みんなが従うアナウンスの声とは?
大学院でインドのスラムの自立支援プロジェクトを研究。その後、2005年からピアノ専門誌の編集者として国内外でピアニストの取材を行なう。2011年よりフリーランスで活動...
コロナ禍のホールでは、これまでなかった新ルールがすっかり増えてしまいました。
そのひとつである、分散退場。出口付近の密をさけるため、エリアごと、案内があった順番に退場するというものです。ホールによってアナウンスの内容は異なりますから、あちこち行っていると、その時々で感じることが違います。
行動が制約されて不便になっている前提がありますから、ちょっとしたことを、どうしてもかすか〜なストレスに感じてしまう。たとえば、指示が始まるまでの前置きがすごく長いとか、響きすぎて「いっかいせき」と「にかいせき」が聞き分けにくいとか。
あと、地味にうろたえるのが、列がアルファベット表記の会場ですね。「K列以降のお客様は……」なんていわれると、「え、MってKより前だっけ後だっけ」みたいになり、あげく、頭の中でABCを唱えることになるという(周りの人たちがサッと一瞬で立つと、うわ、わたし頭悪い!?ってなる……)。
*
それで最近、印象的な出来事がありました。
都内の某ホールで分散退場の順番を待っていたときのこと。ここはアナウンスが男性の声で、ちょっとめずらしい(どこのことかわかる方も多いと思いますが)。
最近は分散退場も定着してきているとはいえ、急いでいる方、そして、ときには単に順番を待てない方が一定数いて、退出エリアでなくても出ていく人が、けっこういるものです。
しかしその日は、みんな静かに席に座って順番を待っている。立っている人すらほとんどいなかったんです。
すると、たまたま隣にいた関係者の女性が、こうおっしゃった。
「みなさん、おとなしく待っているわねぇ。……ここはアナウンスの声が男性だから」
ははぁー!!
確かに、このホールのアナウンスは、単に男性の声というだけでなく、はっきりした、優しいけどちょっと迫力のある口調なんですよね。(何か特別な方のお声なのかも?)
……それというのはつまり、女性のソフトな口調だと、言うことを聞かない人も多いということか。
そう思った瞬間、立ち上がってスパーンと外に出て行きたい衝動に駆られまして。
べつに強烈なフェミニスト思想を持っているわけではないんですけどね。男性の声だから言うこと聞いてるって言われたら、そういうことじゃないと態度で示したくなったっていう、ただそれだけのことです。
ホール自体はそんなことを意図しているわけではないかもしれませんし、たまたま客層によることだったのかもしれません。でも、ちょっと目からウロコというか、性差にまつわる議論が盛んな昨今、なかなか興味深い現象だったなぁと思った次第でした。
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