リベラの創設者を偲んで——聖歌隊が前身のボーイ・ソプラノを特色ある音楽で世界中へ
大学院でインドのスラムの自立支援プロジェクトを研究。その後、2005年からピアノ専門誌の編集者として国内外でピアニストの取材を行なう。2011年よりフリーランスで活動...
1年を振り返ると、今年も何人もの偉大なアーティストとの寂しい別れがありました。そんななか、クリスマスが近づく季節に改めて思うのが、ボーイ・ソプラノ・ユニット「リベラ」の創設者でプロデューサーの、ロバート・プライズマンさんが、去る9月に世を去られたということです。
リベラのトップトラック
リベラは、1984年に発足したセント・フィリップス少年聖歌隊を前身に、イギリス、サウスロンドンで暮らす少年たちによって1998年に結成された合唱団。彼らの歌声が一般的な少年合唱団と少し質が違うのは、独特のトレーニングを受けているためだといいます。学校と両立してそのトレーニングを受けられるよう、住む地域を限定してオーディションを行なっているそうです。
レパートリーは、宗教曲、民謡からオリジナル曲まで。それを、現代に生きる私たちに馴染みやすいアレンジで届けてくれます。少年の声の神秘的な響きと、重低音のビート、心地よくモダンなハーモニーが、聴くものを引き込みます。
加えて、その馴染みやすさから、本当によくテレビのBGM的な音楽として使われています。ドラマの挿入曲としては、少し前にも「下町ロケット」で使われていた記憶。
ヘッドライト・テールライト(ヴォカリーズ ver.)
プライズマンさんには、私が昔「月刊ショパン」の編集部にいた頃、取材でたびたびお会いしました。というのも、我が古巣はもともと合唱雑誌からスタートした会社で(おそらくウィーン少年合唱団が大ブームだったころ)、その名残で、ピアノ雑誌でも少年合唱団の話題を紹介し続けていたのです。
若き日の私はそんな合唱ページの担当になりまして、リベラ来日のたび、新しい作品や少年たちのことを取材したものでした。一度はちょうど海外出張からの帰国がリベラの来日ツアー到着日と重なって、空港からのバスに一緒に乗り、そのまま密着取材をした記憶(今なら体力的に絶対無理ですけど)。
ピアノ曲ばかり聴きがちな編集部時代に、歌声、それもボーイソプラノが持つ特別なパワーは、私に強烈なインパクトを与えました。
同時に、少年たちをプロのミュージシャンとして扱うプライズマンさんのスタンスも印象的でした。ステージ上での態度はもちろん、喉のため、本番前に食べたり飲んだりしてはいけないものに決まりがあることも記憶に残ります。加えて、子どもたちに飲ませるミルクティーについてのリクエストが細かいという話に、さすが英国紳士のグループ! と思った記憶。
OBがその後もアレンジャーやサウンドエンジニアとしてリベラに関わり続けるのもすばらしい。私が取材していた頃の少年たちが、今やスタッフとして立派に仕事をしているのを見ると、胸が熱くなります。
クリスマスソングにもたくさんのすばらしい音源があるのですが、ここではやはり、プライズマンさん作詞作曲の名曲を。まずは代表曲「Libera」。
「I am a day(生まれくる日)」も、長らく歌い続けられている曲です。
明るく神秘的な響きのなかに、どこか物悲しさがあるところがたまりません。
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