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2020.02.24
週刊「ベートーヴェンと〇〇」vol.10

ベートーヴェンと分けられた(?)ソナタ

年間を通して楽聖をお祝いする連載、「週刊 ベートーヴェンと〇〇」。ONTOMOナビゲーターのみなさんが、さまざまなキーワードからベートーヴェン像に迫ります。
第10回は、ベートーヴェンと分けられた? ソナタ。ピアノ・ソナタ第19番Op.49-1と第20番Op.49-2の2曲は、本来はひとつの作品だった? 「おやすみベートーヴェン」でおなじみの平野昭先生の名推理をどうぞ。

ベートーヴェンを祝う人
平野昭
ベートーヴェンを祝う人
平野昭 音楽学者

1949年、横浜生まれ。武蔵野音楽大学大学院音楽学専攻終了。元慶應義塾大学文学部教授、静岡文化芸術大学名誉教授、沖縄県立芸術大学客員教授、桐朋学園大学特任教授。古典派...

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ピアノ・ソナタ第19番と第20番 弟カールが2曲に分けちゃった?

ピアノ・ソナタOp.49-1と49-2、つまり1796年2月と1797年から1798年初頭の二度の時期にわたって作曲された、2楽章構成のピアノ・ソナタ第19番と第20番。これを作曲した年代順に戻すと、不思議なことが浮かび上がります。

その前後、1795年に作曲されたOp.2の3曲、第1,2,3番が4楽章構成。1796年から1797年にかけて作曲されたOp.7の第4番も、4楽章構成なんです。4楽章構成のソナタを書いてるときに、どうして2楽章のものが?

1805年にウィーンの芸術工芸社から出された初版の表紙。

実はOp.49の2曲は、ベートーヴェンは出版するつもりがなくて、お弟子さん用の優しいソナタとして書いたものです。8年後に弟のカールがもったいないから出版しようと出版社に持っていったら、「あぁ、ベートーヴェンさんのだったらOp.48番まで使ったから、これ49番」ということで。当時は出版社に持ち込まれた順に、作品番号が付けられていたわけですね。

それで、1863年にベートーヴェンが死んでから出版社がピアノ・ソナタ全集を作るときに、作品番号若い順に1番2番3番とつけたから、19番20番になったんだけど、作曲順に戻すと、4楽章で作っている時期に作られている。

ベートーヴェンの4歳下の弟、カスパー・アントン・カール・ヴァン・ベートーヴェン(1774〜1815)。

第19番Op.49-1と第20番Op.49-2の全4楽章は、ト短調-ト長調-ト長調-ト長調の構成。ト短調(第19番の第1楽章)はゆっくり始まります。これが本来は第2楽章で、今は第20番の第2楽章にされているメヌエットが第3楽章で、そうすると、あの2曲は、弟のカールが2曲に分けて出版したのではないかと考えられます。

1番から4番までの4曲までと同時期に、4楽章のピアノ・ソナタとして作ったんじゃないかな、という推理くらいは成り立つんですよね。自筆譜が残っていないので、断言するのは難しいのですが。

でも、作曲順に並び替えることで見えてくることもあります。2楽章のソナチネ2曲というよりも、この時期に作っていたのなら、4楽章なのではないでしょうか。しかも始まり方が、アンダンテで始まるト短調で、メヌエットで終わるト長調というよりは、ト長調で始まって、それを2楽章にしたほうが、自然な4楽章になるんじゃないでしょうか。これはまだ論文にはなっていませんが、聴いてみるとしっくりくるんですよ。

現在知られている版

ピアノ・ソナタ第19番Op.49-1 第1楽章 ト短調 アンダンテ
  第2楽章 ト長調 ロンド アレグロ
ピアノ・ソナタ第20番Op.49-2 第1楽章 ト短調 アレグロ・マ・ノン・トロッポ
  第2楽章 ト長調 メヌエット

平野流

ピアノ・ソナタ第20番Op.49-2 第1楽章 ト長調 アレグロ・マ・ノン・トロッポ
 ピアノ・ソナタ第19番Op.49-1 第1楽章 ト短調 アンダンテ
ピアノ・ソナタ第20番Op.49-2 第2楽章 ト長調 メヌエット
 ピアノ・ソナタ第19番Op.49-1 第2楽章 ト長調 ロンド アレグロ

平野流Op.49

ベートーヴェンを祝う人
平野昭
ベートーヴェンを祝う人
平野昭 音楽学者

1949年、横浜生まれ。武蔵野音楽大学大学院音楽学専攻終了。元慶應義塾大学文学部教授、静岡文化芸術大学名誉教授、沖縄県立芸術大学客員教授、桐朋学園大学特任教授。古典派...

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