読みもの
2021.07.02
高坂はる香の「思いつき☆こばなし」第68話

最近の80歳はすごい——ドミンゴ、アルゲリッチ、バルダetc.

高坂はる香
高坂はる香 音楽ライター

大学院でインドのスラムの自立支援プロジェクトを研究。その後、2005年からピアノ専門誌の編集者として国内外でピアニストの取材を行なう。2011年よりフリーランスで活動...

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多くの音楽家のみなさんは、節目の年を迎えるとアニバーサリー企画をされるもので、公演情報を見ていると、この方、あんなに若々しいのに還暦!? とか、デビュー40周年って一体おいくつなんだっけ? みたいに思うこともしばしば。

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それで、最近の私がいちいち驚いているのが、80歳の音楽家たちの元気ハツラツぶりです。今80歳というと、1940〜41年生まれの方々ですね。これは第二次世界大戦中、太平洋戦争が始まった年でもあります。

たとえば、1941年1月生まれ、三大テノールとして一世を風靡し、現在もバリトンに転向してステージに立つプラシド・ドミンゴさん。いろいろあったドミンゴさん、昨年は新型コロナにも感染してしまいましたが、回復して舞台に復帰。80歳の誕生日翌日にはウィーン国立歌劇場でオペラにも出演しています。本当にお元気。

6月にもマリインスキー劇場でヴェルディのオペラ《シモン・ボッカネグラ》に出演。プラシド・ドミンゴ本人のTwitterより

https://twitter.com/PlacidoDomingo/status/1408735681149640707?ref_src=twsrc%5Etfw%7Ctwcamp%5Etweetembed%7Ctwterm%5E1408735681149640707%7Ctwgr%5E%7Ctwcon%5Es1_c10&ref_url=https%3A%2F%2Fpublish.twitter.com%2F%3Fquery%3Dhttps3A2F2Ftwitter.com2FPlacidoDomingo2Fstatus2F1408735681149640707widget%3DTweet

奇跡的な存在だと思うのは、ピアニストのマルタ・アルゲリッチさん。6月に80歳になられたばかり。演奏する様子からは、ほぼ身体能力の衰えが見られない……。よく言われる、年を重ねて経験が増えると内面が成熟するけど、その頃にはどうしても身体能力が衰える、という人類の宿命を、一人だけ免れているみたいな方であります。

アルゲリッチ芸術振興財団総裁 マルタ・アルゲリッチ80歳の誕生日を祝して、大分県は6月5日を「マルタ・アルゲリッチの日」に制定。その際のコメント動画

そして最近の私の印象にのこっているのが、先日オンラインでインタビューをしたフランスのピアニスト、アンリ・バルダさん。私が最後に生で聴いたのは、2年前、78歳のときですが、音楽が全然枯れていないのはもちろん、演奏を終え、なぜかムダにステージの袖に小走りでもどっていく姿など、ちょっと信じられませんでした。

アンリ・バルダ。こちらは2008年の来日時の録音

先日、7月7日の「イマジン七夕コンサート」と7月15日のリサイタルのため、無事に来日された模様。

今回、「イマジン七夕コンサート」では、音符たくさん、楽譜真っ黒でおなじみのラフマニノフのピアノ協奏曲第3番を演奏されます。フランス人らしいジョーク満載のお話のなか、「長いし難しいし、私にこれを弾けだんなんてどうしたらいいのかな! 2、3人のピアニストで弾いたらいいんじゃないかってくらいの曲だもんね」とブツブツ言いつつ、嬉しそうでした。

この曲は、ジュリアード音楽院に留学して1年目だった若き日、近くのヤマハで深夜0時まで練習したあと、クールダウンしたくて真夜中のニューヨークの街を歩いて帰った思い出とリンクしているそうです。もしかしたら、若い頃のことがフラッシュバックして、ますますギラギラした演奏になるかもしれません……楽しみですね。

ちなみに、80歳の有名人って他に誰がいるのかなと見ていたところ、クラシック以外のミュージシャンだと、リンゴ・スター(もうすぐ7月7日で81歳)、そして今はなきジョン・レノンも80歳。

そして、もはやミュージシャンではありませんが、ブルース・リーも生きていれば80歳! 豊作の年代ですね。

高坂はる香
高坂はる香 音楽ライター

大学院でインドのスラムの自立支援プロジェクトを研究。その後、2005年からピアノ専門誌の編集者として国内外でピアニストの取材を行なう。2011年よりフリーランスで活動...

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