ウィーン発のミュージカル誕生の経緯とヒット作『モーツァルト!』の魅力を解説!
音楽の観点からミュージカルの魅力に迫る連載「音楽ファンのためのミュージカル教室」。
第13回は、モーツァルトの生涯を描いた人気ミュージカル『モーツァルト!』を取り上げ、誕生の背景から見どころ・聴きどころまで、たっぷりと紹介します。2021年4月8日(木)から5月6日(木)まで、帝国劇場で上演予定(札幌、大阪公演あり)。
1964年京都市生まれ。1987年、慶應義塾大学経済学部卒業。1990年から音楽に関する執筆活動を行う。著書に、小澤征爾の評伝である「音楽の旅人 -ある日本人指揮者の...
数々のヒット作を生み出したゴールデン・コンビ、クンツェ&リーヴァイ
ミュージカルといえば、ブロードウェイ(ニューヨーク)
クンツェは、1943年、プラハ生まれ。戦後、ドイツに移住し、
作詞家、ミュージカル脚本家、作家。
1980年代からミュージカル作品のドイツ語翻訳に着手し、アンドルー・ロイド・ウェバーの『エビータ』、『キャッツ』、『オペラ座の怪人』をはじめ、数多くの作品を手掛けた。
©Kékesi Miklós PR /PS Produkció
クンツェは、リーヴァイとともにディスコ・
シルバー・
1980年代に入ると、ミュージカル『エビータ』や『キャッツ』のドイツ語版の翻訳も手掛け、自らのオリジナル・
そして、
ミュージカル《エリザベート》は、1992年9月3日、アン・デア・ウィーン劇場で開幕。
ウィーン版ミュージカル『エリザベート』
リーヴァイは1945年、スボティツァ(当時はハンガリー、
作曲家、編曲家、指揮者、ピアニスト、プロデューサー。
8歳のときからミュージカル曲の作曲に励み、15歳のときに初めてコンテストで入賞したという。
『エリザベート』も『モーツァルト!』も、ウィーンゆかりの歴史上の人物の物語。ウィーン発のミュージカルにふさわしい。
その後、クンツェ&リーヴァイは、『レベッカ』(2006)を発表。続いて、東宝からの依頼に応えて、『マリー・アントワネット』(2006)を創作する。東宝が製作し、帝国劇場で世界初演。2014年に発表した『レディ・ベス』(2014)も東宝製作、東京発のミュージカル。
そのほか、クンツェのミュージカル作品には『ダンス オブ ヴァンパイア』(ジム・スタインマン作曲)、リーヴァイのミュージカル作品には、細川智栄子あんど芙~みんの漫画を原作とする『王家の紋章』(2016)などがある。
モーツァルトの楽曲を取り入れつつ、リーヴァイの個性も光る音楽
ミュージカル『モーツァルト!』は、1999年10月2日、アン・デア・ウィーン劇場で世界初演された。演出は、『エリザベート』に引き続き、ハリー・クプファーが務めた。2001年5月7日まで、計419回、上演が続けられた。オリジナルはもちろんドイツ語。日本では、2002年10月6日、日生劇場(演出・訳詞:
モーツァルトの生涯を描く作品だが、多くの部分で史実とは異なるフィクションが含まれている。また、モーツァルトの作品の多少の引用もあるが、ミュージカル全体は、リーヴァイ・オリジナルの美しいメロディやロック調の音楽によって構成されている。ロック調の音楽には、モーツァルトが当時のロック・スターのような存在であったという意味も込められているのであろう。
ミュージカル『モーツァルト!』2021年公演の特報
今回の上演では、ともにNHKの連続テレビ小説『エール』で人気を博した、
あらすじと聴きどころ
第1幕
1768年、ウィーンのメスマー邸。12歳のヴォルフガングは、貴族たちから神童と騒がれている。
1777年、成人したヴォルフガングは、ザルツブルクでコロレド大司教に仕えているが、大司教とは対立。ヴォルフガングは、自分らしく生きたい、音楽こそが生きがいと、「僕こそ音楽」を歌う。
そしてヴォルフガングは、母親とともに旅に出る。父レオポルトは、旅立つ息子を心配して「心を鉄に閉じ込めて」を歌う。
マンハイムに立ち寄ったヴォルフガングは、ウェーバー家と知り合い、将来妻となるコンスタンツェと出会う。ヴォルフガングはパリにたどり着くが、パリでは期待したほど評価されず、同地滞在中に母を病で亡くしてしまう。
「僕こそ音楽」「心を鉄に閉じ込めて」
ヴォルフガングは失意のままにザルツブルクへ帰郷するが、大司教との対立は続いている。ヴォルフガングの才能を認めるヴァルトシュテッテン男爵夫人は、「星から降る金」でヴォルフガングに才能を伸ばすためにウィーン行きを勧める。
ウィーンに出たヴォルフガングは、「影を逃がれて」で、自分の影から自由になりたい、本当の人生を見つけたいと歌う。ヴォルフガングの心の叫びのようなナンバー。
「星から降る金」「影を逃れて」
第2幕
1781年、ヴォルフガングはウィーンに移り住み、
「愛していれば分かり合える」「プリンスは出て行った」「
モーツァルトはオペラ《フィガロの結婚》などで成功をおさめる。しかし、父レオポルトがウィーンにやってきて、高慢な息子に苦言を呈する。ヴォルフガングは「何故愛せないの?」を歌う。そして、父が急逝する。
1789年に入ると、オペラ《魔笛》の成功がある一方で、不吉な《レクイエム》の作曲の依頼を受ける。人々は「モーツァルト! モーツァルト!」を歌うが、1791年12月4日、ヴォルフガングは、「僕こそ音楽」を回想しながら、無念にも亡くなってしまう。
「何故愛せないの?」「モーツァルト! モーツァルト!」
日時: 2021年4月8日(木)〜5月6日(木)
会場: 帝国劇場
脚本/歌詞: ミヒャエル・クンツェ
音楽/編曲: シルヴェスター・リーヴァイ
演出/訳詞: 小池修一郎(宝塚歌劇団)
出演
ヴォルフガング・モーツァルト:山崎育三郎/古川雄大(Wキャスト)
コンスタンツェ(モーツァルトの妻):木下晴香
ナンネール(モーツァルトの姉):和音美桜
ヴァルトシュテッテン男爵夫人:涼風真世/香寿たつき(Wキャスト)
コロレド大司教:山口祐一郎
レオポルト(モーツァルトの父):市村正親
料金:S席14,500円、A席9,500円、B席5,000円
問い合わせ: 東宝テレザーブ03-3201-7777
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