コンサートの感想をSNSで発信するときに気をつけたいこと 伝わる感想ってどんなもの?
大学院でインドのスラムの自立支援プロジェクトを研究。その後、2005年からピアノ専門誌の編集者として国内外でピアニストの取材を行なう。2011年よりフリーランスで活動...
みなさんは、コンサートに行ったあと、感想をメモに書き留めていらっしゃるでしょうか?
この連載で以前にご紹介した、箕面での北村朋幹さんのピアノ・リサイタルと、3回にわたって私がお話をしたピアノをテーマとした講座。実はその最終回は、“コンサートの感想”がテーマでした。
リサイタルを聴いた翌週に、コンサートの感想をみんなで語り合いましょうという、このなかなか斬新な企画は、主催者さんからのご提案でした。実際、SNSでコンサートの感想を発信する機会も増えたなか、これはなかなかおもしろいものでありました。
感想文のさまざまなタイプ
講座当日は、参加者のみなさんにも、「普段、コンサートの感想を書き留めていますか?」と聞いてみました。すると、書いているという方はたった一人でした!
ちなみに私自身はというと、仕事で書く予定がある場合に記録しておくのはもちろん、そうでないときでも、ホールからの帰りの道中で日記アプリに感想をメモしておくことが多いです。
仕事柄、あとであの時はどうだったかという記憶を掘り起こす必要が多く、忘れっぽいのでメモしておくことがとても重要になります。同業者の他の皆さんがどうされているのかはわかりませんが……。
さて、講座の話に戻りましょう。
当日は、その前の週の北村さんのリサイタル――サティ、武満徹、そしてジョン・ケージの「プリペアドピアノのためのソナタとインターリュード」という一捻りあるプログラム――を聴いた感想を、事前に提出していただきました。
長く書いてもらうときりがなくなってしまうかもしれないので、Twitterを意識して、基本は140字でまとめるという設定です。人によっては連投の想定で、140字ずつ区切っていくつかにまとめてくださった方もいました。
書いていただいたものを見てみると、曲が曲だけに、みなさんが想像することも多様です。幸福感や感動など、心の動きをそのままに表現したもの、想像した景色などを克明に表現するもの、などタイプもいろいろ。
そして中でも興味深かったのは、そこで受けた印象、考えたことから数珠繋ぎに思考を広げていくタイプの感想です。例えばその曲を聴いているうちに、ある情景が浮かび、それに似た場面を描写した文学作品のことを思い浮かべ、その時代の政治や社会について考えを巡らせてゆく、というような。あるコンサートのうまみを噛み締めまくるための、一つの方法ですよね。
SNSで伝わる感想のまとめ方
講座では、「SNSなどで伝わる感想のまとめ方」も一つのテーマとしていました(私も常に試行錯誤しているところではありますが)。基本としては、具体的であること、多くの方が感じているだろうけれど言語化できていないことを言葉にすることなどが、共感を呼ぶ感想だろうと思います。
逆に、“嫌われない”感想を書くために注意すべきだと思うこともあります。ひとつは、感想を書くということを精神的なマウンティングの道具にしないこと、そしてもうひとつは、何より、魂を削って舞台に立っている演奏家への敬意を忘れないこと、ではないかと思います。
根本にその意識を持つことが、読む人に伝わり、多くの人が共感してくれる言葉の選び方にもつながるんじゃないかなぁと思います。
箕面の講座は全3回の対面式で、回を重ねるごとになんとなく皆さんとの距離も縮まり、なんだかいいものだなと思いました。オンライン講座の良さもありますが、とくにみんなで顔を合わせて感想を共有し合える時間は、いいものですね。
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