
「第九」で学ぶ!楽典・ソルフェージュ 第9回 和音2. 和音の転回形、カデンツと終止

音大受験生や音大生はもとより、楽器や歌、音楽鑑賞を楽しむ人までを対象にした、楽典とソルフェージュの連載。国民的人気曲「第九」を題材に、楽しみながら耳を育て、スコア・リーディングにも挑戦! 楽典の学びを実践するエクササイズで、表現力やアンサンブル能力を磨きましょう。
みなさま、こんにちは。前回は和音の度数と種類について学びました。今回は和音が曲の中でどのように機能しているかを見ていきましょう。
【楽典】
1.和音の基本形と転回形
和音では最低音が根音の形を「基本形」、低音が第3音や第5音、第7音の場合は「転回形」といいます。基本形は落ち着いた安定感のある響きがしますが、転回形は流動的で推進力を持っているのが特徴です。
表記にはおもに2種類の方法が用いられています。
まずは転回した回数を「第1転回形」「第2転回形」のように記す方法です。和音記号の右上に「転回指数」として小さい数字で表します。日本固有の表記法ですが、理解しやすいため、広く一般に使われています。
もう一つは、バスからの音程を記す方法で、バロック時代に通奏低音に記された数字を体系化したものです。鍵盤楽器やリュートの奏者はその数字にしたがい即興演奏を行なっていました。特徴的な音程のみを単音程で記し、省略される数字もあります(譜例1)。両方の表記の方法を覚えておくと便利です。
この連載では、前者の和音表記を用います。
譜例1

2. カデンツと終止
第8回で解説したように、和音には機能があります。トニックから次のトニックまでの複数の和音のまとまりを、常用カデンツといいます。また、フレーズが落ち着く和音、文章における句読点のような役割をする所を終止といいます。
とくに重要な終止は次の4種類です。和音の基本形が使われるため、バスを見て判別できます。

実際には、半終止と完全終止が楽曲のほとんどを占めています。半終止は文章における読点「、」、完全終止は句点「。」のニュアンスです。
変終止は変格終止とも呼ばれ、ルネサンス期の楽曲の最後にⅣ→Ⅰへ進行する際に「アーメン」という語句とともに使われたことから、「アーメン終止」ともいわれています。偽終止は、ⅤからⅥに行くのがもっとも代表的ですが、Ⅰ以外のさまざまな和音で一時的に中断される印象を与えます。
譜例2 の大譜表の楽譜は四声体和声といい、複数の和音をルールにのっとって連結したものです。混声合唱を元に考えられており、横のメロディと縦の和音の響きをバランスよく両立させています。
下の高音部譜表には、大譜表の和音をわかりやすくまとめています。
譜例2

実際に「第九」第2楽章を見てみましょう。譜例3の部分はD durです。422小節はⅤ(バスは属音)でフレーズが終わっているため、半終止([半 ]と略)です。429〜430小節は、Ⅰ2 Ⅴ Ⅰ(バスは属音→属音→主音)ですから完全終止([全] と略)です。
譜例3

【エクササイズ】
1. 和音記号
次の譜例は、「第九」第3楽章3〜6小節を大譜表にまとめたものです。
この部分はB durです。

(36:06~)
譜例2にならって、次の高音部譜表上に和音をまとめて書き、①〜⑤の和音記号を答えましょう。

答え

2. 終止
第1楽章の①67小節(d moll)、②150小節(B dur)の終止を、記された和音記号を参考に答えましょう。

第1楽章 63小節~
(3:51~)

第1楽章 148小節~
(6:34~)
答え: ①半終止 ②完全終止
3. 演奏してみよう
譜例2の和音を下の音から歌ったり演奏したりしてみましょう。自分が歌いやすい音域で取り組みます。
譜例2

また、譜例3のバスを取り出して歌い、終止の違いを確かめましょう。
譜例3

(27:51~)
いかがでしたか? 和音が連なることで推進力を与えたり、落ち着いたりして抑揚のベースを作っているのですね。とくにバスが大切だということを強調して今回は終わります。
次回は楽語について見ていきましょう。





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