クラリネット自慢その1:小さな音を出すのが得意な構造ならではの多彩なピアニッシモ
アーティストさんが自分の楽器の魅力をとことん語る連載「My楽器偏愛リレー!」。各楽器につき、3つの自慢ポイントを紹介して、次の奏者にバトンを渡します。今回は吉田誠さんによるクラリネット自慢です。
クラリネット・ソリスト。5歳からピアノを、15歳からクラリネットを学び、また 22歳 から指揮を小澤征爾、湯浅勇治の各氏のもとで学ぶ。東京藝術大学入学後、渡仏。フラン...
童謡「クラリネットをこわしちゃった」、ガーシュインの《ラプソディー・イン・ブルー》冒頭のソロ、スウィングの王様「ベニー・グッドマン」、クラシック音楽作品の最高峰の一つと言える「モーツァルトのクラリネット協奏曲」または「五重奏曲」……多方面のジャンルで周知され、たくさんの顔を持つクラリネットですが、ここでは皆様に、改めて味わっていただきたいクラリネットの魅力を、3回にわたりご紹介します。
最弱音が引き出す深淵な世界
息を呑むようなピアニッシモ。ささやく声のようなピアニッシモ。炎が消えゆくようなピアニッシモ。
演奏中に現れるピアニッシモの世界では、コンサート会場のすべての人たちが、その繊細な音に耳を傾け、特別な空気感を生み出します。
どんな音楽作品にも、ピアニッシモの箇所には作曲家の強いメッセージが込められていると思います。
オーケストラ作品においては、その大切な箇所で、ほとんどの作曲家がクラリネットを使用するのは、私にとって、嬉しく誇らしい話です。
代表的な作品だとチャイコフスキーの「交響曲第6番《悲愴》」の第1楽章のソロ(音量記号pppから始まる)があげられるのではないでしょうか。
pppで始まるクラリネットソロは8:08から!
クラリネットは楽器の構造上(閉管構造など)、小さな音を出すのが非常に得意な楽器と言えます。
室内楽作品においては、メシアンの《時の終わりの為の四重奏曲》第3曲「鳥達の深淵」のクラリネット無伴奏曲では、また違う方向性を持っ
曲中に実音Eの音で、強弱記号ppp(ピアニッシシモから)からクレッシェンドをして、ffff(
このような表現は、すべての楽器のなかでもクラリネットにしかできないと思います。
ピアニッシモは音量的に小さいだけではなく、中身の詰まった意味のあるピアニッシモで奏されなければなりません。そのためには、特別な技術、響きを聴く耳や音色のセンスが必要です。最高のピアニッシモを奏でるために、日々、精進をしていると言っても過言ではありません。
クラリネットの魅力を味わう作品
メシアン:《時の終わりのための四重奏曲》
上記のメシアンの《時の終わりのための四重奏曲》を、追究、演奏するために集まったグループ「タッシ」の演奏でお楽しみください。彼らは、作曲者メシアンからの直々の演奏指導も受けています。武満徹をはじめ、20世紀を代表する作曲家が彼らの演奏に惚れこみ、数々の傑作を作曲しました。1970年代以降の音楽業界を先導したスーパーアンサンブルです。
日時: 2020年 12月15日(火)
1st.show 17:00開場、 18:00開演
2nd.show 19:45開場、 20:45開演
会場: コットンクラブ
出演: 吉田誠(クラリネット)、小菅優(ピアノ)
プログラム:
1st.show ブラームス/5つのリート、クラリネット・ソナタ第1番、シューマン/リーダークライス より《月夜》、幻想小曲集 Op.73
2nd.show ブラームス/クラリネット・ソナタ 第2番、シューマン/幻想小曲集 Op.73、サン=サーンス/歌曲集より《鐘》、クラリネット・ソナタ 変ホ長調Op.167
料金: テーブル席¥8,800、ボックスシート・センター ¥13,200、ボックスシート・サイド¥11,000、ボックスシート・ペア¥11,000※料金は1名あたりの金額
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