藤原歌劇団公演オペラ《マクベス》のフリーアンス王子役に抜擢。大学在学中の2003年東京室内歌劇場公演オペラ《欲望という名の電車》日本初演で本格的にオペラデビュー。その後09年『マルグリット』でミュージカルデビューを果たす。
近年の主な出演作に『キャプテン・アメイジング』『イノック・アーデン』『ラブ・ネバー・ダイ』『モダン・ミリー』『カム フロム アウェイ』『アナスタシア』『マチルダ』『マタ・ハリ』『マリー・アントワネット』等。第39回菊田一夫演劇賞受賞。ミュージカルデビュー15周年記念アルバム「YOU ARE HERE」発売中。
2025年10月より『エリザベート』に出演予定。
井上芳雄(いのうえ・よしお)
東京藝術大学在学中の2000年に、ミュージカル『エリザベート』の皇太子ルドルフ役でデビュー。以降、その高い歌唱力と存在感で数々のミュージカルや舞台に出演。演劇賞も多数受賞。コンサートの開催、音楽・バラエティ番組への出演ほか、近年ではMCを務めるなど活動の場を広げている。自身の冠番組、TBSラジオ「井上芳雄 by MYSELF」(毎週日曜)、BS-TBS「美しい日本に出会う旅」(毎週水曜)、NHK総合「はやウタ」(レギュラー司会)、WOWOW「生放送!井上芳雄ミュージカルアワー『芳雄のミュー』」が放送中。
近年の出演作にミュージカル『ベートーヴェン』、『メディア/イアソン』、『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』、『桜の園』、ミュージカル『二都物語』、『ナイツ・テイル -騎士物語-』ARENA LIVEなど。10月より『エリザベート』、12月より『ダディ・ロング・レッグス』、2026年2月より『大地の子』に出演予定。
——今回のミュージカル『エリザベート』で、“黄泉の帝王”トー
井上 『エリザベート』の場合、役作りは特に口には出さず、お互いを見て感じ取るだけなんです。どのキャストも役のイメージは自分の中だけにある感じがします。僕も今まで誰ともトートについて深く語ったことはありません。ただ、万里生くんは役についてすごく研究していて、たまに威嚇してくるんです(笑)。
田代 断じてそんなつもりはないです(笑)。でも、地方公演で芳雄さんのホテルの部屋に行ったとき、部屋中に本があふれ返っていて驚いたことがあります。普段は僕に「万里生は本が好きだな~」とか言ってるのに、公演関係の本とか、僕よりずっと読んでますよね。
井上 僕は研究のために読んでるわけじゃなくて、ただ好きなだけで。しかも、ほとんど読み終わらない(笑)。
田代 僕も同じですよ! ただ好きだからという理由です。本作のオーストリア皇帝フランツ・ヨーゼフは、即位4年後の22歳からエリザベートが亡くなる68歳頃までの生涯を演じるのですが、この前、衣装合わせをしたら、細かいものを入れると17パターンもあって。2公演の日は1日34回着替えるし、今期のツアー公演は全部で112公演あるのですが、ダブルキャストでも全56回の予定なので、単純計算でも952回の早替えという、とんでもない回数なんです。場当たりやゲネプロも含めたら1000回を超えそうですね。着替えだけでなく、メイクや付け髭、かつらもあるので、年齢の視覚的な経年変化を見せるだけでも大変な役だなと感じています。
あと、稽古の初日は全然声が変えられなくて、そのあたりも難しいですね。ひと月くらい経つと、やっと喉がフランツらしく落ち着いてきて、少しずつ威厳や年齢の変化をつけられるようになるんです。
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