読みもの
2020.10.08
飯田有抄のフォトエッセイ「暮らしのスキマに」File.29

海底トンネルを掘り進むこと、大規模な作品を書き上げること

飯田有抄
飯田有抄 クラシック音楽ファシリテーター

1974年生まれ。東京藝術大学音楽学部楽理科卒業、同大学院修士課程修了。Maqcuqrie University(シドニー)通訳翻訳修士課程修了。2008年よりクラシ...

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ハイコントラストのモノクロですし、ぱっと見て何の写真かわからないと思いますが。

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こちらは、東京湾アクアラインのパーキングエリア「海ほたる」にたたずむ巨大なモニュメント。

海底トンネルを掘り進む際に活躍したカッターフェイスをモデルに作られたもので、実物大の直径(14.14メートル)があります。目の前にするとかなりの迫力です。

夜の海を背景に、真っ青なライトに照らされるカッターフェイスの姿は、凛とした緊張感を漂わせていました。写真はあえての白黒ですので、蒼く浮かび上がるその姿をご覧になりたい方は、ぜひ海ほたるへ Go To!

さて、こうしたモニュメントと出会うと、聴きたくなる音楽といえばこちら。イギリスの作曲家レイフ・ヴォーン=ウィリアムズ(1872〜1958)の最初のシンフォニー「海の交響曲」です。

1903年から09年にかけて、長い期間にわたって手を入れながら進められました。つねづね思うのですが、大規模な作品を長期にわたって書き上げていく作曲家の気持ちって、一歩一歩海底トンネルを掘っていくような心境でしょうか。

全4楽章を演奏すると1時間以上を要し、ソプラノとバリトンの独唱、混声四部合唱も大活躍する大作です。

テクストはアメリカの詩人ウォルト・ホイットマンによる自由詩で、ヴォーン=ウィリアムズは、彼の作品から多くのインスピレーションを得ています。

ヴォーン=ウィリアムズ「海の交響曲」

第1楽章:すべての海、すべての船に寄せる歌

第2楽章:なぎさにひとりいて

第3楽章:スケルツォ 波

第4楽章:探求者たち

昼の明るい海の輝きも素敵ですが、夜の深遠なる迫力を称えた海もまた、ぞくっとするような美しさを感じます。

飯田有抄
飯田有抄 クラシック音楽ファシリテーター

1974年生まれ。東京藝術大学音楽学部楽理科卒業、同大学院修士課程修了。Maqcuqrie University(シドニー)通訳翻訳修士課程修了。2008年よりクラシ...

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