12月特集「クリスマス」 宗教音楽を知ろう!

にゃんぞう先生の クラシック入門(2)〜キリスト教音楽のアレ・コレ

読みもの
2018.12.23

私たちが日頃親しんでいるクラシック音楽は、もともとはローマ・カトリック教会の音楽にその起源をもっています。クリスマス・シーズンにちなんで、にゃんぞう先生が教えてくれる教会音楽のおはなし、パート2です。

絵と文
飯田有抄 クラシック音楽ファシリテーター
飯田有抄
絵と文
飯田有抄 クラシック音楽ファシリテーター
1974年生まれ。東京藝術大学音楽学部楽理科卒業、同大学院修士課程修了。Maqcuqrie University(シドニー)通訳翻訳修士課程修了。2008年よりクラシ...
登場猫

ニャルミさん
陽気な小学3年生。ピアノを習ってるから、クラシック音楽がちょっと好き。

 

にゃんぞう先生
ニャルミさんちの隣りに住むおじいさん猫。もと小学校の音楽の先生。人間年齢に換算すると64歳。

にゃんぞう先生 やぁニャルミさん、すっかり寒くなったねぇ。

ニャルミ あ、にゃんぞう先生、クリスマスもいよいよ来週ねっ! そういえば、クリスマスにちなんで、もっと教会の音楽のこと教えてくれるんでしょ?

にゃんぞう先生 おお、そんな話だったね。クリスマスの時期だけじゃなくて、ふだんクラシック音楽を聴くときにも、キリスト教音楽のことは少し知っておくといいと思うよ。

ニャルミ そうなの? キリスト教の音楽っていったら、ニャルミは賛美歌くらいしか思い浮かばないんだけど。先週「モテット」っていうのを習ったけどね。ほかにもなんかあるの?

にゃんぞう先生 たとえばね、ニャルミさんは「ミサ曲」って言葉、きいたことない?

ニャルミ あーあるある。パパのレコードの棚に《ロ短調ミサ曲》とかいうのがあって、なんだか難しそうな曲だなぁって思ってたの。しんきくさそう。

にゃんぞう先生 たしかにいきなり「ミサ曲」と言われても、どういう曲なのかよくわからないよね。でも、クラシックの作曲家の中には「ミサ曲」というのを書いた人がたくさんいるよ。ハイドンもモーツァルトもベートーヴェンもシューベルトも書いてます。

ニャルミ え、じゃあ、しんきくさいとか言ってる場合じゃない? え、なんなのミサ曲って。

にゃんぞう先生のおしえ 〜 ミサ曲とは?

そもそも「ミサ」とは、カトリック教会で行なわれる“儀式”のことです。日曜日や、大切な祝日に教会で行なわれています。キリストの「最後の晩餐」を再現するようにして、パンをキリストの体に、ワインをキリストの血に変えて、それをみんなで口にして神様の恩恵をさずかる(聖体拝領といいます)というのがミサという儀式のハイライト。そこを山場としながら、いろんなお祈り、告白、賛美の言葉が唱えられます(言葉はやがて、歌うように唱えられ、「聖歌」になったというお話は先週したよね)。

ミサでは毎回決まった言葉が歌われ、それは「通常文」と呼ばれるようになりました。一方で、日によって異なる言葉も歌われます。それらは「固有文」と呼ばれます(たとえばクリスマスとか、復活際とか、死者の魂を慰める日とか、その日その日で唱えるべき固有の言葉があるのです)。

毎回変わらない「通常文」は、次の5つで成り立っているよ。
ここ! 実はダイジですぞ! クラシックの音楽鑑賞にとっても大切なポイントなんだ。

通常文

キリエ(あわれみの賛歌)

グロリア(大栄唱)

クレド(信仰宣言)

サンクトゥス(感謝の賛歌)

※後半はベネディクトゥス(祝福の歌)として分けられることもある

アニュス・デイ(平和の賛歌)

ちなみに「固有文」はおもに次のようなもの。通常文と固有文は、式次第に沿って順番に組み合わされながら歌われていきます。

固有文

イントロイトゥス(入祭唱)

グラドゥアーレ(昇階唱)

アレルヤ(アレルヤ唱)

セクエンツィア(続唱)

オッフェルトリウム(奉献唱)

コンムニオ(聖体拝領唱)

クラシックの曲をいろいろ聴いていると、こういうタイトルに出あうことがあるんじゃないかな(でもとくに覚えなくていいよ!)。

さて、ルネサンス時代くらいから、「通常文」に対しては、いろんな人がいろんな音楽を付けるようになっていきました。それはやがて、「ミサ曲」と呼ばれ、たんに儀式の祈りのために作られるだけではなく、作曲家たちが創作する立派な「音楽作品」として捉えられるようにもなったんだ。

モーツァルトのミサ曲第16番ハ長調「戴冠式ミサ」 K.317や、ベートーヴェンの荘厳ミサ曲(ミサ・ソレムニス)ニ長調 op.123といった有名な曲、もっと現代寄りでいえば、バーンスタインのミサ曲も、こういったカトリック教会の儀式に由来しているものなんだよ。

クリスチャンじゃなくても、ミサ曲の良さはわかるの?

ニャルミ 先生、ソボクな疑問でっす!

にゃんぞう先生 どうぞ。

ニャルミ 教会の儀式から生まれたってことは、「ミサ曲」はクリスチャンの人じゃないと、聴いてもよくわからないんじゃない? そもそも、コンサートで演奏したり、聴いたりしていいの?

にゃんぞう先生 もちろんいいんだよ! そして、ぼくが思うに、「聴いてもわからない」なんて、自分の心で決めてしまうのはちょっともったいないんじゃないかな。

さっきもお話したとおり、作曲家たちは自分の音楽的創意工夫も、芸術作品としてのミサ曲の中に込めている。だから、音の響きそのもの、楽器や声の使い方の美しさに耳を澄ますことで、ぼくらなりに受け取れるメッセージや感動があるんじゃないかな。

キリスト教を信じる人たちにとっては、その教えが物事の見方や考え方、暮らしのスタイルにも浸透している。だから彼らに「わかる」ことでも、暮らしや文化や宗教や言葉が違う人たちには「わからない」部分はあるかもしれない。でも、人間みんながどこかに共有しているかもしれないもの、たとえば、何か大きなものに向かって感謝したい心、救いを求めたい気持ち、だれかと分かち合いたい喜びなどは、「芸術作品」となったミサ曲を通じて、共感し合えるかもしれないよね。

ニャルミ なるほどね〜。「わからない」とか、いちいち思わなくていいのか。キレイだと感じたら、「キレイだな〜」っていう感想でもいいんだよね。

にゃんぞう先生 僕はそれでいいと思うよ。音楽との出会いは、そのとき1回限りじゃないし。クラシックの場合は、何年か経ってまた聴く機会がふいにやってきたりする。そのときはもしかしたら、人生経験からぜんぜん違って聴こえるかもしれないしね。そこがおもしろいところ!

そのほかの気になるキリスト教音楽

ニャルミ ところで先生、キリスト教の音楽といえばさ、クラシックではよく「レクイエム」っていうのも聞くけど、あれはなぁに?

にゃんぞう先生 実は「レクイエム」も、ミサ曲の一種なんだよ。亡くなった人の安息を願うミサが、カトリック教会では11月に行なわれています。その死者のためのミサの曲が「レクイエム」と呼ばれて、多くの作曲家たちが作品を残しているね。モーツァルトやヴェルディやフォーレの作品がとっても有名だね。

ニャルミ ふ〜ん。あとさ、コラールっていうのも、あるんでしょ? あれはミサ曲と違うの?

にゃんぞう先生 ナイスな質問。ミサは、キリスト教といってもカトリック教会の儀式なんだ。プロテスタントや聖公会(イギリス国教会)の教会ではミサではなく礼拝が行なわれています。そこで歌われているのは、ニャルミさんも知っている賛美歌、つまりコラールなんだよ。

ニャルミ え! コラールって、賛美歌のことだったの?

にゃんぞう先生 もともとコラールとは、教会に集った人だれもが歌えるシンプルで美しい賛美歌のことなんだ。マルティン・ルターという人が、16世紀にローマ・カトリック教会の腐敗(免罪符など)を批判し、カトリックから破門されました。彼は新たにルター派教会を作り、そこで独自の礼拝のスタイルを作って、民衆がみんなで歌える「コラール」を編み出したんだよ。

ミサ曲はカトリック教会の中で特訓された聖歌隊だけがラテン語で歌うものなのにたいし、コラールは親しみやすい音楽で、みんなが声を合わせて歌えるもの。ドイツの人はドイツ語で。日本には日本語に訳された賛美歌があるよね。だから、ミサ曲とコラールとは、基本的なスタート、性質がぜんぜん違うんだね。

のちにJ.S.バッハは、コラールを声楽だけじゃなく、オルガン曲としても作曲するようになったんだ。《目覚めよ、と呼ぶ声あり》BWV645などは、とても有名です。

ニャルミ ほほ〜。「キリスト教音楽」と言ってもいろいろなのね! グレゴリオ聖歌、モテット、ミサ曲、コラール…… あれこれ聴いてみたいかも。 ありがとう、にゃんぞう先生! ……あ、もぅ寝てるし。先生は熱く語ると、寝ちゃうんだよね……。

にゃんぞう先生 Zzz… Zzz…

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