第4章 “ことば”から“うた”へ Vol.2 まるい地球をひとまわり
日本全国の学校や合唱団で歌われ続けている合唱曲《COSMOS》や《地球星歌》。旅の体験や星空の影響を受けた作者のミマスさんが自身の想いをこめた歌です。そのメッセージが、十数年の時をかけて歌とともに広まっています。
この連載ではプロローグ、《地球星歌の旅》、想いが曲になるまで、Special Interviewに続き、近く世に出ていく新曲が、どのように創られたか紹介していきます。
Sachikoの澄みわたるボーカルと、ミマスの詞と曲を基盤とする音楽ユニット「アクアマリン」( http://aqumari.com/ )のメンバー。1998年6月結...
ご縁があり、東京・新宿区立花園小学校の児童のみなさんと一緒に合唱曲を作りました。タイトルは《まるい地球をひとまわり》。「世界中のいろんな国の人たちと友だちになろう!」というグローバルな視点の歌詞が、明るいメロディとリズムに乗って展開します。この曲も富澤裕さんの素晴らしい編曲で楽譜が出版されましたので、ぜひ多くの方々に歌っていただけると嬉しいです(月刊誌「教育音楽」小学版2017年9月号に掲載)。
この歌も、「児童のみなさんから集めた言葉を素材にして作詞作曲する」という手法で作ったもの。僕は近年、こうしたスタイルの曲作りのお仕事が多くなり、日々がんばって作っています。お子さんたちはみんな、自分の言葉や想いが入った歌ができることを楽しみにして参加してくれます。責任は重大です。少しでも良い歌を作ろうと奮闘しています。
そんななかで、子どもならではの発想や視点に触れてハッとすることがあるのですね。改めて気づかされること、勉強になるなあと思うことも多々あります。今回の花園小学校での歌作りプロジェクトもそうでした。その辺りのことも含めて、合唱曲《まるい地球をひとまわり》誕生の経緯をご紹介しましょう。
「児童のみんなに歌の素材をだしてもらう」といっても、テーマを決める必要があります。今回の企画をお膳立てした音楽之友社の方と学校の先生が何度も相談をして、どんなテーマで作るかをまず考えてくれました。その話し合いのなかで、「オリンピック・パラリンピック」というキーワードが出たのだそうです。花園小学校があるのは新宿御苑のすぐ近く。まさに東京の都心です。そんな土地柄もあり、児童のみなさんは何かにつけて、3年後の東京オリンピック・パラリンピックを意識する機会があるのだそうです。そこで、「世界とつながる」というキーワードをもとに、子どもたちが「世界」や「外国」に視野を広げる助けとなるような歌を作ろうということになったわけです。
小学生に対して「歌の材料になるような言葉を出しなさい」と要求するのはあまりにも抽象的で難しい課題でしょう。そこで具体的な質問をいくつか投げかけることになりました。「外国の人とどんな話をしてみたい?」、「行ってみたい国はどこ? その理由は?」、「世界や地球という言葉から何を連想する?」、「あなたがつくる未来はどんな世界にしたい?」。こんなことを尋ねてみたのです。
素晴らしいことに、1年生から6年生まで、全校児童がアンケート用紙にたくさん回答を書いてくれたのです。低学年の子の回答のなかには解読するのが難しいものもありました。でも僕にとっては、児童のみなさんのことを知るということが本当に大切なのです。その筆跡の一つ一つに触れることも、極めて重要なことです。
実際に学校を訪れ、児童のみなさんと意見交換をする場も設けていただきました。2017年4月18日、僕は花園小学校を訪問。直接対面できた児童さんは一部でしたが、いろんな話を聴けてたいへん有意義な時間でした。そのなかで、ひとつ非常に重要だと思ったエピソードがあります。この学校に、日本語を全く話せない子が入学してきたのだそうです。みんなその子のことを気にかけていました。「このまえ公園で見かけたから声をかけて一緒に遊んだよ」という子もいました。
「言葉が分からない人とどうやったらコミュニケーションをとれるかな」。先生が問いかけます。すぐにたくさんの答えが返ってきました。「一緒に歌を歌う」、「絵を描いてもらう」、「お互いの共通点を見つけて糸口にする」、「手招きや笑顔や表情でなんとかする」、「鬼ごっこなら言葉が分からなくても遊べるよ」……。どうです、素晴らしいでしょう。こうした具体的な要素は大切です。ぜひ歌詞に盛り込みたいと思いました。
後日、全校児童のみなさんが書いてくれた回答をじっくりと読むうちに、歌の方向性が定まってきました。「外国の人とどんな話をしてみたい?」。この質問の答えで多かったのは、「相手の国のことを知りたい」です。「行ってみたい国とその理由」については、みんなそれぞれユニークな答えを書いてくれました。「ブラジルに行ってサッカーを見たい」、「ダンスの本場であるニューヨークに行きたい」、「エジプトのピラミッドを見たい」、「イタリアでパスタを食べたい」、「カナダでオーロラを見たい」、「ジャマイカでボルト選手に会いたい」、「タイで象に乗りたい」……。みんな予想以上に世界の国々のことをよく知っているんだなあ。感心すると同時に、嬉しい気持ちになりました。この子たちが本当にそれらの国の人たちと出会ったら、きっと会話が弾むことでしょう。そんな想像が、歌の出だしに反映されています。「♪世界じゅうの国の人と もしも話ができるのなら 聞いてみたいことがあるんだ まだ見ぬ景色のことを」。こんな言葉で歌が始まります。
「世界や地球という言葉から何を連想する?」という質問に、「自慢」という言葉を書いた子がいました。地球という星は僕たちの自慢だという文脈なのですが、僕はこの言葉、非常に面白いと思いました。ふつう、「自慢」というとネガティブな印象を持ちます。自慢ばかりする人が近くにいたら、誰だってイヤな気分になりますよね。でも、たった一つだけ、それが美徳になるシチュエーションがあります。それは「ふるさと自慢」です。故郷を愛する人、生まれ育った土地を誇りに思っている人を、僕たちは素敵だと感じます。僕はこの言葉を入れることにしました。歌全体のなかでも効果的なワードになっていると思います。
それから特に印象的だったのが、「外国の人とどんな話をしたい?」の問いに対して、「お名前は?」とだけ書いた子がいたこと。2年生です。これを見たときはハッとしました。そうだよね……、まずお互いの名前を教えあって、名前を呼び合ったら急に距離は縮まるよね……。完全に盲点を突かれた感じがしました。これもぜひ歌詞に入れようと決めたわけです。
歌詞を考えるのと同時に、メロディーや和音も一緒にできあがっていきました。音楽的なことを言えば、Aメロに多用される半音上昇のクリシェっぽいコード進行が、楽しくワクワクする感じを演出していると思います。Bメロ(サビ前)の、シンコペーションのアクセント(前に突っ込んだようなリズム)も意識的に作ったところ。歌ってくださる皆さんには、自分の行ってみたい国のことや、素敵な出会いを想像しながら、元気に楽しく歌ってもらえると嬉しいです。
ミマス
夏は流れ星の多い季節。ちょうど夏休みの時期に活動する流星群が多いので、星空の美しい山や海に出かけて夜空を眺めていると、比較的ひんぱんに流れ星を見ることができます。 毎年お盆の時期にピークを迎える「ペルセウス座流星群」は、年間を通してたくさんある流星群の中でも特に規模の大きなものの一つ。ピークの晩には1時間あたり数十個の流れ星を見ることができます。ことし2017年のピークは8月12日(土)の晩。とはいっても、その日にしか見られないわけではありません。活動期間は長いので、いわゆる「お盆休み」の期間中は普段よりもだいぶ流れ星の多い状態が続きます。
流れ星を多く見るためのコツを紹介しましょう。まず、できるだけ広く夜空を見渡すこと。いちばん良いのは地面に寝転がって、天頂(空の一番高いところ)を中心に広~~~く見渡すことです。時間帯は、夜7時や8時といった宵のうちよりも、深夜から未明にかけてのほうが流れ星は多くなります。さらに、流れ星を一つでも多く見るための鉄則があります。それは、「できるだけ長い時間夜空を眺める」こと。5分しか見ない場合よりも、1時間見ていたほうがたくさん見られるのは当然ですよね。当たり前のことですが、これは重要なことです。そのためには、防寒や虫よけの対策をしたり、温かい飲み物も用意しておくとよいかもしれません。でも本当に一番大切なことは「安全対策」。夜中に外出して暗いところで寝転がるなんて、いろいろな意味で危険を伴う場合があります。じゅうぶん注意して、のんびりと流れ星を楽しんでください
2017年8月の星空(アストロアーツ:星空ガイド)
富澤裕セレクション 「つないで歌おう」
ミマス作品集Ⅱ
ミマス 詞・作曲/富澤裕 編曲
【定価】 1,620 円 ( 本体1,500 円)
【判型・頁数】 B5・64頁
【発行年月】 2017年8月
【ISBNコード】 9784276574441
【商品コード】 574440
2017年8月、ファン待望の新たな合唱曲集が発売されます。名コンビの編曲者・富澤裕氏による「富澤裕コレクション」シリーズより、タイトルは「つないで歌おう」。合唱団の子どもたちの言葉からつくった素敵な合唱曲です。ほか、オーストラリアの旅でインスピレーションを得た「エスペランサ~希望~」など、新たに編曲された曲も入る予定です。
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