ソンドハイムの言葉を伝える音楽で人生を遡る『メリリー・ウィー・ロール・アロング』
音楽の観点からミュージカルの魅力に迫る連載「音楽ファンのためのミュージカル教室」。
第14回は、ミュージカル『メリリー・ウィー・ロール・アロング』に注目! ブロードウェイの才人で、作詞家でもあるソンドハイムが作り出す音楽の魅力に迫ります。2021年5月17日から31日まで、新国立劇場中劇場で上演。
1964年京都市生まれ。1987年、慶應義塾大学経済学部卒業。1990年から音楽に関する執筆活動を行う。著書に、小澤征爾の評伝である「音楽の旅人 -ある日本人指揮者の...
作詞家でもあるからこそ生まれるソンドハイムの音楽
スティーヴン・ソンドハイムは、20世紀後半のブロードウェイを
ウィリアムズ大学で演劇を学んだあと、ミルトン・
ニューヨーク出身の作曲家・作詞家。9歳のときにミュージカルを鑑賞し、興味をもつ。作詞家・脚本家のオスカー・ハマースタイン2世からミュージカル製作について学び、大学入学までに4作品を執筆。ウィリアムズ大学で演劇学を専攻。
アカデミー賞1回、トニー賞8回、グラミー賞8回をはじめ、数多くの受賞歴を誇る。
これまでに作詞・作曲を手掛けた作品には、『ローマで起こった奇妙な出来事』、『カンパニー』、『フォーリーズ』、『リトル・ライト・ミュージック』、『太平洋序曲』、『スウィーニー・トッド』、『メリリー・ウィー・ロール・アロング』、『ジョージの恋人(日曜日に公演でジョージと)』(ピュリッツァー賞受賞)、『イントゥ・ザ・ウッド』、『パッション』などがある。
ソンドハイムの作品の特徴は、作詞家でもあるだけに、言葉を大切にし、言葉と音楽が一体化していることがあげられるだろう。そして、ときに早口言葉のようなスピード感と都会的な抒情。心温まるメロディや洗練されたジャズの響きもソンドハイムの音楽の魅力。声楽のアンサンブルは、オペラ的といえるかもしれない。
タイトルは「陽気に私たちは進み続ける」の意、ソンドハイムの自伝的要素も
『メリリー・ウィー・ロール・アロング』は、
キャストは、
『メリリー・ウィー・ロール・アロング』2021年のPV
あらすじと聴きどころ〜時を遡って3人の人生を追う
註:演出や上演の版によって、
1978年
1978年、ロサンゼルス、人気映画プロデューサー、フランクの豪邸でのパーティ。映画の大ヒットを祝ってパーティが盛り上がっているなか、フランクの古い友人で作家・演劇評論家のメアリーは不機嫌に泥酔している。フランクが作曲を捨て、商業映画のプロデューサーになってしまったことが気に入らないのだ。若い頃からのフランクの親友で、彼の曲に詞を書いていたチャーリーは、脚本家として今やピュリッツァー賞を受賞していた。
フランクは、映画プロデューサーとしては成功していたが、妻ガッシーとの夫婦生活は破綻。どうして、こうなってしまったのか。富と名声は得たが、失ったものは何なのか。フランクは、貧しくとも夢を追いかけていたチャーリーやメアリーとの時代に遡り、人生の転機となる出来事を振り返る。
1973年
1973年、フランクはチャーリーとともに、メアリーが企画したテレビ・インタビューを受けている。チャーリーはフランクとまた作品を作りたいと思っていたが、フランクにその気はない。チャーリーはフランクを揶揄してしまい、2人は仲違いする。
1968年
1968年、フランクのマンションに、メアリーやチャーリーが訪れている。フランクは、チャーリーと作った『ミュージカル・ハズバンズ』の映画化の話を持ち出していたが、チャーリーは乗り気ではない。フランクは離婚したばかりでお金が必要だった。メアリーは2人に「オールド・フレンズ」を歌って、古くからの友だちの大切さを説く。そこにその映画をプロデュースするジョーと彼の妻ガッシーがやって来る。ガッシーとフランクは普通ではない関係だった。ガッシーはフランクにジョーとの離婚を告げ、
1966年
1966年、フランクは、ベスと離婚しようとしていた。
1964年
1964年、ガッシーは、
1962年
1962年、ガッシーとジョーの豪華なマンションでのパーティ。
1960年
1960年、チャーリーとフランクとベスは、
1959年
1959年、フランク、チャーリー、メアリーはそれぞれの仕事(歌、演劇、小説)に取り組んでいる。ベスも仲間に入れて、キャバレー・ショウを作り始める。
1957年
1957年、人類初の人工衛星スプートニック1号の打ち上げの日、フランク、チャーリー、メアリーが出会う。20年前の3人は無限の可能性を秘めた若者たち。新たな時代の到来とそれを担うのは自分たちであることを「アワー・タイム」で歌う。
日時: 2021年5月17日(月)〜5月31日(月)
会場: 新国立劇場 中劇場
出演: 平方元基、ウエンツ瑛士、笹本玲奈、昆夏美 、今井清隆、朝夏まなと他
料金: S席12,800円、A席7,500円(全席指定・税込)
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