読みもの
2022.11.23
「進撃の巨人」から「東京喰種トーキョーグール」「呪術廻戦」「チェンソーマン」まで

「チェンソーマン」をはじめ多士済々! ヒットアニメの劇伴における重要人物たち

いまやアニメは、音楽軸で語られる時代。劇伴が作品世界のスケールを増幅させ、海外のファンをも引きつけるきっかけとなっています。ここでは2010年以降のヒットアニメに携わっているキーパーソンに着目し、担当作品との相性の良さや、作家それぞれのサウンドの特徴を見ていきます。

NIEDA IKU
NIEDA IKU

編集、ライター、A&Rなど。神奈川県生まれ。音楽大学でピアノを専攻し、レコード会社に就職。その後出産を機にフリーランスに。好きな音楽は雑多でジャンルを問わず聴...

TVアニメ「チェンソーマン」
© 藤本タツキ/集英社・MAPPA
毎週火曜日24:00よりテレビ東京他にて放送中
毎週火曜日25:00よりPrime Videoにて最速配信中

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アニメ「チェンソーマン」の放送がついに10月、スタートした。

オープニングやエンディングを担当するアーティストについては発表が直前だったこともあり、SNSでは連日予想合戦が繰り広げられていた同アニメだが、蓋を開けてみるとオープニング・テーマは米津玄師、エンディング・テーマを総勢12組のアーティストが週替わりで音楽を担当するという、予想を遥かに上回るキャスティングでアニメファン、音楽ファンを沸かせた。

アニメ「チェンソーマン」のトレーラー

そんなイレギュラーなほど豪華な座組みで幕を開けた「チェンソーマン」だが、アニメ化が発表された2021年秋時点では早々に「音楽:牛尾憲輔」と発表されていた。その後、数回公開された予告/特報映像で流れてきた牛尾憲輔/agraphの音楽に、筆者を含む原作ファンは「間違いない」マッチングの高さを感じていたのではないだろうか。

このように、主題歌より一足先に発表されることもある劇中音楽だが、今作は特に、原作とアニメとの間を絶妙に接続させる”呼び水”の役割も担っていると感じるところだ。

本稿では、牛尾憲輔をはじめとする、昨今のヒットアニメを取り巻く劇伴の重要人物たちについて書きたい。

澤野弘之――「進撃の巨人」で知られるアニメ劇伴の草分け的な存在

まず、昨今のヒットアニメを音楽軸で語ることにおいて「進撃の巨人」の存在は欠かせないだろう。本作品の音楽は澤野弘之が担当。澤野はアニメ劇伴の草分け的な存在として、「進撃の巨人」(2013〜23年)以前にも「青の祓魔師」(2011年)「ギルティクラウン」(2011~12年)らの音楽で注目を浴び、「キルラキル」(2013~14年)では作品の持つインパクトも掛け算となり、より幅のある支持を得たように思う。

アニメ「進撃の巨人」のトレーラー

「進撃の巨人」The Final Season Part2 オリジナルサウンドトラック

 

「澤野劇伴」の特徴の一つとして、スケール感のあるラウドなサウンドに、美しいシンセメロディ、グローバルな匂いのする女性ボーカル……を想起するが、こういった音楽が前述のようなSF要素を含むスケールの大きい作品世界とマッチし魅力を増幅させていることは間違いないと感じるし、響きの豊かな音楽により、海外のアニメファンにいっそうリーチするきっかけにもなっているのではないか。

やまだ豊――「東京喰種トーキョーグール」など作品の世界観のスケールを増す劇伴

作品の世界観のスケールを増す劇伴、という意味で、やまだ豊の作品には澤野弘之の系譜に通じるものを感じる(余談だが両氏は実際、「マルモのおきて」[フジテレビ系/2011年]の音楽を共同で担当)。彼の劇伴もまた、ダイナミックなサウンド、繊細なピアノのメロディ、無国籍感漂う歌がフィーチャーされる印象が強い。

アニメとしては「東京喰種トーキョーグール」(2014年)、映画は「キングダム」(2019)、「東京リベンジャーズ」(2021年)と、つい最近話題を席巻した作品も多く手がけているが、特に「東京喰種トーキョーグール」は海外での人気/評価ともに凄まじく、劇中メインテーマ曲《GLASSY SKY》(歌:ドナ・バーク)をはじめとしたオリジナルサウンドトラックが、YouTubeにおいて再生回数が1億2000万を突破するなど驚異的な人気を博す。

さらに同作は、レコーディングはロサンゼルスの老舗スタジオ「The Bridge Recording」で行なわれ、巨匠ハンス・ジマー率いるRemote Control Productionsによりミックスダウンが行なわれているというのは、改めて特筆すべきところだ。

「東京喰種トーキョーグール」のメインテーマ曲《GLASSY SKY》(歌:ドナ・バーク)

「東京喰種トーキョーグール」オリジナル・サウンドトラック

また、やまだは洗足学園音楽大学の音楽・音響デザインコース出身であり、在学中は作曲家の渡辺俊幸、松尾祐孝に師事していたことも興味深い。

堤博明――「呪術廻戦」などダークファンタジーの緊迫感を増す不文律なメロディ

音大出身といえば、堤博明についても触れておきたい。国立音楽大学音楽文化デザイン学科出身の堤は、「呪術廻戦」(2020年) 「劇場版 呪術廻戦 0」(2021年)の 音楽を担当 (※共作に照井順政、桶狭間ありさ)したことでその名前を知った人も多いのではないだろうか。

「呪術廻戦」オリジナル・サウンドトラック

「呪術廻戦」は「ダークファンタジー」という今人気のカテゴリーを代表する漫画原作のアニメであるが、バトルシーンを始めとする緊迫感あるシーンで、変拍子や無調を思わせる不文律なメロディが効果的に使われている印象だ。

こういった専門的な和声の知識を感じさせる楽曲もあれば、アニメ「東京リベンジャーズ」「からかい上手の高木さん」などでは、抒情的で美しいメロディが際立つ楽曲や、ギターが唸る王道ロック系の楽曲もあり、ポピュラリティを感じさせる。

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