読みもの
2020.08.21
高坂はる香の「思いつき☆こばなし」第23話

蝉の耳がうらやましい! 蝉の歌曲を聴きながら考える耳の能力

高坂はる香
高坂はる香 音楽ライター

大学院でインドのスラムの自立支援プロジェクトを研究。その後、2005年からピアノ専門誌の編集者として国内外でピアニストの取材を行なう。2011年よりフリーランスで活動...

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元気に鳴く蝉の声を聞きながら、あれほどの大音量、蝉自身の耳は大丈夫なのだろうかと、余計なお世話ながら、ふと心配になることがあります。

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昆虫の耳は、頭ではなく、足や腹部についていることが多いそうです。蝉の場合は、お腹。蝉はお腹を震わせて鳴き声を出しているので、あの大音量の発生源のすぐ横に耳がついているということ。蝉の鼓膜、強靭。うらやましい。

気になってもう少し調べたら、かつて昆虫学者のファーブルが、鳴いている蝉の横で大砲を打つ実験をしたところ、蝉は爆音に反応することなく、そのまま鳴き続けたという話を見つけました。大砲の音は感じないけれど、仲間の鳴き声は聞き分けるらしい。

フランスの博物学者、ジャン・アンリ・ファーブル(1823-1915)。
ファーブルの『昆虫記』にエドワード・ジュリアス・デトモルトが描いたイラストレーション。

これもまた、大変興味深く、かつうらやましい能力です。コンサートホールで、近くの人がガサゴソたてる雑音が気になった経験のある方は少なくないと思います。

私はそんなとき、聞きたい音だけに集中し、他は意識から外すトレーニングに目下はげんでいるのですが、まだまだ鍛錬が足りず、そううまくいきません。蝉のように自然と聞きたくない音をシャットアウトできる能力があったら、どんなにいいか(いや、単純に周波数の問題で聞こえる聞こえないの話なのかもしれませんが)。

でも、もしも人間の耳もお腹についていたとしたら、コンサートではよく聴くためにみんなシャツをペロンとめくってお腹を出さくてはいけなくなるな……結局は一長一短だ、などとどうでもいいことを、エマニュエル・シャブリエ(1841-1894)の歌曲「蝉」を聴きながら考える夏の午後。

アメリカ出身のメゾ・ソプラノ、スーザン・グラハムが歌うシャブリエの「蝉」

 

詩は、パリ生まれの女流詩人、ロスモンド・ジェラール(1866-1953)。蝉たちが太陽の指揮のもとで合唱をする様子、ヴァイオリンやヴィオールよりも心のこもった歌を歌う小さな生き物への賞賛、フランスの夏の情景が歌われています。

南仏では蝉は幸せを呼ぶ存在とされているとか。また、あるフランスの昆虫事情に詳しい方から聞いたところによると、「蝉は、オスだけがメスにアピールするために懸命に大声で鳴くというところも、フランスで愛されている理由」なのだそうです。フランスっぽくて、粋ですね。

高坂はる香
高坂はる香 音楽ライター

大学院でインドのスラムの自立支援プロジェクトを研究。その後、2005年からピアノ専門誌の編集者として国内外でピアニストの取材を行なう。2011年よりフリーランスで活動...

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