読みもの
2026.02.05
2026年ミラノ・コルティナ冬季オリンピック開幕

スカラ座より熱い!? ミラノ五輪はサン・シーロから始まる

2026年ミラノ・コルティナ冬季オリンピックがまもなく開幕! 2月6日(金)の開幕式と2月22日(日)の閉会式の会場や音楽的注目ポイントを、ミラノで20年以上暮らしていた井内美香さんが紹介します。

井内美香
井内美香 音楽ライター/オペラ・キュレーター

学習院大学哲学科卒業、同大学院人文科学研究科博士前期課程修了。ミラノ国立大学で音楽学を学ぶ。ミラノ在住のフリーランスとして20年以上の間、オペラに関する執筆、通訳、来...

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サン・シーロ vs. スカラ座、ミラネーゼにとって重要なのは?

サッカーはイタリアの国民的スポーツだ。ミラノのサッカーチームはACミランとインテルだが、この2つのチームのホームスタジアムであるサン・シーロ(スタディオ・ジュゼッペ・メアッツァ)は、2026年ミラノ・コルティナ冬季オリンピック開会式の会場となる。収容人数は約75千人。

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ちなみにサッカー好きのミラネーゼ(ミラノ人)で、代々ミラノ出身の住民が応援しているのがインテル、仕事などの理由で地方から上京してミラノに住むようになった人々が応援するのがミランと言われている。

建設中のサン・シーロ(1926年)。1980年にインテル・ミラノの黄金期を牽引したジュゼッペ・メアッツァの死去によって、正式名称がスタディオ・ジュゼッペ・メアッツァとなった

クラシック音楽ファンにとっては、ミラノといえばスカラ座がすぐに頭に浮かぶが、一般のミラネーゼがスカラ座に行く機会はあまり多くない。値段自体が高いこともさることながら、やはり敷居が高いのである。その点、サッカーは日常生活に溶け込んでいる。中心地にあるスカラ座が「美とエレガンス」のミラノを象徴する存在なら、ミラネーゼの生活に根付いているのがサン・シーロなのだ。

1778年からミラノの顔として歴史を紡いできたスカラ座

開会式は「ハーモニー」をコンセプトに音楽も充実の予感

2026年ミラノ・コルティナ冬季オリンピックは開催地分散型のオリンピックとのことで、開会式はサン・シーロ、そして閉会式はヴェローナのアレーナ・ディ・ヴェローナと決まった。

オリンピックの開会式/閉会式は、その国の文化を世界に発信する好機である。2006年トリノ冬季オリンピック開会式では、ロッシーニ《泥棒かささぎ》序曲が使われたり、式典の最後では、聖火が灯された後に赤い緞帳が厳かに開いて、ルチアーノ・パヴァロッティがプッチーニ《トゥーランドット》より「誰も寝てはならぬ」を歌ったりと(これはパヴァロッティが亡くなる前にステージに姿を現した最後の機会となった。演奏自体は数週間前の録音)、オペラへの言及があったが、今回の開会式もイタリアならではの音楽へのこだわりがある。

2006年トリノ冬季オリンピック開会式でのルチアーノ・パヴァロッティ

今回の開会式の演出コンセプトは「Armonia(調和=ハーモニー)」だ。登場するアーティストは、マライア・キャリー、アンドレア・ボチェッリ、イタリアの国民的歌手ラウラ・パウジーニ他が発表されており、クラシック音楽好きの目を引くのは、ピアニストのラン・ランとメゾソプラノのチェチーリア・バルトリである。クリエイティブ・ディレクターの一人にはオペラ演出家ダミアーノ・ミキエレットの名前もある。

開会式の音楽責任者で主に映画で活躍する作曲家のアンドレア・ファッリによると、セレモニー音楽の大部分は彼の書き下ろしであり、イタリアのオーケストラが演奏し、1706年製ストラディヴァリウスが登場する場面もあるとのこと。スカラ座アカデミーのバレエ・ダンサーたちも参加する。衣裳はイタリア映画の巨匠ピエロ・トージに学んだデザイナー、マッシモ・カンティーニ・パッリーニが手がける。

閉会式の「美への讃歌」にも期待大

野外オペラで有名なアレーナ・ディ・ヴェローナで行なわれる閉会式も重要だ。ショー・ディレクターのステファニア・オピパリによれば、何よりも古代ローマからの歴史を持つ会場自体を主役に据えたものになること、そして才能のある女性を数多く起用して作り上げる「ビューティー・イン・アクション」をテーマにしたセレモニーになるということだ。美への讃歌、そしてオペラへの言及もあるということで楽しみである。

古代ローマ時代の円形闘技場、アレーナ・ディ・ヴェローナ。夏に開催される野外オペラ公演が名物

ここまで書いて思い出すのは昨年、大阪万博で大好評だったイタリア館である。ファルネーゼのアトラスやカラヴァッジョの絵画などを展示し、音楽でも一流のオペラ歌手たちとローマ歌劇場管弦楽団、フェニーチェ歌劇場合唱団などが万博のためだけに来日した。

イタリア人は長年の歴史上の経験から知っているのだ。芸術を使って世界で存在感を示すやり方を。「Ars longa, vita brevis、芸術は長く、人生は短い」のである。

 

井内美香
井内美香 音楽ライター/オペラ・キュレーター

学習院大学哲学科卒業、同大学院人文科学研究科博士前期課程修了。ミラノ国立大学で音楽学を学ぶ。ミラノ在住のフリーランスとして20年以上の間、オペラに関する執筆、通訳、来...

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