巨匠たちの奏法を解析する動画〜スタインウェイの自動演奏ピアノSPIRIOを用いて
大学院でインドのスラムの自立支援プロジェクトを研究。その後、2005年からピアノ専門誌の編集者として国内外でピアニストの取材を行なう。2011年よりフリーランスで活動...
ピアノのリサイタルって、ホールの左側の席からチケットが売れていくそうですね。
ピアノの屋根のつき方などを考えると、音響的には右側のほうがいいなんていわれますが、左側から華麗な指さばきが見たいという気持ちもわかる。
さらにいえば、さまざまな音色に応じて、ピアニストがどんなふうに手指や体を使っているのか見たいという少々マニアックな欲求については、もっとわかる。
そういう観察をしていると、思うわけです。いいピアニストたちは、あのようなさまざまなタッチをいかにしてコントロールしているのだろうか、それぞれの手の使い方によって特定の音が鳴るメカニズムはどんなものなのだろうか、と。
そんなことを科学的、医学的な視点から解説してくれるのが、ピアニストの脳と神経の研究の第一人者、ソニーコンピューターサイエンス研究所の古屋晋一さんです。
『ピアニストの脳を科学する』などの著書で知られる先生であります。一見イケイケな雰囲気が漂わないでもない古屋先生(関西出身)ですが、ものすごくマニアックな研究をしている優れた研究者さんです。
10本の指を自在にあやつり、目にもとまらぬ超高速で1分間に数千個もの音符を打鍵するピアニスト。
その超絶技巧と驚異の記憶力を支える脳の神秘のメカニズムとは?
このたび、なんとスタインウェイの世界最高峰ハイレゾリューション自動演奏ピアノSPIRIOを使って、今はもうこの世にいない20世紀の巨匠たちの演奏について、それを分析していただくという企画が実現。動画で公開されました!
「クラシックの巨匠たちの演奏スタイルを解説!」全2回 【前編】
収録を行なったのは、東京、北青山にある、スタインウェイのショールーム。SPIRIOで再生される生音を聴き、演奏姿や鍵盤の動きを眺めつつ、大ピアニストの演奏を古屋さんに分析してもらったのです。
たとえば、ミケランジェリが鋭い音とまろやかな音を鳴らし分けるとき、指の関節の曲げ方はどんなふうに変えているのか、そのときにどこの筋肉が使われているのか。
1. スカルラッティ: ソナタ ト長調 K.55 / L.335 【ウラディミール・ホロヴィッツ】
2. ショパン: 子守歌 Op.57【アルトゥーロ・ミケランジェリ】
3. ショパン: 即興曲 変イ長調 Op.29 【ミェチスラフ・ホルショフスキー】
4. ラフマニノフ: 前奏曲 Op.3-2「鐘」【ヨゼフ・ホフマン】
普段「なんかいろいろやってる、さすがすごいなー」くらいの感覚で見ていた出来事のメカニズムがわかります。ピアノを弾く人にとっては、多彩な音色をめざす試みの参考になるはず。
優れたピアニストは、頭で思い描いた音を鳴らすために自然と脳が指令を出して、こうして細やかに体の動きをコントロールしているわけで、これがいかにすごいことかが改めてわかります。
こちらの動画、私は聞き手として、古屋さんに気になったことをじゃんじゃん質問する係を務めました。先日前編が公開されましたが、近日中に、体の全体的な使い方にフォーカスした後編も公開予定。ぜひご覧ください!
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