音大入試の楽典、「音階」問題の解き方のコツは?――ややこしい問題文の整理術
音大(音高)入試の楽典に悩む人は多いと思います。テキストを読んだけれど問題は解けない。解くスピードが遅い。どうすれば良いかわからない。そこで今回、2022年7月27日刊行の『音大入試の「楽典」 解き方のコツ&過去問トレーニング』から、論点別に解き方のコツをお伝えします。第2回は「音階」。出題パターンに仕掛けられた罠をスマートにスピーディーに攻略しましょう!
*記事は内容の更新を行っている場合もありますが、基本的には上記日付時点での情報となりますのでご注意ください。
問題
指示された音階を、調号を用いずに主音から主音まで全音符で書きなさい。ただし、短調は旋律短音階上行形とする。
- ハ短調の属調の下属調の音階を高音部譜表上に
今回は音階の問題。「与えられた音や調をもとにして音階を書く」タイプです。音階を指示するために「~の」がぞろぞろ並んでいる文は、漢字の音楽用語が多いこともあって読むのが面倒で、イライラしそうですね。
とはいえこのタイプの問題は、クールに構えて順に解きさえすれば確実に正解へゴールインすることができます。あわてず1歩ずつ進みましょう。
ハ短調の属調は?
まず、「ハ短調の属調」を考えます。完全5度上(完全4度下)の短調にあたるので、ト短調ですね。図のように、余白にメモを残しながら解くのがおすすめです。メモがあれば、見直すときに自分の考えの道筋がそのままたどれるからです。
ト短調の下属調は?
今度は「ト短調の下属調」を考えます。完全4度上(完全5度下)の短調ですから……「えっ? ハ短調になる。文のはじめの調に戻っちゃったけど、間違ってない?」と不安になりましたか?
結論から言うと、ハ短調で正解です。たとえ、このような不安を招く仕掛けが問題文の迷路に仕組まれていても、メモして確認しながら着々と文をたどれば心配ありません。実は、ある調の「属調の下属調」や「下属調の属調」はどちらも、結局もとの「ある調」に戻ってしまいます。まるで回文のようですね。
さあ音階を書こう!
何調の音階を書けばよいかわかったので、いよいよそれを楽譜に書いていきます。問題文の、「調号を用いずに」「主音から主音まで全音符で」「短調は旋律短音階上行形とする」「高音部譜表上に」の4つの要素をすべて満たして書かなければなりません。では、どの順に書けばいいのでしょう。
音部記号と音符を書く
まずは、解答欄の五線に高音部記号を書き入れましょう。次に、主音(ハ)から1オクターブ上の主音までの音を、全音符で書き入れます。
調号にあたる臨時記号を書く
ハ短調の調号は♭3個ですね。「調号を用いずに」という指定があるので、調号にあたる音符すべてに臨時記号を付けます。次の図のように、調号は何が何個なのかを余白にメモしておくと確実です。
旋律短音階上行形にする
ここで安心してはいけません。「短調は旋律短音階上行形とする」という指定があるので、音階の第6音(下から6番目の音)と第7音(下から7番目の音)を、どちらも増1度上げる必要があります。ここでは、「ラ」と「シ」についていた♭を両方とも消してしまえば完成です。先ほどの調号のメモは、見直しが終わってから最後に消しましょう。
正解は
音階の問題では、解答の途中で1ヶ所道を間違えたせいで、その後すべてが間違いになって苦労が水の泡……という、泣きそうになるケースがよくあります。では、一体どこに注意を向ければいいのでしょうか。ぜひ『音大入試の「楽典」解き方のコツ&過去問トレーニング』の第3章「音階」を読んで、ほかのタイプの問題にも触れてテクニックを身に付けてください。
本書は、楽典の基本知識をインプットした人が入試問題を効率的に解けるようになるために、出題パターン別に解き方のトレーニングを行う、これまでになかった画期的な一冊です。
菅原真理子(監修・著)、井上ゆり子、堀優香、辻田絢菜(著)
2022年7月27日発売、B5判、176ページ、税込1870円
本書は、25年にわたり『音楽大学・高校 入試問題集』楽典問題の解答・解説執筆の中心人物であり、音大附属音楽教室で多くの受験生の指導も長年行うことで、音大の入試問題に精通している「受験生の味方」菅原真理子氏監修によるものです。
これまで楽典の入試対策書籍は、基礎知識の本と問題集は刊行されていたものの、これを繋ぐ入試対策のための「アウトプット・トレーニング」が効率的にできる書籍が見当たりませんでした。
本書はそこを解消すべく、菅原氏はじめ執筆陣の総力による知識体系と指導経験をベースにして、解き方や間違えやすいポイントを「まるで隣りで教えているように」わかりやすく解説しています。
特長は、近年の出題傾向に対応・実際に出題された近年の問題を使用、難問・奇問・レア問を排しオーソドックスな出題のすべてに対応、スムーズに学習が進む出題パターン別のアウトプット練習、「あるあるミス」「解き方のポイント」など工夫を凝らしたレイアウトなどです。
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