ほのかな光を放つCarot Oneの真空管アンプ ~レコードをコクのある音で聴く
音楽を楽しむ達人、飯田有抄さんが、物語のワンシーンのようにリスニング風景を写していく連載「物語るオーディオ」。少しだけ深掘りや背伸びをして、新しい音楽の聴き方を探索しませんか?
第1回は、真空管の光で癒してくれるキャロット・ワン(Carot One)の小さなアンプです。
1974年生まれ。東京藝術大学音楽学部楽理科卒業、同大学院修士課程修了。Maqcuqrie University(シドニー)通訳翻訳修士課程修了。2008年よりクラシ...
物語るオーディオ、スタート!
みなさまこんにちは。「物語るオーディオ」、新連載始まりました〜。
音楽を聴いて楽しむアイテムとして、オーディオを暮らしの中に取り入れてみましょう、というコーナーです。
“オーディオ”と言いますと、つまりスピーカーとか、プレーヤーとか、いろいろがからみます。といっても、わたしはオーディオ界では永遠の小学3年生レベル。機材の世界はどこまでも深いし、掛け算できる音楽はまさにエンドレス。たぶんずっと小3レベルにとどまります(笑)。
というわけで、ここではムツカシイ機械の専門的なことやスペックみたいなことは、ほとんど語りません。そのかわり、物語ります。 は? と思ったアナタ。たぶん正しい反応です(笑)。私もまだ未知ですが、こういうオーディオでそういう音楽を聴いたら、あんな暮らしが楽しめそう……という、日常の物語目線で(妄想含む)語ってみようと思っています。のんびりお付き合いください。
小さな機器で、アナログ・ラヴァーの好きが加速する!
さて、初回です。今回は、レコードを聴くときのお話。レコードを聴く時間って、そのひとときを丁寧に過ごすというか、せかせかしてたら味わえないことにアプローチしていく感覚がありますよね。
昨今のアナログ再ブームで、若い人たちもレコード文化に興味を持っているみたい。いきなりプレーヤー、フォノイコライザー、アンプ、スピーカーなどの機材を揃えるってなかなかのことだから、一体型のプレーヤー(フォノイコライザーもアンプもスピーカーもぜんぶ付いちゃってるもの)から入る人も多いかもですね。
小さくて安価に買えてしまう「一体型」は便利だけれど、どうしても音質的には今ひとつ……ということも多いんですよね。「なぁんだ、レコードって音悪いんだね。これならスマホとイヤフォンの音のほうがいいや」ってことで、レコードの音の真髄にたどり着かずに立ち去ってしまう人がいるんじゃないかと、ひそかに心配しているアナログ・ラヴァーの私です。
待って、いかないで! おおげさなシステムじゃなくても、レコードを聴ける素敵なアンプ、ここにあるから! イタリアのメーカー、キャロット・ワン(Carot One)のフォノイコライザー搭載の真空管アンプです。
ヴィンテージの真空管でレコードを聴く
真空管ですよ。ほのかな光とやわらかな体温を感じさせる音色はもう、一度聴いたらハマります。スイッチオンしますと、フワッとした青いランプが灯ります。にんじん色? のボディもおしゃれで高級感あっていい。
プレーヤーとスピーカー、そしてこのアンプがあれば、コンパクトに、おしゃれに、よい音質で、という3本柱のそろった豊かなレコードタイムが過ごせます。もちろんレコードプレーヤー以外の音源も、ミニプラグの入力端子から再生できます。
しかも、エルネストーロ・フォノ(ERNESTOLONE PHONO )シリーズの「EXV エボリューション(EVOLUTION)」という製品には、ヴィンテージの真空管が、デフォルトで付いてくるというではないですか! 1970年代にイギリスで製造されたムラード(MULARD)というメーカーのCV4003という球です。
私、ムラードの復刻版の球は使ってきたのですが、とってもコクのあるいい音がします(球でほんとに音変わるんですよね!)。そのオリジナル・ヴィンテージ管がついてきてしまうなんて……(よだれ)。
アルテュール・グリュミオーのヴァイオリン、ロベール・ヴェイロン=ラクロワのピアノによる、シューベルトの「ピアノとヴァイオリンのためのソナチネ第2番イ短調」を聴きました。
ピアノはキラキラかつ柔らかく、ヴァイオリンは咽び泣くような音色や、伸びやかな歌声を響かせます。ノイズがほとんど乗らず、温かく親密なサウンドで楽しめました。
回転するレコード盤と、アンプが放つほのかな光を眺めながら、ぼ〜っと音楽に身を委ねるひととき。優しく美しく、どこか懐かしい時間に癒されます。
筆者が語っている動画はこちら。
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