異世界への入り口に誘う……? リゲティのピアノ練習曲
1974年生まれ。東京藝術大学音楽学部楽理科卒業、同大学院修士課程修了。Maqcuqrie University(シドニー)通訳翻訳修士課程修了。2008年よりクラシ...
このフォトエッセイのコーナーでは、日常のちょっとした瞬間を切り取った写真と、わりとほっこりする音楽とを関連づけてご紹介しています。
が、たまにはちょっと雰囲気の違うものを。
知らない道を歩いているとき、この路地はもしかしたら異世界に繋がっているんじゃないか、と思うような場所に出会ったりしませんか?
先の見えない上り坂、消失点まで続く一本道、長い長い階段……
直感的に行ってみたくなる場合とそうでない場合がありますが、なんとなく心惹かれる瞬間です。
アートなのか? 自然にこうなったのか? ちょっとよくわからないけれど、味わい深い階段に出会ったので写真に収めました。
この階段を見ていて、思い浮かんでしまったのが、リゲティの練習曲第2巻第13番です。
なんとこの曲、「悪魔の階段」というタイトルが付いていたりするのですが、ちょっぴり怖い雰囲気がありつつも、どこかユーモラスです。
ジョジュル・リゲティ(1923〜2006)は、3冊からなるピアノのための練習曲集を残していて、これは第2巻(1988~94年作曲、全8曲)に収められています。
8曲それぞれに「悲しい鳩」「金属」「目眩」「魔法使いの弟子」「不安定なままに」「組み合わせ模様」「悪魔の階段」「無限の円柱」というタイトルがあります。理数的で抽象的かつエモーショナルな様相を帯び、演奏者にとっては難曲に違いありません。
「練習曲」というと、指の運動のような印象を持たれるかもしれませんが、ショパンの練習曲の頃から、練習曲はすでに「練習」や「運動」の領域を超え、リゲティのこの作品に至っては、もはや私たちの心模様や直感力を鋭く鍛え上げてくれるような音楽芸術へと高められています。
ちょっと不思議な世界へ誘われたい、そんなときにぜひ聴いてみてください。
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