中身まで赤いリンゴを見て、ロッシーニを思う
大学院でインドのスラムの自立支援プロジェクトを研究。その後、2005年からピアノ専門誌の編集者として国内外でピアニストの取材を行なう。2011年よりフリーランスで活動...
先日、中の身まで赤いリンゴを食べる機会がありました。
開発したのは、長野県の農家の方らしい。30年以上にわたって研究を続け、身が赤いだけでなく甘みもあって、そのまま食べておいしいリンゴの開発に成功したのだそう(参考記事) 。
私が入手したのは、「炎舞」という品種でした。
外側は暗めの濃い赤色で、中はほんのりとしたピンク色。個体差があるようで、二つ目を切ったら、もうちょっと赤かった。
そんなにも苦労して、なぜ身に色をつけたいのか、などというのは無粋ですね。切ったときの驚きは確かにたのしい。見た目も重要なスイーツの製造などでは、とくに重宝されるのでしょう。
さて、突然ですが、リンゴといえば、ロッシーニのオペラ《ウィリアム・テル》。
ウィリアム・テルは、息子の頭上のリンゴを射抜いた伝説が有名な14世紀初頭の英雄で、ハプスブルク家の支配を受けていたスイスの独立に一役買ったとされる人物です。オペラは、その伝説について書かれたシラーの戯曲に基づいています。一定の年齢以上の方からすると、序曲の終盤部分は、「オレたちひょうきん族」のテーマ曲以外のなにものでもないのではないかと思いますが……(ちなみに私は年齢的に「全員集合」派でした)。
ロッシーニ:オペラ《ウィリアム・テル》序曲
物語の中、一体なんで突然テルが息子の頭の上のリンゴを弓で射るなんて、常軌を逸した行動を取らなくてはならなかったのか。
支配者であるオーストリアの総督の帽子への敬礼を拒否し、捕らえられたテル。総督は、テルが弓の名手だと知り、息子の頭の上のリンゴを射落とせば許そうと提案。悩むテルを勇敢な息子が励まし、テルはその見事な腕でリンゴを射落す、という展開です。
これはテルの腕前もすごいですが、息子の肝が座っていることのほうが、なにしろすごい。
ロッシーニといえば食いしん坊で有名です。身の赤いリンゴの存在を知ったら、早速取り寄せて食べてみたかもしれません。
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