リーズ国際ピアノコンクール第2位、小林海都さんの高校時代
大学院でインドのスラムの自立支援プロジェクトを研究。その後、2005年からピアノ専門誌の編集者として国内外でピアニストの取材を行なう。2011年よりフリーランスで活動...
先にイギリスのリーズで開催されたリーズ国際ピアノコンクール。ピアニストで教育者でもあるファニー・ウォーターマンさんによって1963年に創設された歴史あるコンクールで、これまでの優勝者には、ラドゥ・ルプーやマレイ・ペライア、ドミトリー・アレクセーエフやミシェル・ダルベルトなどの名手が名を連ねます。
リーズ国際ピアノコンクールの紹介動画
ちなみにリーズは私にとって、雑誌編集部のアルバイト時代に初めて取材した国際コンクール。それまでアメリカの英語とインドの英語(一応インドの英語はイギリス英語ってことらしいですが……まあ違いますよね)にしか触れてこなかった私は、イギリス、しかも北のほうのアクセントに苦労した記憶があります。とくに地元のおばあさんにエレガントな感じで話しかけられたりすると、何言ってるのかまったくわからないという。
さて、1年の延期の末に開催された今回、優勝はカザフスタンのアリム・バイゼンバエフさんとなりました。
アリム・バイゼンバエフさんのファースト・ラウンドでの演奏
そして第2位には、日本の小林海都さんが入賞。これは、1975年の内田光子さんに並ぶ日本人の最高位となります。
小林海都さんのファースト・ラウンドでの演奏
小林海都さんといえば。私が初めてお目にかかったのは彼がまだ15歳、高校1年生のときです。横山幸雄さんによる誌上レッスンの企画で、上野学園高校の1年生だった小林さんが登場してくれました。
見ていると、他の子たちのレッスンとは何かが違う。横山さんに何かを質問されると、一呼吸あけて、訥々(とつとつ)としているんだけど、しっかりとした口調で自分の意見を言う。しかもそれがちょっとオリジナリティがあるので、横山さんも、そんな見方もあるか、みたいな感じで楽しそうな反応をするんですね。
日本を代表するピアニストを前にしても、自分の思うことはちゃんと伝える。だからこそ、先生もアーティストとして対等な感じのリアクションをする。寡黙な感じだけど、こういう人ってしっかりしたいいアーティストになりそうだなと思ったものです。
小林さんはその後、高校3年生のときにマリア・ジョアン・ピリスに出会い、ピリスさんに、自分のところで勉強してみないかと誘われて、エリザベート王妃音楽学校に留学。ピリスさんによる若手演奏家育成プロジェクト「パルティトゥーラ」にも参加し、日本公演ではピリスさんと共に舞台に立つこともありました。
現在はスイスのバーゼル音楽院に留学中。そして今回、この大きなコンクールで入賞を果たしました。
高校生の頃から変わらぬ確信に満ちた音楽。これがついに世界の舞台で認められたのだな、やっぱりね、私知ってた! という気持ちに、勝手になっております。
小林さんはじめ、コンテスタントの演奏はアーカイブ配信で聴くことができます。どうぞチェックしてみてください!
ファイナル初日 Dmytro Choni(4位)、Alim Beisembayev(1位)、Thomas Kelly(5位)
ファイナル2日目 小林海都(2位)、Ariel Lanyi(3位)
小林海都のセミ・ファイナル、ファースト、セカンド・ラウンドの演奏
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