2020.05.01
5月の特集「ファッション」
モーツァルトがおねだりした「赤いフロック」とウィーンのモード
パトロンのヴァルトシュテッテン男爵夫人への手紙で、「赤いフロック」をおねだりしたモーツァルト。いったいどんなコートだったのでしょうか。
オーストリアの服飾文化に精通した山之内克子さんが、当時の流行とともに解説! モーツァルトのファッション・センスは、いかに……?!
山之内克子 西洋史学者
神戸市外国語大学教授。オーストリア、ウィーン社会文化史を研究、著書に『ウィーン–ブルジョアの時代から世紀末へ』(講談社)、『啓蒙都市ウィーン』(山川出版社)、『ハプス...
一目惚れした赤いフロック
その赤いフロックについては、それがどこで売っていて、値段がいくらしたかなどということはもはや思い出せません。その服の美しさがあまりに激しくぼくの心をとらえてしまったからです。(中略)以前からコールマルクトの店で見つけていた、真珠母を貴石で縁取った綺麗なボタンを合わせたら、どんなにか素敵なことでしょう……ああ、まさにあんな服を、ぼくは手に入れなければならないのです
続きを読む
1782年9月、モーツァルトはヴァルトシュテッテン男爵夫人に宛てた書簡のなかで、自分が「一目惚れ」した服について、かくも熱い思いを吐露している。パトロンとして若い作曲家を大切に扱っていた男爵夫人は、1週間と待たせずにその望みを叶えてやったとみえて、モーツァルトはほどなく有頂天で夫人に礼状をしたためている。
ウィーンに居を移したばかりのモーツァルトがこれほどまでに欲しがった「赤いフロック」とは、いったいどのような服だったのだろうか。当時、パリと並ぶ宮廷都市であり、ヨーロッパにおける流行の一大発信地として注目を集めたウィーンのモードと関連させつつ、この「フロック」について追ってみたい。
お礼の手紙と一緒に送った《ロンド・コンチェルタンテ》K.382
関連する記事
-
ブルガリアの老人は音楽の夢をみるか?──ラーナー・ダスグプタ『ソロ』
-
モーツァルトの名作オペラ《フィガロの結婚》が2月7日(日)新国立劇場で開幕
-
カタストロフの裡に消えゆくショパン──フィリップ・フォレスト著『洪水』
ランキング
- Daily
- Monthly
関連する記事
ランキング
- Daily
- Monthly
新着記事Latest
2021.03.05
紛争と音楽——ピアニスト、マリー・アンジュ=グッチとダン・タイ・ソンへの取材から
2021.03.05
のこぎり奏者・サキタハヂメが朝ドラ『おちょやん』音楽で泣き笑いや大阪を演出!
2021.03.04
「いま聴くべきピアニスト」配信をおさらい! 3つのシーンにオススメのピアノ曲
2021.03.04
コーヒーのお供にバレエ音楽の組曲《ホイップクリーム》はいかが?
2021.03.03
2021年3月の運勢 青石ひかりの12星座☆音楽占い
2021.03.03
ひな人形にいる五人囃子って何?どんな楽器で演奏している?
2021.03.02
ワルツ:語源は中世ドイツ語の「回る」!「会議は踊る、されど進まず」で一躍有名に
2021.03.01
ユーフォニアムが柔和に響く「未来派」の絵画