オーボエ自慢その3:心と体、すべての細胞を震えさせる「響き」
アーティストが自分の楽器の魅力をとことん語る連載「My楽器偏愛リレー!」。各楽器につき、3つの自慢ポイントを紹介して、次の奏者にバトンを渡します。今回は、ギター奏者の鈴木大介さんよりバトンを受け取った吉井瑞穂さんによるオーボエ自慢です。
甘美な音色と豊かな音楽性で世界の聴衆を魅了する国際派オーボエ奏者。東京藝術大学入学後、渡独。カールスルーエ音楽大学を首席で卒業。日本音楽コンクール優勝のほか、イギリス...
身体の細胞と心に響いた恩師の音色
モーリス・ブルグ。私たちオーボエ奏者にとってのレジェンド。フランス音楽界が誇る、まさに大巨匠のオーボエ奏者だ。一般的には同年代のハインツ・ホリガー先生が圧倒的な知名度だけれど、ブルグ先生とホリガー先生は、正しくオーボエ界を変革なさった方たちだ。欧州での活動中、自分と同年代のフランス人やフランスで教育を受けた音楽家たちは、ほぼ皆、と言っていいほど、ブルグ先生のオーボエや室内楽のレッスンを受けていた。
かく言う私も例外でなく、プロの演奏家として活動を始めてから、どうしても教えていただきたくて、当時彼のジュネーブのクラスの門を叩いた。対面レッスンは、録音の演奏をはるかに超えるエネルギーで溢れていた。先生の吹かれるオーボエから発せられる振動が、私たち生徒の身体と部屋中の物体を震わせる。大袈裟でなく、自分の身体の細胞が「ビリビリ&ブルブル」言うのだ。ブルグ先生の音=バイブレーションは、私の身体の中から消えることなく、今でも細胞の奥深くに残っている。心に響いたあの瞬間は悠久の存在で、私にとって宝そのもの。その「響」は、私の中で永遠に共鳴し続けるのだと、確信している。
オーボエの魅力を味わう作品
ヴィヴァルディ:オーボエ協奏曲集
当時の師匠・井口博之先生から、レッスンで「はい、どうぞ」とこのCDを渡されたのは、私が高校生のときだっただろうか。イタリアの抜けるような青い空と、輝く太陽の香りが漂ってきそうなヴィヴァルディのオーボエ協奏曲集。ブルグ先生の演奏が私の永遠のバイブルとなる機会を与えてくれた、名演中の名演。この録音が存在することに、心より感謝。
イ・ソリスティ・ヴェネティ、モーリス・ブルグ
(ダブリューイーエー・ジャパン、1983年録音)
ブルグ先生の参考音源
ハイドン:ピアノ三重奏曲より第2楽章
次にバトンをお渡しするのは、トランペットの佐藤友紀さんです。
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