自転車にうまく乗れなさそうな作曲家ナンバーワンは?
大学院でインドのスラムの自立支援プロジェクトを研究。その後、2005年からピアノ専門誌の編集者として国内外でピアニストの取材を行なう。2011年よりフリーランスで活動...
最近ふと、「自転車にうまく乗れなさそうな作曲家ナンバーワンは?」という、とてつもなくどうでもよいお題が思い浮かび、考え始めました。
自転車……それは老若男女に愛用されると同時に、自由に乗りまわせるようになるまでには、ある程度の練習が必要な乗り物。子どもの頃、擦り傷を作りつつ練習した思い出がある方も多いでしょう。「後ろ押さえててね」と言ったのに、気づいたら手を離されていた……大人ってこんなに堂々と嘘をつくんだと知る、最初の体験のひとつ。
さて、ここからは完全なる私の妄想話です。
自転車にうまく乗れなさそうな作曲家としてまず思い浮かんだのは、ショパン。運動神経があまり良さそうでないことに加え、サドルにまたがる動きがエレガントじゃない! とか言い出しそう。そもそも、転んだらすぐ肋骨とか折れそう(肋骨と足の甲の骨は簡単に折れるってジムのトレーニング仲間が言ってた)。
ベルリオーズあたりもなんとなくダメそうです。バランスを取る理論とか体重のかけ方とかごちゃごちゃ言うわりに、結局乗れなさそう。でも、しつこそうな気もするので、一度チャレンジしてできなかったら、乗れるようになるまでがんばるかも。
一方で、案外あっさり乗れそうなのが、J.S.バッハ。憧れのオルガン奏者、ブクステフーデの演奏を聴きに、遠い街まで400キロも歩く体力もありますし、その旅の直前には、路上で襲ってきた下手な楽団員に応戦しようとしたというから、腕力にも自信があったっぽい。そしてなんとなく要領がよさそう。
J.S.バッハが歩いたとされるアルンシュタット~リューベック(※道のりはGoogleMapの最短距離)
……と、ここまで考えたところで、そういえば自転車っていつから存在するの? というそもそもの疑問がわいてまいりました。
日本自転車文化協会のWebサイトによりますと、諸説あってはっきりしないものの、一般的には、1813年、ドイツのカール・フォン・ドライス男爵が、二輪にまたがって地面を足で蹴って進む乗り物を発明したのが、自転車の元祖とされているようです。
さらにペダル式が発明されたのは、1839年。スコットランドの鍛冶屋、カークパトリック・マクミランが、蒸気機関車と同じ原理で、ペダルを踏むことで車輪を駆動回転させる方法を取り入れたそう。
そう考えますと、ショパンはペダル式自転車に乗れる乗れない以前に、触れたこともなかったかもしれない。勝手に乗れなさそうだなんて決めつけて申し訳なかったなと反省します。
そのようなわけで、自転車が一般化した19世紀後半以降の作曲家には、自転車に乗っていた記録が残る人も増えてきます。
例えばイギリスの作曲家、エドワード・エルガー(1857〜1934)は自転車が大好きだったらしく、愛車に「ミスター・フォイボス」(ギリシア神話の神アポロンの別名で「光り輝く者」の意)という名前をつけていたこともあるとか。イングランドのヘレフォードシャーにある彼の銅像の傍には、自転車が置かれているそう。
悲しい話でいうと、フランスの作曲家、エルネスト・ショーソン(1855〜1899)は、不慮の自転車事故で亡くなっています。代表作の「詩曲」を書いたわずか3年後、44歳のことでした。
ショーソン「詩曲」
最後に、私の若き日の自転車ショット。
調査地に毎日通うのに、バスはぎゅうぎゅうで痴漢される&スリにあうから乗りたくないし(そもそもバス停でちゃんと停まらないので乗り降りがいちいち命がけ)、まだ地下鉄も走っていなかったしで、片道6キロほどの道のりを、友人から借りた自転車で移動することにしたのでした。
当時デリーでは、女性が自転車を漕いで走っている姿はほぼ見なかったので(いまもそうかも)、信号待ちをしているときの周囲の視線、ものすごかったです。
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